【完結】拗らせ王子と意地悪な婚約者

たまこ

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「……今度、何か贈る」

 暫くレイナルドの胸の中に閉じ込められていると、ぽつりとそんな言葉が降って来た。


「え……」

「その、色々と嫌な思いさせた詫びだ……それに」

 レイナルドはちらりとアメリアのドレスを見た。


「それ、アーネスト殿下に贈られたのだろう」

「え、ええ」

 呟かれた声には嫉妬が孕んでいた。その言葉にアメリアは思わず頬を緩ませる。

「では……」

 アメリアはレイナルドの耳元で願いを囁くと、レイナルドはパッと顔を赤らめ怒り出した。


「お、お前……破廉恥なことは言うなと言っているだろう!」

「破廉恥ですか?シルヴィアは婚約者ともっと進んでいるようですが」

「……っ!!」

 以前のやりとりをなぞるようにアメリアは言った。レイナルドはシルヴィアの婚約者ナイジェルへ怒りの矛先を向けた。あんな人畜無害な顔をして、あいつは婚約者と一体何をしているのか。ナイジェルに聞きたいことは山のようにあるが、きっと聞き出せない自分の性格が嫌になる。


 アメリアの方を見ると、なんと彼女は既に目を閉じて待っていた。レイナルドはまだ頷いてもいないと言うのに。何も知らない無垢な婚約者に腹が立った。


「やっぱりお前は意地悪だ」

 そう呟いて、レイナルドは噛みつくように口付けた。

 二人の影が離れるとアメリアは頬を染めたままへにゃりと笑った。苦しくなるほどに愛おしい。


「……今日だけだからな」

「いやです」

「お前は……っ!」

「今日だけなんて耐えられません。いっぱいしてください」

「~~っ!!」

 顔を赤くして口を一文字に閉じたレイナルドを見て、アメリアはくすくすと笑い声を漏らした。



「私、意地悪な婚約者ですから」

 得意げに言う婚約者を黙らせるために、レイナルドはまた彼女へ噛みついた。

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