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しおりを挟むテオドールが大きく口を開いた。
「おいっ……「陛下。その話は既にお断りした筈ですが。」
テオドールの言葉に重なるように冷たい声が響いた。
「お、お父様……。」
クラウディアは目を丸くした。久しぶりに会う父は怒りを纏い、不機嫌そのもので国王に近付いていく。クラウディアはこんな感情を剥き出しにした父を見たことが無かった。
「こ、公爵……、私たちはクラウディア嬢のことを思って、だな……。」
「それが迷惑だと何度言わせるんですか。クラウディアはテオドール殿と婚約することを喜んでいる。何度もそう説明したでしょう。」
ぎろりと睨みつけられるが、国王は引かなかった。
「そんな訳がないだろう。バーネット公爵、其方はクラウディア嬢の気持ちを考えていないだけだ。」
「ええ。今まではそうでした。あなた方の尻拭いを娘に強いてしまった。」
「尻拭い、だと……?」
国王は額に青筋を立てる。だが、ちらりとレジナルドを見たバーネット公爵から「まさか心当たりがないとでも?」と呆れたように尋ねられると、国王は何の言葉も見つからないようだ。
「それほど娘に嫌がらせをしたいのであれば、私も考えがあります。」
「なっ……。」
「例えば、テオドール殿を国王に担ぎ上げる、とか?」
「……っ!」
国王と王妃は真っ青になった。貴族らしくない振る舞いから、貴族達から距離を置かれるテオドールだが平民からの人気は高い。またレジナルドより幾分かはマシだと思う貴族も多いだろう。ましてや国王の右腕であるバーネット公爵があちらに付いてしまえば、勝敗は既に決まっている。
「お、お父様……!」
クラウディアは思わず声を上げた。テオドールはそんなことを望んでいない。畑を耕したり、工房で作業をしたり、そんな風に好きなことをしてテオドールに生きてほしい。そう伝えようとするクラウディアをテオドールが制止した。
「王座には全く興味は無いが、クラウディアと共にあるために必要とあれば俺は喜んでお前から王座を奪おう。」
テオドールは国王へ向かって、堂々と宣言した。国王はへなへなと座り込み、降参の意を示した。
「……クラウディアさん、貴女はそれでいいの?」
「はい。テオドール様がどこにいようと、テオドール様の隣が私の居場所です。」
王妃の問いに、真っすぐな瞳で答えるクラウディアは誰よりも美しかった。
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