傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

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第2章

第3話 向日葵

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「いや、やっぱり考えさせてください。」
僕は今までの話を踏みにじるような曖昧な返事をハッキリと告げた。
「なんでだ。理由を聞かせてもらえるか? 」
「少し怖くなりました。いくら物といっても大切なもの。何を失うかわからない。それに僕も体力は自信ないです。」
そう言って微笑を浮かべる僕を見て叔父も笑い出した。
「そうか。そうか。それならしょうがない。だがまだ諦めたんじゃないからな。」
アニメでたまにいる主人公のライバルキャラのようなセリフを吐いてから、僕の肩をポンと叩き奥の部屋に入って行った。

一方、霞はというと。
「いくら大事な用だからって、追い出さなくても。」
木々が生い茂る長閑な風景を境内から出るようにまっすぐ敷き詰められた石の上を歩く。ただまっすぐ。門の外に出て、歩いていた。見知らぬ土地を。
20分くらい歩いても景色は変わらず田園風景が広がる山奥でしかなかった。
「帰ろうかな。」
そう言いながら霞は来た道を引き返す。何にもない穏やかな道を。
「もう少しあとなら向日葵が一面に咲いてたかもしれなのに… 」
霞は残念そうに独り言を呟いた。
そしてゆっくり歩き始めた。
次はいつ来られるかわからないこの道を深く印象づけるように。穏やかで何もない、美しい自然を。



ーーーーーーーーーーーーーーー
今回も読んでいただきありがとうございます(^^)
今回は少々ノスタルジックな感じにしてみました。向日葵の花言葉は「あなただけを見つめる」という意味があるそうです。この後2人はどうなるのでしょうか?
実は私自身も気になっております( ^ω^ )
これからも傘に魔法が宿ったらをよろしくお願いします。
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