傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

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第2章

第16話 15km…

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「はぁ…はぁ… 」
魔術を使うための修行と聞いたので、集中力さえあればいいと思っていた僕がバカだった。あの日から一夜が明け本格的にトレーニングが開始されたと思ったらおじさんは
「まぁ手始めにランニング15kmでどうだ?」
と言ったのだ。思っていたのとは違うが、これも修行の一環なのだろうか。
でも15km… そもそも15kmも朝から走る人なんて…いなくもないか…(2次元なら。)だが現実では見たことがないのは事実だ。などと考えていたら余計嫌になりそうなので、走るために集中した。
霞を助けるため。僕の目的はそれだけだ。それ以外は何もない。そう考えただけで何故かやる気が出てきた。
15kmのランニングの終わりはまだ遠いが一歩ずつ着実に前に進んでいく。無駄な思考回路はショートし、呪文のように「霞を助ける。」と念じる。
さっきよりも少しペースを上げて走る。横にはひまわり畑が見えた。まだそんなに走ってないようにも見えるかもしれないが、これで今日ひまわり畑を見るのは2回目だ。このひまわり畑をスタートしてぐるっと山あり谷ありのコースを走るのだ。これで大体5kmらしい。つまりあと2周、10km残っているということだ。考えたくもない距離だが霞のことを考えると自然とやる気が出るので意外とできる気がした。もともとそこまで運動神経が悪いわけではないし、得意なスポーツがないだけでどの競技も平均的にはできる。もちろん嫌いなことには変わりないが。
少しほかのことを考えていた思考回路を霞に戻す。
「あと2周なら頑張れる… はず。 」
と呟いた。高らかには宣言できていないがこの方がむしろ自分らしいとも思った。


ー4時間後ー
2周目は1周目に比べて少し遅くなっただけでかろうじてジョギングにはなっていたが、3周目になるとほとんど歩いていた。ここ4年まともに運動したことがない。言い訳のように聞こえるが紛れも無い事実だ。それで10km走れるのだ。だがまだ11時頃。これで訓練が終わりなはずがない。
この後案の定さらに辛い練習が続いた。
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