傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

文字の大きさ
上 下
31 / 38
第2章

第10話 最善策

しおりを挟む
それは…僕らがさっきまでいた銀行だった。その時、嫌な予感がした。それに気づいた時にはもう霞の手を取って走り出していた。匿ってもらえる場所もなければ、無事に帰れる保証もない。
「ねぇ…歩夢?」
相当走ったのだろうか、霞は息を切らしている。
「ごっごめん。」
「で、でもなんで…急に走り出したの?」
「嫌な予感がしたから。ほら前に霞の家を放火しようとした奴らがいただろ?」
「う、うん。」
「そいつらが遂に実行に移ったんじゃないかと思って。ただの偶然ならいいんだけど。」
「逃げ隠れ出来るような当てはあるの?」
霞が痛いところを突いてくる。だが幸いにもここが全く知らない土地ではない事が唯一の救いだった。
「今のところはないけど、とりあえずおじさんにメールしてみる。」
『to  勤おじさん
急啓
助けて!霞が追われてる。
そろそろニュースになってると思うけどショッピングモールの爆発事件から追われてる。たまたまかもしれないけど、前にも2度被害にあってるんだ。1回は未遂で終わってるけど、1回は実害を受けてる。
それで今場所的には近くにいるけど、交通手段は怖くて使えないので2時間くらいはかかりそう。とりあえず頼む。

from  神無月  歩夢』
とメールを打ちながらできる限りの力で走った。
「送信。」

しばらくスマホを気にしながら本家に向かって走っているとブーと振動したので、確認する
『to 歩夢
わかった。とりあえず頑張れ。
なんとしてでも無事で連れてこい。
話はそのあとゆっくり聞く。

from 神無月  勤』
これを確認した時一瞬安堵したが、今はまだ安堵してはいけないと思い全速力走った。霞はもともと体力がある方ではない。それでなのか走っているというよりも転びそうなのを必死にこらえている感じになっている。
体力も限界そうだったため、おぶるしかなかった。
「あ、歩夢?」
「霞、もう走れないでしょ?おんぶするから背中乗って。」
「え、?歩夢は大丈夫なの?」
「まぁなんとかね。」
「重いかもよ?」
「大丈夫だって。ほら」
「わ、わかった。」
そのあとはとにかく必死に走った。
市街地を抜け、山を越え、谷は越えられなかったが。やっと神無月本家に着いた。時間にして1時間強時刻は10時を回っていた。
「歩夢? 着いたの?」
「うん。」
夜になると閉めている門を今日は開いている。その門をくぐってしばらくするとおじさんが迎えてくれた。
後ろを見るとお坊さんたちが門をしめてくれている。それを見て感謝していると
「それでどういう連中なんだ?」
不意におじさんが聞いてくる。
「傘で襲ってくるんです。うちの祖父は食品メーカーを営んでいて。妬みや嫉みを抱えているライバル企業も山ほど。その中に一つ何かあるたびにケチをつけてくる企業があって。」
それに答えたのは霞だった。
霞は一つ一つ丁寧にわかりやすく叔父に説明する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

処理中です...