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第2章
第11話 正体
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「私の母型の祖父は食品メーカーの社長なんです。母の旧姓は川崎って言いました。そこそこ大きなパンの会社です。」
そう説明された時、真っ先に『カワサキパン』という会社名が思い浮かんだ。そこそこどころか大企業の社長ではないか、とツッコミを入れたくなるくらいメジャーなパンメーカーだった。今朝の朝食もカワサキパンのクロワッサンだった気がする。
「ご存知でしょうか?『カワサキパン』って。」
「ああ。今朝も食べたよ。」
おじさんはにっこり笑いながらそう答えた。うちの一家はカワサキパン愛好家といってもいいほど食べる。クロワッサンに食パン、蒸しパン等。新作が出れば家で試食会をするくらいだ。
「それで祖父の会社には、何かあるたびにケチをつけてくるライバル企業がいるんです。例えばですが、使ってもない化学調味料を使用しているとネット上にデマをながされたり。その企業の売り上げが最近著しく落ちているらしいんです。これだけでは証拠不十分だとは思うんですが… 私を狙う理由にはなると思っています。」
「霞、質問なんだけど。カワサキパンの社長はこの前亡くなったんじゃ… 今更霞を誘拐してもあまりお金は動かせないと思うんだけど。」
「社長はこの前父になったの。一応実績はあったし、次の社長候補でもあったから。いつでも1億ぐらいなら普通に渡せるくらいの売り上げはあるよ。」
「えっ⁈ なら霞ってめっちゃくちゃお嬢様?」
「あんまり言いたくないけど。」
「というか今カワサキパンの社長が今うちで暮らしてるの?」
「まぁそういうことになるかな。」
気づくと小一時間くらい経っていた。
びっくりするほど早く感じた。
カワサキパンの次の新作の情報を聞き出そうと思った瞬間、すごく慌てた様子でお坊さんが走ってきた。
「お、和尚‼︎ 黒ずくめの男数人がこちらに向かってきています。」
「そいつらは今どこにいる? 」
「ひまわり畑のあたりです。」
「防御を固めろ。あと奴らが来て、門を開けろと頼まれたら『和尚が不在のため開け兼ねます。』とな。おそらく門を開ける強硬策に出てくるだろうが忍術でも何でも使え。」
「了解しました。」
「歩夢と霞ちゃんはこっちに来い。」
「おじさんどこに?」
「ここで一番安心できる部屋だ。」
と言うとおじさんはニッコリ笑い、僕達を案内した。そこは小さな地下室らしき部屋で鉄扉で塞がっていた。
「知らなかった。ここにこんな部屋が。」
「まぁ物置ではあるんだが。」
「歩夢、若い衝動走らせて暴走するんじゃないぞ。」
「こんな時に何いってんの?」
「んじゃな。」
「わかった。」
そう言っておじさんは門の方へ歩いて行った。それと同時に僕らは鉄扉の鍵を使い、地下室の中に入った。
そう説明された時、真っ先に『カワサキパン』という会社名が思い浮かんだ。そこそこどころか大企業の社長ではないか、とツッコミを入れたくなるくらいメジャーなパンメーカーだった。今朝の朝食もカワサキパンのクロワッサンだった気がする。
「ご存知でしょうか?『カワサキパン』って。」
「ああ。今朝も食べたよ。」
おじさんはにっこり笑いながらそう答えた。うちの一家はカワサキパン愛好家といってもいいほど食べる。クロワッサンに食パン、蒸しパン等。新作が出れば家で試食会をするくらいだ。
「それで祖父の会社には、何かあるたびにケチをつけてくるライバル企業がいるんです。例えばですが、使ってもない化学調味料を使用しているとネット上にデマをながされたり。その企業の売り上げが最近著しく落ちているらしいんです。これだけでは証拠不十分だとは思うんですが… 私を狙う理由にはなると思っています。」
「霞、質問なんだけど。カワサキパンの社長はこの前亡くなったんじゃ… 今更霞を誘拐してもあまりお金は動かせないと思うんだけど。」
「社長はこの前父になったの。一応実績はあったし、次の社長候補でもあったから。いつでも1億ぐらいなら普通に渡せるくらいの売り上げはあるよ。」
「えっ⁈ なら霞ってめっちゃくちゃお嬢様?」
「あんまり言いたくないけど。」
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「まぁそういうことになるかな。」
気づくと小一時間くらい経っていた。
びっくりするほど早く感じた。
カワサキパンの次の新作の情報を聞き出そうと思った瞬間、すごく慌てた様子でお坊さんが走ってきた。
「お、和尚‼︎ 黒ずくめの男数人がこちらに向かってきています。」
「そいつらは今どこにいる? 」
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「防御を固めろ。あと奴らが来て、門を開けろと頼まれたら『和尚が不在のため開け兼ねます。』とな。おそらく門を開ける強硬策に出てくるだろうが忍術でも何でも使え。」
「了解しました。」
「歩夢と霞ちゃんはこっちに来い。」
「おじさんどこに?」
「ここで一番安心できる部屋だ。」
と言うとおじさんはニッコリ笑い、僕達を案内した。そこは小さな地下室らしき部屋で鉄扉で塞がっていた。
「知らなかった。ここにこんな部屋が。」
「まぁ物置ではあるんだが。」
「歩夢、若い衝動走らせて暴走するんじゃないぞ。」
「こんな時に何いってんの?」
「んじゃな。」
「わかった。」
そう言っておじさんは門の方へ歩いて行った。それと同時に僕らは鉄扉の鍵を使い、地下室の中に入った。
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