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猫の国の動乱

仲間を増やす2

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<<ミャウシア軍斥候部隊>>

フランス軍部隊とグレースランド軍部隊の撤退に際し、北西側からミャウシア軍の別の部隊が近づいていた。
今の所振り切れると考えられているが、その部隊の斥候が先行して近づいているのを既にフランス軍のドローンが確認している。
撤退に支障があれば排除しなければならないが、今回は特殊な事情でこの斥候部隊を捕縛するという荒業をやってのけようとしていた。


ニーナを先頭にニャーラ、フニャンが斜面を歩いてミャウシア軍偵察部隊に近づく。
できる限り近づきつつ偵察部隊には気付いてない素振りをして拾ってもらう機会を伺う。

「やっぱりこれ失敗するんじゃないの?」

「...」

「ねえ」

「夜月に祈りましょう」

「もっと自信が付きそうな返答してよ...」

「こいつ、口数少なすぎでしょ」

新入り二人はリーダーのフニャンに不満たらたらだった。
最悪失敗すれば自分たちは斥候に撃たれるだけにアドレナリンが吹き出していた。
そしてフニャンの口数の少なさというか必要以上には喋らない性格に面白くないやつと呆れていた。

ちなみに夜月に祈るというのは彼らの文化、宗教に関係している。
夜を神聖な時間として捉え、月を神のように崇めている自然信仰から生まれた言葉である。
実際彼女たちは夜行性に近く、自然な睡眠サイクルでは夜起きている時間が長い。
さらにフニャンの出身部族ネニャンニャ族が惰眠部族と言われるのは彼女たちの種族の中で睡眠時間が最も長い一日12時間であることが由来であった。

ピィィィィィ!

