12 / 12
12
しおりを挟む数日後。フィリップをネズミに変えた魔術師が、誰の依頼で呪いを掛けたか漸く判明した。以前、フィリップが動物園を案内した隣国の王女殿下だ。彼女はフィリップへ懸想しアプローチするも、フィリップは婚約者がいるからと断り適切な距離感で関わっていた。それに激怒した王女は魔術師に呪いを依頼したらしい。
「現在、隣国とどう決着を付けるか協議中です。」
フィリップの側近ローレンスが報告した。フィリップの隣で聞いていたレナは複雑な表情で聞いている。
「レナ、嫌な思いをさせてすまない。」
「ち、違います!私……。」
言いづらそうに口を閉じたレナへ、フィリップが「教えて?」と顔を覗き込めばレナは言葉を続けるしかなかった。
「……フィリップ様が断ってくれたと聞いて、その、嬉しくなってしまったのです。」
フィリップ様が大変な思いをしていたのに申し訳ありませんと、レナが頭を下げるとフィリップはレナを引き寄せ抱きしめた。
「フィ、フィリップ様!」
「違うでしょ?」
「う……。フィル様……。」
「うん。」
嬉しそうに頷くフィリップを見て、ローレンスはやれやれと首を振った。ここ数日ですっかり主の溺愛っぷりも見慣れてしまった。
「殿下。休憩を取って参ります。」
「ああ。暫く帰ってくるなよ。」
邪魔者を追い払うかのように手を振るフィリップを眺めながら、ローレンスは内心呆れていた。今まではローレンスがどんなに苦言を呈してもレナを邪険にしていたというのに、ここまで人は変われるのか……と。
「……フィル様、その、お仕事をしないと。」
「分かってる。動物園に行くためだからね。だけど、少し充電させて?」
「うぅ……。」
「レナが断ってくれて嬉しいと言ってくれて、俺も嬉しかった。」
「フィル様。」
「レナ。絶対に他の人の所なんて行かないから安心して?」
「……っ、はい!」
「さ、ローレンスが帰ってくるまでに他のデート先も決めておこう。」
「ふふふ。楽しみです。」
そう言って笑顔を見せるレナの額に、口づける。初めて会った頃から、レナの笑顔を好きになって、ずっとこうやって笑顔を見たかった、と気持ちを込めながら。
<ネズミの王子様の声は、氷の令嬢には届かない。:完>
最後までお読みいただきありがとうございました!!
マーサとミーサを気に入って下さった方、二人の親戚バーサが登場する『あなたから、言われるくらいなら。』を宜しければお楽しみください。
46
お気に入りに追加
193
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説

好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜
ぐう
恋愛
アンジェラ編
幼い頃から大好だった。彼も優しく会いに来てくれていたけれど…
彼が選んだのは噂の王女様だった。
初恋とさよならしたアンジェラ、失恋したはずがいつのまにか…
ミラ編
婚約者とその恋人に陥れられて婚約破棄されたミラ。冤罪で全て捨てたはずのミラ。意外なところからいつのまにか…
ミラ編の方がアンジェラ編より過去から始まります。登場人物はリンクしています。
小説家になろうに投稿していたミラ編の分岐部分を改稿したものを投稿します。


