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シャーロットside
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しおりを挟む国王陛下と王妃様へのご挨拶の後、エドモンド第二王子とステファニー第二王子妃へご挨拶する。幼なじみに会える嬉しさと、最後まで自分には好きな人がいることを伝えられなかった後ろめたさから、複雑な感情が胸の中をぐるぐると回る。
「ラッセル騎士団長、シャーロット嬢、婚約おめでとう。二人の婚約をとても嬉しく思う。」
「婚約おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
私の気まずい思いを、ハリー様は察してくれたのだろう。悟られないほど、ほんの少しだけ、私を背に庇ってくれたのを感じた。
「シャーロット様?もしよろしければ・・・また以前のように一緒にお茶会ができたら嬉しいのだけれど如何かしら。ご結婚準備でお忙しいかしら?」
ステファニー様は、小声でそう尋ねた。やはりステファニー様は優しく聡明だ。私が断りやすいように、断る理由まで提示してくれて、誰にも気付かれないように小声で尋ねてくれて。おそらく、異国の地に来て、心を許せる友人がまだ出来ていないのではないだろうか。本当は喜んでお茶会に出席したい・・・だけど。
私がずっとハリー様をお慕いしていると、エドモンド様にもステファニー様にもお伝えできたら、お二人も後ろめたさから解放されるはずだ。だが、それを伝えてしまってもいいのだろうか。もしも・・・もしもハリー様が何か裏の理由があって婚約していたとしたら・・・これをお二人に伝えてしまうことでハリー様が私と婚約破棄しづらくなってしまうかもしれない。ハリー様に負担をかけることが嫌だった。こんな思いを抱えてお茶会に出席しても支障ないだろうか。
こんな思いが頭を駆け巡ったのはほんの一瞬だったのに。
「エドモンド第二王子、シャーロットはとても勤勉で頭が下がります。」
「ああ、昔からシャーロット嬢は勉強家だったな。」
「なので私がデートに誘うのも一苦労なのですよ。シャーロットの休みが少なくて・・・その少ない休みは全て私が貰っています。年甲斐もなく婚約者期間を楽しんでいます。」
「な・・・!」
思わず顔を赤くし、声を漏らした私を、エドモンド様もステファニー様も微笑ましそうに見ている。
「二人が仲睦まじくて安心したぞ。」
「ふふふ、婚約期間は婚約者にお譲りしなくてはね。また結婚式が終わって落ち着いたら是非お会いしたいわ。」
挨拶を終え、人気のない端の方へ連れていかれる。ハリー様をちらりと見ると耳の端が赤くなっているのが見えた。ハリー様は、婚約のことをあのように他の方に話されるタイプではない。かなり無理をされたのだ・・・私を守るために。
「先延ばしにしか出来なかったな。守ると言ったのに、すまない。」
「いいえ。守ってくださりありがとうございます。」
「まぁ、ほとんど国王陛下に役目を取られてしまったがな。」
苦笑いをするハリー様を見ると、額に汗が光るのが見えた。エドモンド様もステファニー様も寛容だったから、受け止めてもらえたが、先程のハリー様のお話は不敬と捉えられ兼ねないものだ。ハリー様は必死で守ってくださったのだ。
「ハリー様、少し屈んでいただけますか。」
不思議そうにしながらも屈んでくれたハリー様の額をハンカチで拭う。
「シャ、シャーロット嬢!ハンカチが汚れてしまう・・・。」
「私のために、盾となって下さったこと、とても嬉しかったです。」
初めて、密着していると言っても良い距離だった。笑顔を見せると、ハリー様も微笑みながら頷いた。いつものぎこちなさは消えていた。
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