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しおりを挟むレイナルドは両親である国王夫妻にプライベートスペースの応接室での面会を頼んでいた。だが、王妃殿下は王城内のロビーでレイナルドとアメリアを待っていた。ロビーにはまばらではあるが、王城内の文官や武官、使用人たちもおり何故王妃殿下がここにいるのかと目を丸くしている。さっさとこの場を去りたいが、それすらも不敬に当たるのではないかと誰もが動けないまま王妃に注目していた。
「レイナルド、アメリアちゃん!」
二人の姿を見つけると王妃は嬉しそうに近寄り、アメリアをぎゅっと抱き締めた。カーテシーをしようとしていたアメリアだが動きを封じられてしまい、珍しく動揺し大きな可愛らしい目をぱちくりとさせている。レイナルドは小さく息を吐き、口を開いた。
「母上……応接室でお待ちくださいとお伝えした筈ですが」
「だって、アメリアちゃんに早く会いたくて待ちきれなかったの。レイナルドったら、大事な婚約者だからってなかなか会わせてくれないじゃない」
「そ、それは……」
「ふふ、照れなくてもいいのに。貴方がアメリアちゃんを大切に想っていることは私も陛下もよく分かっていますからね。さぁ、アメリアちゃん行きましょう。王子妃教育で優秀な成績を修めているアメリアちゃんをずっとおもてなししたかったのよ。美味しいスイーツを用意しているから一緒にいただきましょう」
女神と見間違うほど美しい笑顔を見せた後、漸くアメリアを抱き締めていた手を離し、王妃は応接室へと足を進めた。レイナルドとアメリアは王妃の後を追う。その後ろでは、偶々居合わせた者たちが小さく囁き合っていた。
「アメリア嬢は第二王子に溺愛されている」
「アメリア嬢は国王夫妻に大切にされている」
「アメリア嬢は、大変優秀な令嬢のようだ」
その囁きは、この日の内に王城中を駆け巡ることになるだろう。そしてアメリアの悪評を噂していた者たちは震えて眠れぬ夜を暫くの間過ごすこととなった。
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