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番外編

*. 本日の報告 中級編

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*** 剣術訓練 初日 ***
 

  ユリウス兄様へ

 兄様、あ、間違えた。兄上って呼ぶことにしたのでした。
 兄上、今日、私は初めて剣術訓練をさせてもらいました。木剣を借りて剣の振り方を教わったのですが、とても腕が痛……疲れてしまいました。(字間違えただけだよ、見ないでね兄様)
 最初に真剣を持たせてもらっていたので、木剣はとても軽く感じたのですが、振ると違うのですね。近衛たちの腕がとてもがっしりとしている理由がよくわかりました。
 最近はすこし走れるようになったので、体力がついたかなと思っていたけれど、

「ジェス、貴様!」

 剣を振るには全身の筋肉を使うのですね。すぐにバテてしまいました。

「私は見たぞ! エリオが、エリオが腕をプルプルさせて」

 明日はもっと多くできるように頑張ろうと思います。夜に助手さんが解してくれたので、きっと頑張れると思います。

「そこまでしていいと誰が許した! 来いっ!! その身でもって反省しろ!!!」

 なんだか、隣の部屋が騒がしいですが、ジェスは大丈夫でしょうか?
 私は疲れたので、そろそろ休もうと思います。
 おやすみなさい。

  エリオ


 
  エリオ殿下へ

 ご心配をおかけしてしまったようで申し訳ございません。どうぞ私のことはお構いなく。(←字が震えている)
 エリオ殿下が努力家なのはよく存じております。
 助手殿の言葉によく耳を傾け、無理のないようにしてくださいね。(←ちょっと滲んでる)

 ああ、今朝はとても素晴らしい朝日が昇っているようです。
 きっと今日もいい一日となるでしょう。(←最後の線がノートの外にまで伸びてる)


 
*** 剣術訓練 二十日目 ***
 

  おじいちゃんへ

 メルクちゃんはお元気ですか?
 たまにはお休みをとってたくさん遊んであげてくださいね。

 今日はジェスに打ち合いをしてみたいと言ってみたんだ。ダメって言われるかなとは思っていたのだけれど。
 ダメって言う代わりに剣舞を勧められたよ。ダメってはっきり言ってくれてもよかったのに。
 でもね、ジェス、「私の剣舞を見てみたい」って言ったんだ。
 そんなふうに言われるとは思っていなかったから驚いたよ。
 最初はそこまで気乗りしていなかったんだけれど、剣舞が大事な儀式の時に奉納されてるって聞いて、それは王族が舞うんだよって教えてもらって、やらなくてはって思うようになったんだ。
 兄上たちも何度か舞っていたんだってね。ちょうど私が寝込んでいたときだったみたいで、私は一度も見たことがなかったけれど。
 近いうちに一度見せてもらおうと思ってるよ。兄上たち見せてくれるかな? 優しいから大丈夫だよね?


  それから、ジェスへ

 私の剣舞を見たいっていったけれど、私の見た目がまだ中性的だから、とかではないよね? そんな理由だったら怒るよ?

  エリオ


 
  エリオ殿下へ

 もちろんそんな理由ではありませんよ。兄君たちの剣舞をご覧になれば納得なさるでしょう。
 そう、兄君たちにお話したところすぐにでもお見せしたいとおっしゃっていましたよ。もう夜なのに部屋まで押しかけそうでしたので、明日の午後お見せくださるようお願いしておきました。
 ただ……兄君たちだけでなく、お父上もいらっしゃいそうですが、よろしいですか? 陛下には無理をなさらないでいただきたいのですが、どうやら殿下がたと張り合ってしまわれたようで。どうぞお許しください。

  ジェス


 
----------
素晴らしい朝日でよかったですね、ジェス。
ジェスは苦労人です。仕方ありません。

ちなみに剣舞は、陛下は舞われませんでした。
午前中に練習していて腰を痛めたようです。御年ですね。


 
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