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猫の国の動乱
和平プロセス3
しおりを挟む<ミャウシア海軍と連合軍の休戦協議の場>
ミャウシア軍代表となったフニャンがポンポタニア代表との話し合いを終えると今度はグレースランド代表のエリザ王女との談話に移った。
ここで王女は今までの超がつくほどの温和な態度が一変してポンポタニア代表ほどではないがそれなりに厳しい態度でフニャンに臨んだ。
なぜなら彼女はグレースランドの代表としてミャウシア軍代表のフニャンに対談しているのであり、あくまでも国の意向を代弁しなければならない。
グレースランドはミャウシア地上軍の侵攻によって既に本国深くまで攻め込まれている現状があるだけに当然ながらその負の感情は非常に大きいものと言わざるを得ないのだ。
フニャンと王女の対談ではそんな感じの重苦しい雰囲気の中で休戦の条件が話し合われ、これも大筋で合意に至たった。
そして王女がフニャンにあることを聞く。
「フニャン中佐に聞きしたいことがあります。それはミャウシアの今後です。ミャウシア海軍による政権の奪還がかなったとして、その新政府の要職に誰が、どのような人物が着くのかという展望は有るのでしょうか?」
唐突に全く未定の先の質問を振られたことにフニャンは驚き表情が少しだけ崩れた。
「現時点では誰がどのポストに着くのかに関しては一切が未定です。その時にならなければわからないとしか言えません」
フニャンは王女が何を考えてそう言ったのかわからないので仕方なく正直に答えるしかなかった。
だが王女はそれに続くように発言する。
「そうでしょう。そこで我が国は休戦条件とは別に和平条件を今ここで通告したいと思います。その条件として我が国はフニャン・ニャ・チェイナリン中佐、貴方がミャウシアのトップに立つ、もしくは主導陣の一人としてミャウシア新政府に深く携わると表明するのであれば、和平並びにミャウシア新政府と同盟を結びミャウシアクーデター政権との戦いに参加することをここで提示させていただきます!」
議場がどよめいた。
休戦協定の話から一気に同盟関係の話に議題が飛躍する。
さすがのフニャンもこれには面食らってしまう。
「そ、それは...」
フニャンは王女を見る。
その表情は自身に満ち溢れていた。
フニャンは王女がしたいことを頭では分かっていたがその反応に思考が回らなかった。
王女は非常に短い間であったがフニャンの人なりを見てきた。
そこには聖人君子にも似た揺るぎない普遍的な正義感があった。
そんな感性で人の上に立つ人は大変少なく、貴重だと言っても良い。
もしフニャンがミャウシアの新政府に携われば、少なくとも他国に戦争をふっかけるなどという蛮行はありえないだろう。
そして今後の戦いにおいてグレースランド軍やザイクス軍からの協力はミャウシア海軍にとって喉から手が出そうなほど魅力的、というより不可欠なものだった。
その両者の欲しがっているものを王女はフニャンに共有しようと提案したのだ。
「できればここで決めていただきたい。我々はあなたがミャウシアの政府の要職に着くことを希望します」
「....」
フニャンは固まったまま考えを巡らす。
その中でニャマルカム大将に言われたことを思い出す。
フニャンは自分のような人間でも、自分だからこそ必要とされているのだと改めて自覚するのだった。
そして自分がミャウシアの顔として職務を全うすることが大勢のためになるというのであればそれは率先してやるべきことなのだと決心がつく。
「...ありがとうございます」
フニャンは小さい声でそう言うと続くように王女に言う。
「では、私、フニャン・ニャ・チェイナリンは正当なミャウシア軍の代表として立候補することをここで表明させていただきます。現ミャウシア海軍の最高位であるニャマルカム大将から既にそれに関する打診を受けており、軍および新政府の意思決定に深く携わることを固くお約束することができます」
王女はフニャンのいい表情を見て満足した様子で言葉を返した。
「その言葉が聞けて良かったです。この内容は本国に伝え、速やかに返事をしたいと考えています。我々の要求や申し出は以上です」
こうしてグレースランド側との話し合いは終わった。
この話し合いによって休戦協議は一気に同盟への話し合いに昇華したのだった。
この流れからザイクスもグレースランドに同調する。
NATO側に関しては言わずもがなである。
こうして会談は終わりこの会議で話し合われたことが本国に伝えられ、政府の了承が降り次第、翌日に合意の調印を行うことが決まった。
そのため一旦、使節団はザイクス軍の空母を後にするために下船のためのボートが止まっている甲板にそれぞれ別に歩き出す。
だがここでポンポタニア代表の太子がフニャンの一向に近づいてくる。
「どうもフニャン代表」
「どうも」
「今回の協議、色々驚かされましたよ。おかげでこちらもアドリブを効かせなけれればならなくて大変でした」
「...」
「ところで代表に一ついいですか?」
「...どうぞ」
「そうですね。あなたはポンポタニア王国の良き友人となれますかな?」
この質問にその場の一同がぽかんと置いてけぼりになる。
フニャンもすぐに答えないのでしばらく静寂が続く。
そしてフニャンが口を開く。
「わかりません。でも私はポンポタニアの民と共にありたいと思っています。今はそれしか言えない」
「...」
対しはその返答を聞いてフニャンをじっと見ると口を開いた。
「ありがとうございます。下船の際はお気をつけて」
フニャンは小さく一礼するとボートに下りた。
それを太子は見送りながら独り言を呟いた。
「信義に値するのどうの以前にそもそも政治屋ですらないか...。面白くなってきそうだ」
翌日、休戦の調印が行われた。
連合軍は堅い結束があるわけではないので個々に条件を設定したにもかかわらず、そのまとまりは大変早かった。
これにより形上は連合軍とミャウシア海軍の戦いは終結するが完全にはもうひと悶着経なければならなかった。
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