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しおりを挟むレイナルドとアメリアが顔を合わせない日々が続き、アーネストが隣国デリンリードへ戻るが近付いてきた。
「親善パーティー、ですか?」
「ああ、私が帰る前に開いてくれるようだ」
夕食時、アーネストが話したのは隣国デリンラードの王太子である彼への親善パーティーが急遽十日後に催されるという内容だった。
通常であればトパルーズ国に来た初めの頃に歓迎の意味を込めて王宮主催で行う筈のパーティーだ。だがアーネストの留学が急に決まったため、彼が国に戻る時期になってしまったようだ。
「私としては心苦しいけどね」
「どうしてです?」
珍しく苦笑いを浮かべるアーネストへアメリアは尋ねた。
「私が来るとどうしても警備を厳重にしなければならないだろう?そのせいで準備にも時間が掛かってしまったようだ」
「そうでしたか」
アメリアの両親も屋敷を開けることが増えていた。王宮に通い詰めで、アメリアと顔を合わせる時間も減っていたので不思議に思っていたがパーティーの調整で忙しかったようだ。
警備の兼ね合いから、パーティーの日程間近に貴族には通知することになっているらしく、アメリアの両親もわざわざ娘に話をしていなかった。
「アメリア」
「はい」
「親善パーティーでは是非私にエスコートさせてほしい」
「……っ、それは」
アメリアが断りの言葉を口にする前にアーネストが制止した。
「レイナルド殿下からエスコートの連絡は来ていないのだろう?」
「……っ」
「他の貴族ならまだ連絡が来ていなくても不思議じゃないよ。でも彼は王族だ、このパーティーのことは前から知っていた筈だ」
「それは……」
「それにね、当日はブリジット嬢をエスコートすると耳にしたんだ」
最後の言葉を聞いて、アメリアはアーネストに何と返事をしたのか記憶が無い。気付いた時には自室に戻っており、ベッドの中でぼんやりとしていた。深い深い海に落ちたような悲しみの中で、アメリアの涙はいつの間にか枯れてしまったらしい。
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