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青崎真司郎とシステム
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2日目は昨日のようにやばそうな事態に遭遇することなく、ゴミ袋をいっぱいにして奉仕活動は終了した。
てかどんだけゴミ落ちてんのこの街は。
「ねえ、青崎君って能力適正値いくらなの?」
帰り道に星宮が何気なく聞いてきた。
「なんだよ突然?」
「昨日の戦いぶりがすごかったから。それにそもそもこの奉仕活動だって数人のチンピラを1人で圧倒したことから始まったんだし。」
わかってるならチンピラのほうに罰を与えてくださいよ。というのは口には出さずに星宮の問いに答える。
「まー、期待してるとこ悪いんだけどさ、俺の能力適正値はGだよ。」
「……え?」
星宮はキョトンとした顔でこちらを見つめる。あの口ぶりからしてなかなかの高能力者だと思っていたのであろう。
というかそうでなくてわざと低いやつに聞いてきたらデリカシーのかけらどころか粉末すらない。
「ちなみに俺の能力は使うと嗅覚が鋭くなるっていうチートものだぜ?」
星宮は以前固まったまま「あ…え…あ…」などと言葉を詰まらせている。
ちょっとちょっと、笑うかツッコミかしてくれないとダダすべりなんだけど。
「で、でも昨日の動きは明らかにGランクの動きじゃなかったじゃない?」
「んー、それは俺にもわからん。」
「わからないって?」
「俺、転校生+記憶喪失なんだ。だから俺はこの街に来る前の自分のこともこの街のことも知らない。」
記憶喪失であることは今日まで堀川と末高と教師陣にしか話していなかったが、別段隠すつもりもないのでさらりと打ち明ける。
「あー! 青崎君が噂の?」
と思ったら噂になっていた。あいつら結構口軽いみたいっすね。
「だからシステムのことも知らないんだね。」
「そのシステムってのは結局なんなんだ?」
すると星宮は「んー。」と考えこむようにして空を見た。俺は星宮を見つめながら言葉を待つ。
「順を追って説明するね。まず、この街の名前はヘブンイレブン。知っての通り能力者が暮らす街。
じゃあそもそもなぜこの街には能力者が生まれるのかというと、街を管理している科学者たちの実験が行われているから。」
「実験?」
「そう。目的が何かはわからないけどランキング制度を設けることでより強い能力者を生み出そうとしてる。
システムはランキング制度の管理機械を心臓とした自立塔。
わかりやすくいうなら現代最高峰の情報処理能力を誇るスーパーコンピュータを搭載したビルってとこかな。」
星宮はそういうとおもむろにどこか遠くを指差す。
「街のちょうど中心に1番高いビルみたいなのがあるでしょ? あれがシステム。」
「あれが……」
「システムはランキング戦を認証すると即座にプレイヤーを仮想戦闘モードに強制移行することで戦闘を管理、同時に街への被害を防止する。」
「仮想戦闘モードってのは?」
「詳しい仕組みは私もよくわからないんだけど、ランキング戦をお互いに承認した後数秒意識を失って、次の瞬間にはまるで殺し合い系のゲームソフトみたいに誰も人がいないところに2人だけいるの。」
思い出すようにしてそう言葉を継ぐ星宮。
なんというか、聞けば聞くほどわけがわからない。というかどう考えても危ないだろこの街。星宮たちが危機感を覚えていないのはそれが当たり前だと思っているからか?
「そうだ! 青崎君強いんだしさ、ランキング戦どんどんしたら上位も夢じゃないよ!」
「いや。俺はそういうのはいいかな。」
苦笑いを浮かべる俺を星宮のくりっとした瞳が不思議そうに覗き込む。
「えー、どうして?」
「俺は俺のことを知らない。俺の力のことを知らない。だからもし自分の力を制御出来ないような事態に陥ったら……って不安になる。」
俺は確かめるように拳を握りながら、言う。
「そっか。」
申し訳なさそうな顔をする星宮に俺は言葉を続ける。
「それに俺はランキングなんて興味ない。俺の人生の目標は俺の平穏を守ることだから。
のんびりまったりダラダラと生きたい!」
「そ、そっか。」
堂々と大きな声で言う俺を星宮は笑った。
「でももし、俺の平穏が壊されそうなときが来たらその時はくだらない恐怖心なんて軽々超えて見せるさ。」
俺は空に浮かぶ綺麗な星々をみながら誓うようにそう言った。
「やっぱり強いね、青崎君は。戦う勇気も出せない私と違って。」
星宮が何かを言って俯いた。
「ん? 悪い、聞こえなかった。なんて言った?」
俺が聞き返すと星宮は顔を上げる。顔は再び笑顔だった。
「別にー。送ってくれてありがとう。家すぐそこだから今日はここで。明日も生徒会室に4時に集合。時間厳守だからね?」
「はいはい。」
「ノック、忘れないように。」
「はいはい。今日は色々教えてくれてありがとな。また明日。」
「うん、また明日。」
背を向けて手を振る俺に星宮が別れを告げた。
