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シャーロットside
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しおりを挟む「待ってくれ・・・十五年前なんて、そんなこと。」
ハリー様は混乱し、受け入れられない様子だった。
「十五年前、私は八歳でした。その頃、ハリー様と初めて会ったときからお慕いしておりました。」
「だけど、王子妃候補で無くなるかもしれない、という状況になった時、落ち込んでいたと聞いた。あれはエドモンド第二王子を愛していたから落ち込んだのでは?」
「十七歳の頃ですね。あの時は、ハリー様が辺境の地へ行くと決まり、お会いできなくなったために落ち込んでいたのですわ。」
「会えなくなるって・・・。シャーロット嬢が王子妃候補になった十歳の頃から会っていなかっただろう。」
「いいえ。十歳の頃から、ハリー様が辺境へ行く十七歳までずっと騎士団の訓練所へ足を運んでおりました。ハリー様を一目見たくて。」
ハリー様はどうしても信じられないのだろう。難しい顔をして、私がハリー様を好きではないと証明しようと質問を繰り返す。私は躍起になって、恥を捨て、全ての思いを伝えた。
「じゃあ、何故舞踏会の日から様子が可笑しかったんだ?」
「う・・・それは、その、ハリー様があのキャシー様と親しそうにされていたからですわ!名前だって呼び捨てでしたし、気安く話されてました!今日だって、二人でデートされていたんでしょう!」
キャシー様のことを思いだし、目にじわじわと涙が溜まり、ぽろぽろと流れる。それに気付いたハリー様は慌てて武骨な逞しい指で拭ってくれる。
「ハンカチも持っておらず、すまない。」
申し訳なさそうに拭い続けるハリー様に、私は先程購入したものを思いだし、差し出した。
「これは・・・?」
「今流行りの、恋愛成就すると言われているハンカチです。ハリー様へ思いを伝えたくて先程探してきたのです。」
「ああ、これは俺とシャーロット嬢の瞳の色だ。」
ぎこちなく、だけど優しく抱き寄せられる。「・・・嫌ではないか?」と尋ねるハリー様へ小さく頷くと、安心したように表情を緩めた。
「キャシーのこと、不安にさせてすまない。だが、シャーロット嬢が思っているような関係ではない。」
ハリー様は小さな箱を差し出した。私が開けてみるとそこには、ターコイズの宝石が施された二つの指輪が並んでいた。
「キャシーの夫は宝石商で、シャーロット嬢に贈る指輪の相談をしていたんだ。・・・それで夫婦にシャーロット嬢の話を色々としていた、その、惚気というやつだ。だから、舞踏会の時キャシーが変なことを言ったのも、不躾に見てきたのも、俺のせいだ。ずっと紹介して欲しいと言われていて、俺がシャーロット嬢を見せたくなくて断っていたんだ。」
「見せたくない?」
「俺のシャーロット嬢なのに他の男に見せたく無い。例え既婚者でも、シャーロット嬢が可愛すぎて見せたく無い。」
可愛い、なんて初めての言葉に、見せたく無いという初めての独占欲に、私の心はじわじわと満たされていく。
「今日はこれを受け取りに行って、店の外までキャシーが見送りにきただけだ。そこで、シャーロットに会って、動揺してしまったんだ。だけど、誤解させるような真似をしてすまない。」
「い、いえ。状況が分かれば安心しましたわ。私こそ変な誤解をしてしまってごめんなさい。」
ソフィアの「事情があったかもしれない」という言葉が頭を反芻する。私が一人突っ走って考えすぎてしまっただけだ、恥ずかしさに顔を赤くする。
「妬いてくれたんだろう?」
「ひゃっ」
急に耳元で囁かれ、思わず小さな悲鳴を上げる。間を置いて小さく頷くと、満足そうに目を細め、より強く抱き締められる。
「ハリー様・・・?」
「ずっとこうしたかった。俺もずっとシャーロット嬢だけを愛していたから。」
砂糖のように甘い言葉を、私は上手く飲み込めなかった。
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