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Ⅱ 侯爵令嬢ミュリエルです
19. そえられた華のほうが豪華な…(以下略)
しおりを挟むベイル様とのダンスが終わるころには、私はへとへとになっていた。
百戦錬磨のセーファス様や、どう見ても女性慣れしているベイル様の相手をして無事な訳がなかった。
密着し、相手の肌の熱を感じ、吐息を受け、さらに耳元で愛を囁かれる。
まるで、自分がどこぞの姫になったかのようだった。
いや、その通りなのかもしれないけれど。
というのも、ここに来る前、馬車の中で衝撃的な事実を聞かされていた。
実は私の社交デビューが急がされた理由が、私がセーファス様の婚約者候補だからだというのだ。
しかもミュリエルは陛下や王妃様のお気に入り。ほとんど決まったも同然だった。
しかも、思い返せば先ほど、王妃様は私のための夜会、とおっしゃられていた。最有力の婚約者だからこその特別扱いだったのだ。
そりゃ、一緒にファーストダンスを踊る子がいないわけだよね……。
本来であれば王族と結婚するのは公爵令嬢が主だ。セーファス様に関しても、ギリギリ縁を結べそうな歳ごろのご令嬢は数人いたんだけど――。
どうやらここ数代、王家は子どもが生まれにくくなっていたらしい。それが王家の血が濃くなりすぎたせいだということが最近になってわかり、そこで私、侯爵家のミュリエルに白羽の矢が立ったのだ。
ベルネーゼ侯爵家も王家の血がまったく入っていないわけではないが、公爵家にくらべれば断然薄い。身分的にも妥当で、何よりセーファス様も陛下も王妃様もミュリエルを気に入っていたため、婚約という流れになっていたのだという。
ちなみに、このお話が出るまでは、私はベイル様の婚約者候補だったらしい。学院に入れば共にする時間も増えるだろうし、その段階で本人たちに決めさせればいいと親同士で話していたという。
婚約者として決めておけば話はまた違ったのだけれど、候補でしかない状態ではどう考えても王家からの話の方が優先される。
このまま何事もなければ、私はセーファス様と婚約することになるようだ。
もしかして、ミュリエルはそれが嫌で家出したのかな?
普通の女の子なら喜びそうだけど、ミュリエルもできるだけいい家に嫁ぐ! っていうのを目標にする感じの女の子じゃなさそうだし。
……あれ? これ、乙女ゲームだったよね?
なんかすでに二人の好感度かなり高そうなんだけど、二人ともイージーキャラなの? 私、攻略しようとすらしてないんだけど……。
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