「あーあ。明日で奉仕活動最後……か。」
星宮はさみしそうにつぶやいた。
翌日、星宮は生徒会室に現れなかった。
てかどんだけゴミ落ちてんのこの街は。
「ねえ、青崎君って能力適正値いくらなの?」
帰り道に星宮が何気なく聞いてきた。
「なんだよ突然?」
「昨日の戦いぶりがすごかったから。それにそもそもこの奉仕活動だって数人のチンピラを1人で圧倒したことから始まったんだし。」
わかってるならチンピラのほうに罰を与えてくださいよ。というのは口には出さずに星宮の問いに答える。
「まー、期待してるとこ悪いんだけどさ、俺の能力適正値はGだよ。」
「……え?」
星宮はキョトンとした顔でこちらを見つめる。あの口ぶりからしてなかなかの高能力者だと思っていたのであろう。
というかそうでなくてわざと低いやつに聞いてきたらデリカシーのかけらどころか粉末すらない。
「ちなみに俺の能力は使うと嗅覚が鋭くなるっていうチートものだぜ?」
星宮は以前固まったまま「あ…え…あ…」などと言葉を詰まらせている。
ちょっとちょっと、笑うかツッコミかしてくれないとダダすべりなんだけど。
「で、でも昨日の動きは明らかにGランクの動きじゃなかったじゃない?」
「んー、それは俺にもわからん。」
「わからないって?」
「俺、転校生+記憶喪失なんだ。だから俺はこの街に来る前の自分のこともこの街のことも知らない。」
記憶喪失であることは今日まで堀川と末高と教師陣にしか話していなかったが、別段隠すつもりもないのでさらりと打ち明ける。
「あー! 青崎君が噂の?」
と思ったら噂になっていた。あいつら結構口軽いみたいっすね。
「だからシステムのことも知らないんだね。」
「そのシステムってのは結局なんなんだ?」
すると星宮は「んー。」と考えこむようにして空を見た。俺は星宮を見つめながら言葉を待つ。
「順を追って説明するね。まず、この街の名前はヘブンイレブン。知っての通り能力者が暮らす街。
じゃあそもそもなぜこの街には能力者が生まれるのかというと、街を管理している科学者たちの実験が行われているから。」
「実験?」
「そう。目的が何かはわからないけどランキング制度を設けることでより強い能力者を生み出そうとしてる。
システムはランキング制度の管理機械を心臓とした自立塔。
わかりやすくいうなら現代最高峰の情報処理能力を誇るスーパーコンピュータを搭載したビルってとこかな。」
星宮はそういうとおもむろにどこか遠くを指差す。
「街のちょうど中心に1番高いビルみたいなのがあるでしょ? あれがシステム。」
「あれが……」
「システムはランキング戦を認証すると即座にプレイヤーを仮想戦闘モードに強制移行することで戦闘を管理、同時に街への被害を防止する。」
「仮想戦闘モードってのは?」
「詳しい仕組みは私もよくわからないんだけど、ランキング戦をお互いに承認した後数秒意識を失って、次の瞬間にはまるで殺し合い系のゲームソフトみたいに誰も人がいないところに2人だけいるの。」
思い出すようにしてそう言葉を継ぐ星宮。
なんというか、聞けば聞くほどわけがわからない。というかどう考えても危ないだろこの街。星宮たちが危機感を覚えていないのはそれが当たり前だと思っているからか?
「そうだ! 青崎君強いんだしさ、ランキング戦どんどんしたら上位も夢じゃないよ!」
「いや。俺はそういうのはいいかな。」
苦笑いを浮かべる俺を星宮のくりっとした瞳が不思議そうに覗き込む。
「えー、どうして?」
「俺は俺のことを知らない。俺の力のことを知らない。だからもし自分の力を制御出来ないような事態に陥ったら……って不安になる。」
俺は確かめるように拳を握りながら、言う。
「そっか。」
申し訳なさそうな顔をする星宮に俺は言葉を続ける。
「それに俺はランキングなんて興味ない。俺の人生の目標は俺の平穏を守ることだから。
のんびりまったりダラダラと生きたい!」
「そ、そっか。」
堂々と大きな声で言う俺を星宮は笑った。
「でももし、俺の平穏が壊されそうなときが来たらその時はくだらない恐怖心なんて軽々超えて見せるさ。」
俺は空に浮かぶ綺麗な星々をみながら誓うようにそう言った。
「やっぱり強いね、青崎君は。戦う勇気も出せない私と違って。」
星宮が何かを言って俯いた。
「ん? 悪い、聞こえなかった。なんて言った?」
俺が聞き返すと星宮は顔を上げる。顔は再び笑顔だった。
「別にー。送ってくれてありがとう。家すぐそこだから今日はここで。明日も生徒会室に4時に集合。時間厳守だからね?」
「はいはい。」
「ノック、忘れないように。」
「はいはい。今日は色々教えてくれてありがとな。また明日。」
「うん、また明日。」
背を向けて手を振る俺に星宮が別れを告げた。
「あーあ。明日で奉仕活動最後……か。」
星宮はさみしそうにつぶやいた。
翌日、星宮は生徒会室に現れなかった。
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