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猫の国ミャウシア連邦

地上戦2

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<<ミャウシア軍占領の街>>

占領区域の亜人の街で市街戦が勃発する。
ミャウシア軍の防御線手前の街で退却するミャウシア軍の車列が市街を通過するがウクライナ軍部隊が追撃で直ぐそこまで迫っていた。
ミャウシア軍はここで近接戦でNATO軍の疲弊を蓄積させたかった思うようにいかない。

「敵の航空機が来たぞ!」

兵士が猫耳をピクピク動かして方向を確認する。
建物の間などに設置された22mm対空機関砲を数人の兵士が操作して飛行中のウクライナ軍機に狙いを定める。

だが狙っていた標的が先制攻撃を浴びせる。
ウクライナ空軍のSu-25フロッグ攻撃機だ。
アメリカ空軍のA-10サンダーボルトに対抗して作られた同系統の重攻撃機でA-10に追従する強力な火力と防御力が売りだ。
そのSu-25攻撃機がGSh-30-2 30mm機関砲を発砲し対空陣地が土煙で覆われ撃破される。
そして旋回して攻撃位置に付き直すとS-8ロケット弾を発射して別の目標を粉砕していく。
しかしミャウシア軍も意地でも守り抜きたいのか対空砲が多数設置されていて激しい対空砲火を浴びせ曳光弾が空を飛び交いまくる。

「だめだ、数が多すぎる。防御を固められる前に街を落としたほうが効果的かもしれない」

パイロットが無線で上に状況報告を行う。
ここでウクライナ軍は街を迂回して行こうか悩んでいたが籠城戦の様相を呈してきていたため、街の亜人への被害が多大化するであろう後の攻略を破棄し、市内への突入を決断する。
夜には精密爆撃が行われミャウシア軍の対空砲の曳光弾も空に打ち上がりニュースで流れる中東の戦争の映像にも見える。

翌日、ウクライナ軍部隊が市街周辺に集結し突入準備に入る。
この時点で周辺のミャウシア軍部隊の4割は街を通って退却に成功しているが残りは捕まるか移動できずに身を隠していた。
街を攻略するウクライナ軍部隊の追撃で撤退戦もままならなかったのだ。
そして時間もあまりなかったので市街の要塞化も進んでいない。
そこへウクライナ軍の攻勢が始まった。

ズドオオオン!

T-64BV戦車の125mm滑腔砲から撃ち出された榴弾が市街の建物に命中し爆発する。
近代化前の建物で異様なほど背の低い建物で爆発によって簡単に瓦礫になる。
ZSU-23-4シルカ対空車両も戦闘に参加する。
シルカは23mm機関砲を4門積んでいて高い対空火力を持つが同時に地上への射撃でも高い制圧射撃能力があるのでそれを存分に振るうのだ。

パパパパパ!

甲高い爆音が轟き市街外輪から広範囲に土煙が上がる。
ミャウシア軍部隊は制圧射撃で損害を蓄積させていた。

「あっちの建物の奴らがふっとばされたぞ。第6分隊で穴埋めしろ!」

「衛生兵!」

「尻尾...、私の尻尾はどこ?」

ミャウシア軍兵士たちは市街外輪に留まって敵の侵入を防ごうとするが砲弾の雨あられで爆傷が増えていく。
早々に衝攻能力を損失していきウクライナ軍歩兵部隊が市街に取り付き始める。

「第2小隊、右へ回れ。アンブッシュ注意!」

「大通りから先の区画に敵が守備隊を配置しています!」

タタタタタタン、タタタン!

ロシア軍とそれに連なる武装組織との戦闘で実戦経験豊富なウクライナ軍は市街戦でも数で勝るミャウシア軍を翻弄し、市街の勢力図がどんどん上塗りされていく。
とくにほとんどボルトアクションライフルばかりのミャウシア軍と全員アサルトライフルと機関銃で武装するウクライナ軍の火力差、さらに市街に突入したBTR装甲車やBMP-1,2歩兵戦闘車の砲火にも助けられていた。

ズドオオン!

