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実行3
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「そろそろか」
時計を見て時間を確認した宗吾が呟く。
時刻は八時四十分。どこのクラスも朝のSTを始めようとしてる時間帯だ。
今俺たちがいる場所はいつもの教室。
宗吾の声を聞いてか、大毅はガタリと座っていた机から立ち上がった。椅子があるのに何故机に座るのか、意味は不明だが。
その時、ザザザと機械音が教室に鳴り響いた。いや、違う学園中にだ。だって、この機械音は……。
宗吾を見ると、ニッとして笑いかけてきた。ホッと安堵する。よかった、血走ったとかそういう理由じゃなく、これも作戦に組み込まれていたことらしい。―――ホントにいいのか!?
自問自答してるうちに、放送が始まった。
『あー、マイクテストマイクテスト』
やっぱり。
聞いたことある声。圭子の声に、アイツこの前問題になったばかりじゃなかったっけ。何やってるんだ。そんな感情を抱くが、それに気づくわけがなく、圭子の放送は続いていく。
『えー皆の衆。私は彗星圭―――』
『ストップ!名出しはダメですよ姉御!!』
『あー、そうだったな。すまない菫』
『思い出してくれればオーケー……って何サラッと人の名前をバラしてくれてんですか!?あー、えーと皆さん!私は菫じゃないですよ!?えーと、ミス、ヴァイオレッドです!!』
『はっはっは。それ結局英語にしただけでスミレじゃないか』
『えぇ!?圭子の姉御!?ヴァイオレッドってスミレっていう意味があったんですか!?私てっきり紫とかそんな意味かと』
『スミレの色を思い浮かべろ』
『え、ピンクかな』
『それは菫の頭の中の色だろう?』
『ひどっ!?姉御ひどっ!?』
『ごらぁぁぁぁあ!!!彗星!!樹林!!大人しく投降して出てこい!!!』
『えぇっ!?何かバレてるっすよ姉御!?』
『ふむ。向こうは相当な腕前の諜報機関を所有していたようだな。くっ、』
「いや諜報機関なんていねーから。自分達で暴露してただけだからな……」
放送器具から流れる放送に、俺はジトッとした目線を向ける。どうやら考えてることは同じみたいで、宗吾も大毅も同じような目をしていた。
「……ねぇ、宗吾。言っちゃ悪いんだけど俺作戦成功する気がしないんだけど」
「なっ!?」
「悪いがオレもだ」
圭子と菫のポンコツっぶりを体感して、誰が成功すると思えようか。どれだけ優れた作戦でも実行者が無能なら無能な作戦になるのだ。
俺と大毅、二人の視線に宗吾はやけに堂々とした佇まいで答える。
「別にアイツらはあれでいいんだよ」
「でも、宗吾。お前さっき一番重要な任務だから何とかって菫にメール送ってなかったか」
「大毅……人のメールを横から覗くなよ。確かに送ったぞ。まぁ、嘘だけど」
「嘘?」
「あぁ楽斗。考えてみろ。圭子はともかく誰が菫に重要な任務を与えると思ってんだ。絶対失敗するだろアイツ」
辛辣な評価、でも納得せざるを得ない正論だ。
「正直本当の目的はアイツらが馬鹿やることでそれを止めにと教員達を移動させることだ。交渉してる間に横やりが入ったりしたらめんどくさいからな」
「注目、か。ならオレも何かやらかしたほうが良いか?校舎破壊するとか」
「おまえ、それは停学じゃすまないだろ。下手したら退学だ」
「バレなきゃ良いんだろ?」
「はぁ……ったくホントにお前たちは考え方が物騒だな」
……勝手に花火打ち上げたり、鍵クスねたりする奴に言われたくない。
「で、どうするんだ?オレが行くか?」
「いやいい。大毅を動かさない理由は他にあるからな」
「何だそれ?」
「プランA、B、Cを使っても教員を散らせなかった時に殴り込みしてもらう」
「おいおい、それこそ退学ものだぞ?」
「バレなきゃ良いんだろ?」
三人はクックッと笑う。
そんな怪しげな集団の中、一人時計から一切目を反らさなかった宗吾が小声で言った。
「始まるぞ。プランBだ」
時計を見て時間を確認した宗吾が呟く。
時刻は八時四十分。どこのクラスも朝のSTを始めようとしてる時間帯だ。
今俺たちがいる場所はいつもの教室。
宗吾の声を聞いてか、大毅はガタリと座っていた机から立ち上がった。椅子があるのに何故机に座るのか、意味は不明だが。
その時、ザザザと機械音が教室に鳴り響いた。いや、違う学園中にだ。だって、この機械音は……。
宗吾を見ると、ニッとして笑いかけてきた。ホッと安堵する。よかった、血走ったとかそういう理由じゃなく、これも作戦に組み込まれていたことらしい。―――ホントにいいのか!?
