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第1楽章 吹奏楽部と入学式と仮入部

第8小節 サックスと入部届けと

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「じゃあこのB♭の音より下の音を吹いてみたい?それとも上の音を吹いてみたい?  」
「ううーん。」
僕は少し考えてから(といっても3秒程度ではあるが)
「上の音を吹いてみたいです。」
と答えた。それについて深い意味はなく、なんとなくというか勘というかである。
「じゃあ今度はさっきのB♭の指から薬指を離して、Cの音。ドレミでいうとラの音。」
先輩は優しげな笑みを浮かべると頑張れ言いたげな表情でこちらを見ている。それに答えるように
「はい。」
とだけ返事をするとB♭の時と同じような感じで息を吹き込んだ。
…………………プーーーー
しばらくの沈黙の後B♭とはまた違う音がなった。B♭=ソ、といっていたのでおそらくはラの音なはずだ。
「うまいうまい。」
先輩はさらに嬉しそうにこちらを見ている。頭の上にカラフルなお花がポワポワと咲き乱れているようだった。
そこからはあっという間に時間が過ぎた。サックスの他にもトランペットや打楽器も挑戦した。トランペットはあんまりしっかりとは吹けなかった。打楽器はふつうに叩けた。しかしサックスのようなインパクトはあまり感じなかった。そんなこんなで今日の仮入部の時間は終わった。
「亮介、どうだった。」
「楽しかったよ。でもやっぱり打楽器だな。そういう真一は?」
「やっぱりサックスが第一希望かな。よくわからないけど一番魅力を感じた。」
「見た目もかっこいいしね~」
などと他愛もない話をしながら家に帰った。

それから数日間仮入部ではサックスパートに入り浸り、すっかり名前も覚えられた。しかしサックスパートだけにはいられなかったので、前日にやってないパートを順番に吹いて回った。


その後
「先生、入部届けです。」
「たしかに。諏訪、お前もか?」
「あっ⁈はい。」
「2人とも吹奏楽部ね。しっかりやれよ。」
「「はい!」」
と2人で入部届けを提出した。
ようやくスタートラインに立ったのだ。3年間どんなことが待ち受けているのか楽しみで仕方ない。
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