BMP-1歩兵戦闘車の73mm低圧砲の砲撃でボルトアクションライフルを両手で持って退却するミャウシア兵の一人が吹っ飛ぶ。
幸い擦り傷だけで済んだが意識がもうろうとして体を起こしたものの立ち上がれず、壁にもたれて伸びてるところをあえなくお縄となる。

「そんなぁぁ...」

へなへなになったミャウシア兵はそこで初めてまともに見る地球人に驚く。
自分より40cm以上大きく見た目は巨人だった。

「で、デカい...」

また通りの一角ではバリケードを張ってボルトアクションライフルを必至にコッキングさせながら銃撃するミャウシア兵に対しBMP-2歩兵戦闘車が砲撃せずに突撃してバリケードをなぎ倒す。
バリケードを壊される前にそれを見て全員逃げてたミャウシア兵は更に退却し遂に街の反対側まで押し込まれてしまう。
そして抵抗していた4000人のミャウシア兵は逃げることもできずどうしようもなかったため降伏を余儀なくされる。

1時間後、市街の通りに何百mに渡ってミャウシア兵捕虜の大行列ができる。
するとどこかしこから小石が飛んできてミャウシア兵に当たり、負傷者が出る。
投げたのは町の住民である小人の亜人であった。
身長はミャウシア人より更にずっと低く100cmくらいしかなかい。
さらにウクライナ兵にも石を投げてきたりもするので流石にやめさせるために空に向かってAK-74で威嚇発砲して追い払う。
住処を戦場にされ相当据えかねている様子だった。
特にミャウシア兵に対してはかなり怒っている様子で、ミャウシア人以上に可愛らしい顔つきでもその憎悪が読み取れるほど厳しい顔をする。

彼らの言語がわからないので聞き取りはできなかったが、後に捕虜からの聞き取り統治に辺り略奪や私刑、様々な悪事をミャウシア兵たちが働いてほぼ隷属化させていたことが判明する。
ここら一体は小人の亜人、ポポルフェ族の土地でミャウシア占領軍将兵のずさんな統治で圧政状態にあったのだ。
戦場化させたNATO軍にもいい顔はしなかったが開放と支援を約束して関係を良好にしたのはしばらく先のことであった。


<<ミャウシア軍増援部隊>>

欧州方面の前線に配備された12万のミャウシア派遣軍が総崩れになる中、後方からさらに20万近くの増援兵力が接近中であった。
しかも戦車4000両、装甲車両5000両を擁する重装甲の大群である。
その第一波は前線からほど近いところまで接近していて二波、三波もほど近いところまで来ていた。
しかしそれを粉砕しようとNATO軍地上部隊の長距離迂回部隊が側面から急速接近していた。

この軍団はフランス陸軍、ドイツ陸軍、ポーランド陸軍、イタリア陸軍のなどの旅団、オランダ陸軍、スウェーデン陸軍などの大隊から構成されている。
軍団構成は前衛に各機甲中隊が付き後方に歩兵部隊などが追走する形だった。

そして戦端は非常に開けた高原地帯で行われることになった。
フランス陸軍がミャウシア軍の複数連隊の戦車800両、随伴装甲車1100両を発見する。
既に射程範囲内だったため間を入れず砲撃を始める。
戦闘は非常に開けた回廊で行われた。
フランス陸軍のAMX-56ルクレール戦車80両、AMX-10RC装輪戦車40両、AMX-10P歩兵戦闘車、VBCI歩兵戦闘車からなる戦闘部隊は奮戦し、あまりに数が多いのでミャウシア軍戦車の正面装甲を25mmAPFSDS弾で撃ち抜けるVBCI歩兵戦闘車も能動的に戦闘に参加する。
戦闘は2時間で蹴りが付いた。
戦場に残されたのはおびただしい数のミャウシア軍戦車、装甲車の残骸だった。

それとは別の場所ではドイツ陸軍のレオパルド2A6戦車、ポーランド陸軍のレオパルド2A4戦車が砲撃戦を展開していたがどれも圧勝の雰囲気であった。
NATO軍はミャウシア軍との戦闘が非常に見晴らしがいい場所で起こるよう場所と進軍速度を入念に調整していたのだ。


