紅龍  RED DRAGON

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「謝るのは私の方だ。会話らしい会話をずっとしていないから、戸惑ってしまった」
 相変わらず打切棒な話し方をするティールを見て、ファウンは複雑な顔をする。
 どういう顔をすればいいのか判らないのか、ティールも同じように、複雑な顔をしているのを見て、ファウンは少し笑う。
「何があって、人と話さないようにしてるのか知らねぇけど、もうちょっと笑うぐらいはしたほうが良いと思うぜ」
「笑う?」
 ティールはキョトンとした顔でファウンを見上げる。
「俺、ガキの頃、笑えなかった頃があるんだ。一応青龍の部族なんだけど、半分紅龍の血が 流れてるから、色々とあってさ」
 ファウンが照れ臭そうに笑いながら話すと、ティールは驚いた顔をした。 
「紅龍の血が?」
 今度はファウンがきょとんとした顔をしている。
「あぁ、別に珍しい事じゃ無いぜ。どの部族にも一人や二人は必ず居るしな……」
  一瞬間を開け、ファウンは暗い顔をした。
「俺みたいな奴らは、半分紅龍とは違う部族の血が流れていたから生き残れた。他の奴らは紅龍の血を恨んでる」
 ファウンは大きな伸びをすると、又明るい口調で話し始める。
「俺は恨んでなんかない、ガキの頃はまあそんな時 もあったけど、憎んだってなにも変わらねぇ」
 何かを思い出したように、ファウンは一瞬立ち止まり、そして歩き始めた。
「確か笑うって話してたんだよな?」
 ファウンは顔を真っ赤にさせている。
 「ガキの時笑わない俺を見て、おふくろが笑った 方が楽しいって言ったんだ。おかしな話で、言われて笑ってみたら楽しいんだ」
 ティールの方を見てファウンは笑う。
「仲が良いね。お二人さん」
 レヴィは振り向いて、ファウンを冷やかした。
「そ、そんなんじゃねぇ!」
  ファウンの慌てた様子を見て、レヴィは笑う。
 「ははははは、何向きになってんだよ。おっ! もう着いたみたいだ」
 ファウンが弁解する余地も無く、レヴィは話を逸してしまった。
「なあ、ファウン、又でかくなってるよな?」
  レヴィの見ている先には、森が囲むように広場になっている真ん中に、青々とした一本の大木が立っていた。
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