口笛がミャウシア軍偵察部隊がいる方から聞こえてきた。
そっちを見ると遠くでこっちに来るよう合図を送る兵士が見える。
予定通り釣ることに成功する。

そして時間を少し遡る。

「斥候を捕まえる?」

フニャンの提案に一同が驚く。

「うん。さっきあなたの上官が別の部隊が近づいている趣旨の発言をしていたと思うんだけど違ったかな?」

「いや、合ってる。フランス語わかるの?」

「いくつかの単語は覚えることができた」

「すご...」

「多分、偵察部隊が先に進出していと思うんだけど...」

「ああ、既に居場所は割れている。あの斜面からこっちを見ているらしい」

「この距離から見つけたの?」

「小型偵察機でね。捕まえるならすぐに部隊を編成することを進言してくる。相手はたかだか2個分隊だが、ミャウシア人は耳がよすぎて近づくのが難しいのがなあ」

「それなら手はある」

「どんな?」

「私達が囮になる。その隙きに裏に回って。私達は前方の音を拾うのは得意だけど後ろは多分あなた達より疎かよ」

「囮になるの?危険すぎだよ」

「無策に近づけば銃撃戦になることもあり得る。上手く行けば完全に囲んだ上で降伏を狙えるこの策はベターだと思う」

「....わかった。とりあえず上官に話す。ここで待ってて」

「了解」

ナナオウギと中隊本部へ歩いていく。
フニャンは新しく加わった仲間に問い詰められる。

「囮って?」

「連合軍から逃げてきたのを装って近づき、タイミングを見計らって人質を取る」

「えええ?!」

「その間に彼らが斥候を取り囲んで投降するよう説得する。できなければ兵力を引き離すよう後退して人質をいただいていく」

「失敗したらどうすんの?」

「...」

「そこまでして負傷したやつ助けたいの?」
「助けたい。....絶対死なせない」

フニャンは言葉をかぶせるように即答して決意を示す。
新入りはその決意を見てそれ以上聞くのをやめた。

かくして斥候襲撃作戦が発動した。


フニャン達は偵察部隊に取りいる。

「航空隊かお前たち?」

「そうよ。しばらく前に撃墜されて連合軍に追っかけられてたのよ。敵はとてつもなく強力な対空兵器もを持ってる」

「向こうの連合軍に遭遇してないのか?」

「したけど逃げ切った。さっき銃声したでしょ」

作戦開始時に無駄弾を撃ってアリバイ作りをしていたのだ。

「なるほど。敵の数はわかるか?」

「連隊1個半ってとこかしら。戦車中隊が随伴している」

「わかった。よし、全員撤収だ。敵の戦力は概ね予想通りのようだ。味方を収容して下がるぞ」

偵察部隊の指揮官は用を足したのか撤収の指示を出してきた。

「ちょっと待って。歩いたり走ったりして流石に疲れたわ。少し休ませて」

「なんだと」

「ほんとお願いします!ほんの少しでいいんで」

「わかった。10分休憩だ」

「ほんとありがとうございます」

ニーナは指揮官に食い下がって休憩をもぎ取る。
しばらく全員座り込んでいると話が始まる。

「おい。そこのネニャンニャおまえらの仲間か?」

「別の隊の奴よ。あたしも驚いたけど連合に追われた時は働いてくれたからそこは大目に見てやってるだけよ」

「ふん」

「そんなイライラしなくていいんじゃない?あんたB型f?」

ニーナはさり気なく血液型を聞く。
血液型性格診断の迷信はミャウシアにも存在したのでそれを引っ張り出したのだ。

「俺はOf型」

「へえ、悪かったわ」

この言葉にフニャン達はピンときて人質候補がこの男性兵士に決まる。
そしてフニャンは時計をちらちら見て仲間に目で合図を送る。

「どうした?」

偵察部隊の兵士がフニャンに突っかかる。

「時間を確認していました」

「それにしては挙動不審だ。何か隠しているのか?」

兵士はただ単に差別をしているだけで怪しんでなどいなかった。
しかしここで運悪くフニャンの素性が露呈する。

「そういえば昨日航空隊の騒動で言ってたのってネニャンニャじゃなかったか?」

いよいよ怪しまれ始める。
フニャンはやはり自分は来るべきではなかったと思いつつも少し早いながらも行動を起こすことにした。
そしてアクションを起こしたはニーナとフニャンであった。

二人は瞬時に拳銃を取り出して偵察部隊兵士の背中に取り付くと拳銃を背中に当てて人質にとる。
あまりの出来事に偵察部隊の兵士たちはとにかく驚くがすぐに小銃を構えて一触即発の状態が生まれる。

「何のつもりだ!?」

「何って、こういうつもりよ」

ニーナは指揮官を煽る。

「銃を降ろせ。目的は知らんがこのままではただでは済まさない!」

「それはどうかな。ねえ、隊長さん」

「...」

「やはり例の件に貴様ら絡んでるな」

「そんなに怒らなくてもいいのに」

ニーナは少し時間を稼ごうと無駄話するように喋る。
それに気付いたのか偵察部隊は距離を詰めようとする。

「それ以上近づいたらこいつの土手っ腹を蜂の巣にするわよ!下がりな!」

ニーナはフニャンに視線を送る。
もう時間稼ぎできない!
そう訴えている様子だった。

だがここでフランス軍は準備完了とばかりに姿を表す。
四方八方からFA-MAS小銃を構えたフランス軍兵士が現れミャウシア軍偵察部隊は完全に囲まれる。

「な!」

「さてどうするよ?」

「くそ!」

「投降してください。皆さんの安全は保証します。決して悪いようにはしません」

ニーナの発言の後、フニャンは偵察部隊に最後通告を行う。

「貴様、祖国を裏切るか!」

「いえ、タルル将軍に反旗を翻すだけです」

「反旗だと?」

「そうです。我々はタルル将軍に反旗を翻すために連合軍に助力を求める考えです。上手く行けば派遣軍の苦境もなんとかできるかも知れないのです。このような無礼を働いたことはお詫びします。ですがどうか我々を信じてご協力いただけないでしょうか?どうしてもというのであればこの後、武装解除した上ですぐ開放することをお約束します」

「...」

フニャンは願うように返答を待つ。

「全員武器を降ろせ」

期待した言葉を聞けてフニャンはホッとした顔をする。
そして事情を説明し、アーニャンに必要な血を手に入れることができた。
またフニャンは派遣軍の人心は意外に素直なのだと思うようになりあることを思いついた。

だがことはそんな簡単にはいかないのであった。
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