<<ミャウシア軍増援部隊指揮所>>

前線から離れなおかつ山林の斜面に掘られた地下施設にそれはあった。
こんなことになったのは開けた場所に設営すれば翌日にはNATO軍がレーザー誘導爆弾を降らせてくるためだ。
出入りする者も極力減らしさとられないようにする。

「どうすればいい...3個師団はもう使い物になりそうもない」

「まだ10万の兵力が健在ではないですか」

「何を言う。この1週間の戦いで20万の兵力が戦うことも逃げることもできずに今も溶け続けているのだぞ。しかも残り10万は前線まで数日の距離にある。それまでに片が付いてまた同じことの繰り返しになってしまうわ!」

「ではどうするというのです?」

「撤退だ。それしかない」

「そんなことをすれば!?」

「わかっている。だがこれしかない。わざわざ敵に更に10万の将兵をくれてやる必要はない。銃殺刑も覚悟している。司令部には参謀総長を通して伝えてくれ...」

「わかりました...」

まだ健在なミャウシア軍部隊の欧州方面からの撤退、Uターンが始まった。
20万の将兵は置き去りのままだった。

NATO軍はミャウシア軍の撤退を察知し、峠や回廊、河川の縁に部隊を送り込み戦域から離脱しようとする敗残兵を逃さないよう掃討戦に入る。
ただNATO軍としても予備兵力はおろか更に追加で部隊を送り込んでり、兵力的なリソースは既にカツカツになっていた。
ミャウシア軍の撤退は願ってもないことでありその仕上げの掃討だった。


<<とある峠>>

山地手前の草原地帯にヘリが何機か駐機されていた。
まわりでは兵士たちが周囲を警戒する。
しばらくすると上空にC-160 トランザール輸送機やC-130ハーキュリー輸送機の編隊が現れ、輸送機から落下傘部隊が降下を始める。
パラシュートで地面に降下したのはフランス陸軍、ドイツ陸軍の空挺部隊だった。
峠に迅速兵力を送り込み、大したことができないであろう敗残兵を待ち構える。

案の定、ミャウシア軍敗残兵が峠に現れ散発的な戦闘になる。

タン!タタタン!

ズドオオン!

タタタタタタタタタン!

フランス陸軍兵士がFA-MAS小銃を連射する。
中にはAPAV40 ライフルグレネードを投擲するものもいた。
そして切り札はLLR 81mm迫撃砲でミャウシア兵をアウトレンジで攻撃する。

ズドン...ズドン...ズドン。

数秒間隔で迫撃砲弾が打ち上がりミャウシア兵目掛けて落ちていく。
たまらずミャウシア兵が降伏の仕草を取り始める。
フランス陸軍兵士が距離を徐々に詰めて近づく。

ナナオウギ上等兵もそのうちの一人だった。

兵士の一人がボディーチェックをするために近づく。
武器がないことを確かめた者から連行していく。
しかし、徹底抗戦思考のミャウシア兵が近くに潜んでいて拳銃で銃撃してきた。

ナナオウギ上等兵が咄嗟にFA-MAS小銃を単発で発砲し撃ってきたミャウシア兵がのけぞって倒れる。
近づくと痛そうに肩を抑えていた。
大丈夫なのかと思いきやどんどん血が出てくる。
動脈を切ったらしく出血が止まらない様子だった。

「衛生兵!」

衛生兵が駆けつけ応急処置を行う。
だが30分後、処置のかいなく撃ってきたミャウシア兵は失血死してしまった。
目を開けたままだったのをナナオウギ上等兵が瞼を下げて安らか顔にさせる。
手を下した感が残る結果になった上、少女といっても過言ではないミャウシア兵の容姿が心にぐさりと刺さる。
戦争で勝ってる側は意外と国を守っている感覚があまり沸かないし日本人で真面目な方のナナオウギ上等兵にこの光景はこたえた。

「....」

何も言わなかったがその日はずっと撃ち殺したミャウシア兵の顔が頭から離れなかった。

そして戦闘は収束していった。
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