傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

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第2章

第2話 過去

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「それで件の資料とはどういうことですか? 」
「ああ。これなんだが。」
そういってかなりの分厚さの本を3冊程机の上に置いた。
「これはこの寺の日記というか周辺の状況を記録したものだ。そしてこれが問題の… 絵。」
「唐傘… から、火が… 」
「似てるとは思わないか? 」
「うん。今回の事件に。」
「これがちょうど400年前の。この寺が創建して約50年くらいか。」
「さらに進んで今からぴったり200年前。200年起きに全く同じ事件が日本中で起きている。」
「1回目が1615年、2回目は1815年。江戸の初期と末期と言ったところですか。」
「記録が残ってるのがこの400年間だけでもっと昔からあったのかもしれないがな。」
「昔の人はこれをどうやって元どおりにしたんですか? 」
「そこからが本題だ。」
叔父はすごく真剣な顔で僕を見つめる。叔父がこの顔をする時は相手に危険がある時だ。だから僕は自然に顔が引き締まった。そして叔父は話を続ける。
「それを止めて来たのがうちの一族だ。記録にもしっかり書いてある。」
「それに危険がある…と?」
「ああ。古代術式の一つなんだが術者の思いどおりになる代わりに大切な“もの”を失う。」
「ものですか。だったらまあ。」
「俺がやってもいいんだが、50手前のジジイが使える程、簡単な術じゃないんだよ。」
そう言いながら叔父は笑っていた。
この顔を見て少し安心してしまったのだ。過去のデータには“物”しか供物にならなかったのだろう。この時点で僕は大きな勘違いをしていた。そのせいで…あんなことになるなんて。
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