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しおりを挟む「シルヴィア嬢が会いたいということはアメリアのことだろうな」
「……はい」
ナイジェルは気まずい顔のまま首を縦に振った。
アメリアは数日前から王子妃教育を休んでいると聞いている。真面目な彼女の王子妃教育はかなり進んでおり、暫く休んでも何も問題ないということで纏まった休暇を出そうと講師陣の間で決定されたらしい。屋敷にアーネストがいることで必死に外で過ごす時間を増やそうとしていたというのに大丈夫なのか講師陣にそれとなく尋ねると長期の休暇はアメリアからの希望だったようだ。
自分から休みを取ることは殆ど無い彼女だが、稀に休みを取る時は必ずレイナルドに伝えてくれていた。だが、今回はレイナルドが知らぬ間に休暇に入っていた。母親である王妃や兄の婚約者エリザベスから送られる痛い視線の理由も分からずレイナルドは途方に暮れていた。
「会おう」
「良いのですか?」
「ああ」
レイナルドは短くそう答えた。ナイジェルならもっとスマートに「婚約者の話ならぜひ聞かせてほしい」とでも言うだろうか。
ナイジェルは終始申し訳なさそうにしているとはいえ、婚約者の望みを叶えようと行動している。しかも王族に対して会いたいなど本来であれば褒められたものではない。ナイジェルの将来にだって影響を及ぼすことがあるのだ。だがナイジェルはそれでも婚約者の為に動いている。
「それだけではないか……」
「殿下?」
「いや、行こうか」
もしかしたらナイジェルは婚約者だけでなくレイナルドのためを思って動いてくれているのかもしれない。シルヴィアの話を聞くことでアメリアの休暇の理由も、王妃やエリザベスからの痛い視線の理由も分かるかもしれない。レイナルドの為を思って動く人間は貴重だ。家族以外ではそれこそアメリアやルパートくらいのものだ。ナイジェルの案内を受け、シルヴィアの待つ部屋へ向かう。レイナルドは顔にこそ出さないが彼に感謝しながら足を進めていた。
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