傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

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第1章

第18話 同棲(お泊り)1日目 part2

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20分ほど経っただろうか、霞とその一家は着替えや生活に最低限必要なものを持ちうちに来た。霞の母親は俺と霞が別れた直後に帰ってきたらしく、父親が説得してくれたらしい。
「お邪魔します。お世話になります。」と霞の両親は非常に申し訳なさそうに玄関のドアを開け、霞は僕が誘ったこともあってかいつものお泊まりの時のように自然に。
「お邪魔します。」と入っていった。
しかも経った20分の間に手土産まで用意していた。人の家に上がるのだから当然だと思うかもしれないが、20分で近くで人気の高い店の並んでしか買えないシュークリームを買ってくるとは流石に驚いた。噂によると1時間以上行列に並ぶことざらにあるようだ。
「も、もらって良いんですか? 」
「えぇ。お世話になりますので。」
「それでしたらいただきます。」
母親もかなり恐縮していて、互いに遠慮していた。もっともこれで遠慮しないというのも失礼な話だが。
この後部屋割りを決めることになるのだが…
「歩夢は霞ちゃんと一緒でいいわね? 」
「えっ⁈なんで? 」
「部屋が足りなくてねぇ… 」
「わかりました‼︎ 」
「か、霞? 」
「霞ちゃんがいいなら大丈夫ね。」
いやいやこいつ前科あるから‼︎ との心の中で叫んだが周りにはもちろん届かない。
話し合いの末(僕に意見を述べる権限はなかったが)
僕と霞               僕の部屋(3階手前)
歩夢両親           寝室(2階中央)
霞両親               2階の奥の部屋
という結果になった。
その後のご飯はここ10年家では食べたことのないような量、そしてどれもとても凝った料理でとても母の料理とは思えなかった。
「今日のご飯は女子3人組で作ったのよ。」
「「ねぇー」」
本格的に女子会っぽく(1名ほどそれに該当しない人もいるが)なってきた。
霞の母親はすごく綺麗でとてもうちの母と同い年とは思えない。そして父親もスタイリッシュでカッコいい。皮下脂肪や内臓脂肪が腹に乗っかった父親とは大違いだ。今日のご飯はとても美味しく、本当に“ 生まれてきてよかった。”と思うことになるとは思わなかった。
食事も終わったので
「じゃあ風呂入ってくる。」
「はーい。」
うちの風呂は一階奥の部屋にあり、リビングのドアを出て廊下をまっすぐ行くと風呂場がある。
風呂場のドアを開け、そこに入る…
「あ、歩夢⁈ 」
「な、なんで? 」
そこにはバスタオル一枚で体を隠した霞が立っていた。
それに気づいた瞬間勢いよくドアを閉め、なぜか高鳴る鼓動を抑える。
「み、見た…? 」
「う、うわぁ。」
いきなり声をかけられたので気の抜けた声で驚く。そこにはtシャツに短パンを履いた霞が立っていた。
「ねぇ…見たの…? 」
「見てない。」
「嘘。」
「見てないって。」
「本当? 」
「大丈夫。安心して。」
なんとか宥める。
「僕も風呂入りたいから、通してくれる? 」
「あ、ごめん。」
気まずくなった雰囲気をなんとか戻して、風呂に入る。
「はぁ…今日はなんだか疲れたなぁ。」
と言いながら掛け湯をし湯船に浸かる。さすがにこれ以上は何も起こらないでほしい、などと考えているとドアを開ける音がして僕は自然と身構える。何故か衣服が擦れる(脱げる)音がした。今度はだれかくるのか?と考えていながらも、もう来ないでくれ。という気持ちの両方が自分の頭でグルグル回って余計に疲れそうなので、自分の思考を停止させる。あとは流れに任せることしかできないので、そのまま気づかないのを装い一回湯船を出る。案の定風呂の扉が開き、そこからはtシャツ一枚に身を包んだ霞が立っていた。
「お背中お流ししましょうか? 」
「はぁ… 」
「なんでため息つくの?」
わかりきっていたので、ちゃんと返答することもできずため息しか出てこない。
「あ、歩夢?聞いてるの? 」
「あ、ああ。」
「もう勝手にやるからね。」
と言いながら俺の背中を流し始めた。
僕は霞には最初から背中しか見せていなかったので、おそらくだが見られていない。そんなこんなでやっと風呂にも上がれたが余計に疲れてしまったので、入った意味がないような気がしてならなかった。
「じゃあそろそろ寝るから。おやすみ。」
「あっわたしも。」
と一緒に僕の部屋に向かう。
ここで僕は迂闊にも油断していた。
そして油断している時に限って事故や事件は起こってしまう。
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