自問自答してるうちに、放送が始まった。
『あー、マイクテストマイクテスト』
やっぱり。
聞いたことある声。圭子の声に、アイツこの前問題になったばかりじゃなかったっけ。何やってるんだ。そんな感情を抱くが、それに気づくわけがなく、圭子の放送は続いていく。
『えー皆の衆。私は彗星圭―――』
『ストップ!名出しはダメですよ姉御!!』
『あー、そうだったな。すまない菫』
『思い出してくれればオーケー……って何サラッと人の名前をバラしてくれてんですか!?あー、えーと皆さん!私は菫じゃないですよ!?えーと、ミス、ヴァイオレッドです!!』
『はっはっは。それ結局英語にしただけでスミレじゃないか』
『えぇ!?圭子の姉御!?ヴァイオレッドってスミレっていう意味があったんですか!?私てっきり紫とかそんな意味かと』
『スミレの色を思い浮かべろ』
『え、ピンクかな』
『それは菫の頭の中の色だろう?』
『ひどっ!?姉御ひどっ!?』
『ごらぁぁぁぁあ!!!彗星!!樹林!!大人しく投降して出てこい!!!』
『えぇっ!?何かバレてるっすよ姉御!?』
『ふむ。向こうは相当な腕前の諜報機関を所有していたようだな。くっ、』
「いや諜報機関なんていねーから。自分達で暴露してただけだからな……」
放送器具から流れる放送に、俺はジトッとした目線を向ける。どうやら考えてることは同じみたいで、宗吾も大毅も同じような目をしていた。
「……ねぇ、宗吾。言っちゃ悪いんだけど俺作戦成功する気がしないんだけど」
「なっ!?」
「悪いがオレもだ」
圭子と菫のポンコツっぶりを体感して、誰が成功すると思えようか。どれだけ優れた作戦でも実行者が無能なら無能な作戦になるのだ。
俺と大毅、二人の視線に宗吾はやけに堂々とした佇まいで答える。
「別にアイツらはあれでいいんだよ」
「でも、宗吾。お前さっき一番重要な任務だから何とかって菫にメール送ってなかったか」
「大毅……人のメールを横から覗くなよ。確かに送ったぞ。まぁ、嘘だけど」
「嘘?」
「あぁ楽斗。考えてみろ。圭子はともかく誰が菫に重要な任務を与えると思ってんだ。絶対失敗するだろアイツ」
辛辣な評価、でも納得せざるを得ない正論だ。
「正直本当の目的はアイツらが馬鹿やることでそれを止めにと教員達を移動させることだ。交渉してる間に横やりが入ったりしたらめんどくさいからな」
「注目、か。ならオレも何かやらかしたほうが良いか?校舎破壊するとか」
「おまえ、それは停学じゃすまないだろ。下手したら退学だ」
「バレなきゃ良いんだろ?」
「はぁ……ったくホントにお前たちは考え方が物騒だな」
……勝手に花火打ち上げたり、鍵クスねたりする奴に言われたくない。
「で、どうするんだ?オレが行くか?」
「いやいい。大毅を動かさない理由は他にあるからな」
「何だそれ?」
「プランA、B、Cを使っても教員を散らせなかった時に殴り込みしてもらう」
「おいおい、それこそ退学ものだぞ?」
「バレなきゃ良いんだろ?」
三人はクックッと笑う。
そんな怪しげな集団の中、一人時計から一切目を反らさなかった宗吾が小声で言った。
「始まるぞ。プランBだ」
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