いつも伴奏な僕に主旋律を

ゆず太郎

文字の大きさ
上 下
9 / 12
第1楽章 吹奏楽部と入学式と仮入部

第6小節 仮入部マジックその3 アルトサックス編

しおりを挟む
「あっ⁈ ごめん。くわえ方教えてなかったね。」
どうやらどうやって息を吹き込むかを悩んでいた僕に気づいたらしく、先輩は慌ててそう言った。
「えっとね。この黒いのはマッピって言うの。本当はマウスピースって言うんだけど、省略してマッピって呼んでる。それでさっきのリードとマッピを止める役目をしているのがこのリガチャーね。」
「そうなんですか。」
「それでくわえ方はまず下唇を巻くって言ったらわかる?下側に丸め込んで、その上にマウスピースを乗っける感じ?そして思いっきり息を吹き込む!!!」
すごくわかりやすいジェスチャーをしながら教えてくれたので疑問に思うことは何もなかった。
「わかりました。やってみます。」
言われた通りにまず下唇を巻いて、その上にマウスピースを乗っける。
そして思いっきり吹く!!!
 ……………ピーーーーーー
「なった!!!すごいよ。おめでとう!!! 」
「あ、ありがとうございます。」
いきなりすごく高い声をあげたのでびっくりして、素っ気ない返事になってしまった。
「もう一回だけやってみようか。」
「はい。」
ピーーーーーー
今度はなるまでにタイムラグはなくすんなりなってくれた。
「君、本当にうまいね。」
「ありがとうございます。」
自分より喜んでる先輩に少し同様した。しかし今度は素っ気ない返事になら済んだのでよかった。
「次はこれだよ。」
と言って先輩は錆びかかった金色の六角レンチに穴を開けて丸くしたような形のものを僕に見せた。
「これは?」
「ネックって言うの。これを使うと少しサックスっぽい音にはなるけど、さっきみたいに簡単にはならないよ。」
「が、頑張ります。」
「その調子♪その調子♪」
さっきよりるんるんな先輩にマッピとネックをつけてもらい、いざ‼︎
プーーーーーーー
「えっ⁈」
先輩は驚きのあまり言葉を失っているみたいだった。今のは自分でも上手くいったと思ったけどそんなに驚くこと?とも思った。
「君すごいね。この楽器、というかこのネック壊れててならないって部内で有名なんだけど…」
「は、はあ…」
突然そんなことを言われてもなぁと思いながら、何気なくもう一回吹いてみる。
プーーーーーーー
「本当にすごいね。じゃあ最後はこれ。」
そして先輩は貸してと言いながら僕の手から優しくネックを取るとこれまた錆びかかった金色の細々した棒やボタンのようなものがたくさんついたものにネックをつけると、今度は僕にこれ付けてと黒い薄っぺらく硬い布のようなものを僕に渡してきた。
「説明するね。これがサックス本体。まぁ私も持ってたし察してるとは思うけど。それでこれがサックスを支えるためのストラップ。」
「へえ~そうなんですね。」
よくみると先輩も同じものをつけていた。だが1つ違うのは先輩のやつの方がかなり丈夫そうで高そうだった。
「真一くん。じゃあこれ少しかまえてみてくれる?」
「か、かまえる?」
「そう。こうやってストラップとサックス本体にあるリングを繋げて、マッピを咥えて。そのあとは思いっきり息を入れる!!! 」
とりあえず言われた通りにやってみた。この楽器はピアノと違い、かなり体の自由を奪われる。マッピに口が届かなくてあたふたしているとそれに気づいた先輩が笑顔でストラップの長さを調節してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「うん。むしろごめんね。すぐ気づけなかったから。」
「そんなそんな。」
「なら良かったけど。じゃあ気を取り直して吹いてみよっか。」
「はい!」
なんか勢いが大事な気がしたので一際威勢のいい声で返事をしてみた。
そして先輩の手本通りにマウスピースを咥えて、下唇を巻く。そこから思いっきり息を吹き込む!!!!!!!!
ポーーーーーーーーー
「⁈ すごいね!!! 君。このサックス、さっきも言った通りボロくて音が出しにくいって有名だったの。」
「そ、そうなんですか。先輩の言われた通りにやれば普通にできましたよ?
先輩の教え方がいいんでしょうか?」
と満面の笑みで返しておいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...