悪役令嬢は楽しいな
kae
恋愛
気が弱い侯爵令嬢、エディット・アーノンは、第一王子ユリウスの婚約者候補として、教養を学びに王宮に通っていた。
でも大事な時に緊張してしまうエディットは、本当は王子と結婚なんてしてくない。実はユリウス王子には、他に結婚をしたい伯爵令嬢がいて、その子の家が反対勢力に潰されないように、目くらましとして婚約者候補のふりをしているのだ。
ある日いつものいじめっ子たちが、小さな少年をイジメているのを目撃したエディットが勇気を出して注意をすると、「悪役令嬢」と呼ばれるようになってしまった。流行りの小説に出てくる、曲がったことが大嫌いで、誰に批判されようと、自分の好きな事をする悪役の令嬢エリザベス。そのエリザベスに似ていると言われたエディットは、その日から、悪役令嬢になり切って生活するようになる。
「オーッホッホ。私はこの服が着たいから着ているの。流行なんて関係ないわ。あなたにはご自分の好みという物がないのかしら?」
悪役令嬢になり切って言いたいことを言うのは、思った以上に爽快で楽しくて……。
[完結]想ってもいいでしょうか?
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
貴方に逢いたくて逢いたくて逢いたくて胸が張り裂けそう。
失ってしまった貴方は、どこへ行ってしまったのだろう。
暗闇の中、涙を流して、ただただ貴方の事を考え続ける。
後悔しているの。
何度も考えるの。
でもどうすればよかったのか、どうしても分からない。
桜が舞い散り、灼熱の太陽に耐え、紅葉が終わっても貴方は帰ってこない。
本当は分かっている。
もう二度と私の元へ貴方は帰ってこない事を。
雪の結晶がキラキラ輝きながら落ちてくる。
頬についた結晶はすぐに溶けて流れ落ちる。
私の涙と一緒に。
まだ、あと少し。
ううん、一生でも、私が朽ち果てるまで。
貴方の事を想ってもいいでしょうか?


【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる
花草青依
恋愛
"氷の令嬢"と揶揄されているイザベラは学園の卒業パーティで婚約者から婚約破棄を言い渡された。それを受け入れて帰ろうとした矢先、エドワード王太子からの求婚を受ける。エドワードに対して関心を持っていなかったイザベラだが、彼の恋人として振る舞ううちに、イザベラは少しずつ変わっていく。/拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』と同じ世界の話ですが、続編ではないです。王道の恋愛物(のつもり)/第17回恋愛小説大賞にエントリーしています/番外編連載中

【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
楽しく拝読させていただきました。
王子これからは婚約者を大切に
隣国王女sideが読みたいなと思いました。
ファル子さま
感想ありがとうございます!
これからは大切にしてくれる筈です😊✨
そうですね!隣国王女のその後も気になりますよね、今後の参考にさせて下さい❣️
お読みいただきありがとうございました♪
完結おめでとうございます㊗️
おもしろかったぁ~🥰💕
フィリップ殿下が、今までのレナちゃんへの態度を猛省してくれて良かった👍️✨これからは溺愛の日々になりそうですね😍💕
レナちゃん、『殿下がネズミに変えられていた事🐁』にはスルーで、『ネズミをリスだと勘違いしていた事🐿️』にショックを受けていた所が、個人的にツボで爆笑でした🤣🤣
マーサさん、いつでも取り出せる場所に箒を常備している所、流石です!!ミナライタイ🤣
『冷徹執事…』の題名を見た時もそうでしたが、今回も過去の大好だった作品との繋がりを知って、とても嬉しかったです😍💕
引っ越してしまった大親友に、再会できた感覚です😂🤝
たまこ先生✨今回も面白いお話をありがとうございました📖✨
Kitaさま、素敵な感想ありがとうございます!
リス🐿と思い込んでいたのにネズミ🐭だと知ったレナのショックと言ったら🤣🤣
本物のリスを早く見に行けますように✨
バーサの親戚のマーサ&ミーサを気に入って貰えて嬉しいです❣️大親友に再会なんて嬉しすぎるお言葉です💕
Kitaさま、最後までお読みいただきありがとうございました♪
バーサちゃんとミーサさん、親戚なんですね😍💕
バーサちゃん大大大好きなので、テンション爆上がりでございます💓⤴️⤴️
しかもマーサさんも出て来た🤣🤣
ここの家系、皆さん物理攻撃を得意としている様で…『困った時は箒で解決❤️』なんですね🤣🤣
面白すぎます🤣🤣
レナちゃん💕一途で健気で…😍ものすっっっごく推せます😍
フィリップ殿下🐭も、レナちゃんの一途な想いに、早く気持ちが追い付いてくれるといいな💝
Kitaさまが書いてる通り、『困った時は箒で解決❤️』家系です🤣🤣
私もバーサがお気に入りなので、つい箒ネタを入れてしまいました♫🤣
Kitaさまにもバーサを気に入って頂けて嬉しい限りです😆💕
レナのことも推して貰えて嬉しい〜〜!!フィリップにもレナの気持ちが通じますように!