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しおりを挟む「……さっきのレイ様……楽しそうでした」
ブリジットと隣に並ぶレイナルドの穏やかな表情を思い出すと胸が痛い。じわりと涙を浮かべると、レイナルドは優しく拭ってくれた。
「あれは……アメリアの話をしていたんだ」
「私の?」
「彼女は、その、俺とアメリアがお似合いだと言ったんだ。あまりそう言われる機会は無いから……」
「お似合い……」
アメリアの顔が一気に熱くなる。レイナルドの言う通り、二人がお似合いだと言われる場面は少ない。チャールズとエリザベスはそう言われる場面が多く、アメリアは羨ましく思っていた。
「お似合いだと言われて、楽しそうにされていたのですか?」
「……自覚は無かったがな」
きまり悪そうにそっぽを向くレイナルドへ、アメリアは最後の質問をした。
「……レイ様は、ブリジット様のような女性が良いのではないのですか?」
「そんなこと思っていない」
「だって……」
「何だ?」
そう、レイナルドはいつだってアメリアの言葉を待ってくれる。涙で言葉が詰まっても諦めたりなんてしなかった。
「……好きって、言われたこと無いです」
「な……っ!」
レイナルドは口を開け狼狽している。その顔が可笑しくてアメリアは思わず笑った。レイナルドはムッとした様子で呟くように言った。
「お前だって言わなかっただろう」
「だって、それはレイ様から言って欲しいですもの」
「む」
レイナルドは抱き締めていた腕に力を込め、アメリアの耳元で囁いた。
「アメリア」
「はい」
「もしも言葉にしてしまったら……俺はもう手放せないと思う。お前が嫌だといっても、だ」
「レイ様」
「ん」
「私を手放すおつもりだったのですか?」
アメリアの可愛い瞳に見据えられ、レイナルドは言葉を失った。
「私は絶対、絶対に!レイ様と一緒にいます!ずっと一緒にいます!……そうお伝えしてきたつもりです」
「そう、だな」
アメリアはいつも全力でレイナルドを大切にしてくれていた。レイナルドのお嫁さんになるのだとずっと伝えてくれていた。レイナルドはアメリアを失うことが不安で、恐ろしくて、アメリアの想いを上手く受け取ることができずにいた。
「……ずっと好きだった。これからもずっとアメリアしかいらない」
小さく囁かれた言葉を聞いて、アメリアは綻ぶような笑顔を見せた。
「はい!私もずっとお慕いしておりました。レイ様とずっと一緒にいさせてください」
溢れ出した涙は、アメリアのものではなかった。
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