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しおりを挟む「ベンジャミン様!」
放課後、いつもベンジャミン様が勉強されている中庭の東屋に向かうと、やはりベンジャミン様がいた。ベンジャミン様は、ちらりと私の姿を確認すると眉間に皺を寄せ、また教科書へと視線を落とした。私の心はじくりと痛むが、もうこれ以上ベンジャミン様に嫌われることはないのだから、と自分で自分を慰める。
「ベンジャミン様。婚約解消、致しましょう。」
「………………は?」
ベンジャミン様は目を見開き、私を見据えた。視線が合うことも、声を聞くのも、いつぶりだろう、やっぱり素敵……ではなくて。
「………………理由は?」
「私、愛する者同士が婚約した方が良いと思うのです。」
「……っ!」
大好きなベンジャミン様と視線を合わせられる幸せと、これでお別れだという苦しさで、私の心は滅茶苦茶になる。私は、早くこの場を立ち去ろうと決めた。
「これまで、ベンジャミン様へご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。今後はベンジャミン様の視界に入らないように致しますので、お許しください。数々のご無礼をお詫び致します。」
私は、深々と頭を下げた後、くるりと後ろを向き走り出した。今日、十年間の初恋が終わったのだ。これからは、ベンジャミン様とヴィクトリア様の関係を応援できるように……それがベンジャミン様の幸せなのだから。私は、後ろから私を呼ぶ声にも気付かず走り続けた。
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