傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

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第1章

第12話 記者

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神奈川県立相模第二高等学校。
そこは特に飛び抜けた部活動もない。平均的な知能、平均的な運動能力の生徒が通う普通の学校…だった。ついこの前までは。
理由は先日の一件で、始めて傘で殺人事件が起きた場所となったのだ。

それを爆破未遂犯を止めた僕。

「昨日は大人気だったね~」
「ほんと勘弁して欲しかったよ。」
今日もいつもどうり霞と学校に向かう。だが昨日は傘事件での取材で大変だった。
「今日はふつうに登校できるといいね(笑)」
「そこ笑うところじゃないからね。」
と他愛もない話をしながらいつものように登校する。

はずだった。

校門の前に着いた途端、マイクを数十本向けられ、フラッシュで写真をバシャバシャバシャ。
『どうやって傘の爆発を止めたんですか?』
『傘が爆発するとなぜわかっていたんですか?』
『歩夢さんお願いします。ご回答を』

「わかりました‼︎ だからもうフラッシュ焚かないでください。」
『おぉ!(記者一同)』
「えぇ。まず何から答えれば…?」
「授業がありますので5分くらいでお願いします。」
「霞、ありがとう。」
小声で礼を言うと満面の笑みが返ってきた。これは「いえいえ」と言ったところだろう。
「そう言う事ですので5分くらいでお願いします。」
『それでは、まず“どうやって傘の爆発を止めたんですか?』
「それは…授業で習った背負い投げと袈裟固めで。」
『柔道の経験は?』
「全く。見様見真似でやりました。」
記者たちは凄まじいスピードでメモを取る。
『次の質問です。なぜ“傘が爆発するとわかったのでしょうか?』
「それは僕が警察に通報して情報を伝えたからです。」
『えっ⁉︎ それは本当なんですか?』
「はい。例えばですがビニール傘は問題ないとか。」
『それはもう開示されて時間が経ってますので、証拠には…』
「これでもですか?」
そう言って自分のスマホを取り出す。
この日付はビニール傘の情報が開示される4日前の某SNSアプリの家族グルールのトーク画面である。
※第5幕参照
『こ、これは…(記者一同)』
『でもなんでわかったんですか?』
「事故現場を観察したんです。そしたらブランド物の傘には外傷がなくて、ビニール傘には外傷があったんですよ。」
『例えばどんなところでしょうか?』
「えっと…ビニールが熱で所々溶けてたり、折れてたり。」
「はい。時間です。」
霞の指示により、記者達はすごく残念そうな顔をしながらそそくさと帰っていた。
『ご協力ありがとうございます。』
「いえいえ。」
とだけ返す。
「時間やばいね。」
チャイムがなる時間まであと1分半くらいだが僕たちがいるのは校門付近、どうあがいても間に合うわけがない。
そうして僕ら2人は仲良く遅刻した。
そんな僕ら2人を迎えたのはいつものクラス…と見知らぬ男子生徒。
「転校生の安住 直政と申します。気軽に直政と呼んでください。」
「わかった。直政、僕は神無月 歩夢。僕も歩夢でいいよ。それでこっちが。」
「藤本 霞です。私も霞でいいですよ。」
「わかりました。霞さん。」
「おい!遅刻組。さっさと席に座れ。理由は後で聞くからな。」
「“すみません”」
2人の声が本当に綺麗にハモり、なぜかそれのおかげで
「まぁいい。席につけ。」
と担任の怒りが収まったようだった。
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