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【第100話】光の精霊の力

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トルゴラムのニルスは突如表れたクルミに驚いた。

「アリス待たせたね。」
余裕なふりをしていたがクルミは焦っていた。

それは、少し遡るとジークと合流したクルミは急いでトルゴラム兵達の後を追っていた。

光の精霊のフランが声をかけてきた。
「アリス様が予想以上に厳しい状況のようですね。ルティが焦っております。」
まだアリスと変わらないくらいの少女のフラン。それでも光の上位精霊。
そのフランも焦りの表情だった。

「まずいですね。あれを使いますか?」

「あれって何?」

ジークがフランに訪ねているのを遮ってクルミが話しかけた。

「光の精霊に力を借りて高速での移動が可能なのです。それこそ光の速さのように。」

「そんな力があったんだ・・・」

私も光の精霊を呼ぶことができるが、そのことは知らなかった。でも身体に負担が掛かりそうな。

「ただリスクもありまして・・・・」

やっぱりそうだよね。

「どんな?。」

「身体への負担が大きく、魔力で保護しないとボロボロになります。私も試したのですが、魔力切れで移動距離も数キロが限度でした。その後は動くのもやっとの状況でした。」

考え込む。身体の保護をかけて移動すれば距離も伸びて、風の精霊ルードの力を借りれば保護は可能だ。

これなら久遠と陽向を連れてきたほうがよかったかと一瞬迷った。カリディアに移動したのは陽向に憑依した悪魔の力はだった。闇の力の移動能力だった。あの時も陽向が急に様子が変わってクルミと久遠を無理やり闇に引き込んで移動したのだった。

陽向に憑依した悪魔について心当たりがあるけど今はアリスの問題を片付けてからと後回しにすることにした。

「ジーク、ルードに頼んで風の保護をかけてもらうから私を飛ばして!」

「クルミさん・・・・。私ではアリスまでの距離を移動することはできません。悔しいですが・・・・お気をつけて。」

「貴方でしたら大丈夫だと思いますが、私も人間に行うのは初めてです。向こうに行ってどのような状態になるかわかりませんよ。」

光の精霊のフランが、声をかけてきた。

「大丈夫!大丈夫!」

向こうに行けさえすけば、ルティもいるし何とかなると考えていた。このような捕虜の場合は、命は無事だが身体は無事の保証がないことを前世の経験でよく知っていた。

もっともクルミは、強さ、たくましさの点でそのような経験はないのだけれど。

「わかりました。行きます。」

フランから光がほとばしる。その光がクルミを包みこんだと思ったら、強引に飛ばされた。ルードの風の護りがあっても身体が締め付けられるような圧力があった。

そしてクルミはアリスのもとに飛んだのだった。

「後は頼みます。クルミさん。」

ジークは一筋の光を眺めてつぶやいた。


そうしてアリスのもとに来れたのはよかったが、身体の倦怠感、魔力の消費が激しかった。ルードも消えそうになっていた。

「失礼ですがどなたですかね?」
ニルスが楽しみを邪魔されてイライラと問いかけてきた。

アリスの姿に傷は追っているが最悪ではないことにちょっと安心してしまった。しかし、草薙が守っているようだった。おかしな剣だよね。

「失礼、イサカリ クルミといいます。」

「これはこれは聖女様が釣れましたか。運が良いですね。」
ニルスの顔がニヤける。

「すんなり返してくれたら、生かして返すけどどうする?」

最悪ではないがクルミは怒りと殺気を兵士たちに浴びせた。兵士たちも強さを感じ取ったみたいで、動きが止まった。

そんな中、兵士たちの相手をしていたルティが近づいてきた。

「クルミ、こっちはまかせるにゃ~。」

ルティも契約者のクルミがきたことによって本来の力を使うつもりだ。

ルティが青くひかり始めた。そして、少女へと変身したのだった。黒いねこ耳と尻尾が無ければ人間の子供と言ってもいいくらい、年齢はアリスと変わらないくらいに変身した。

「ほっ、また楽しみが増えましたね。」

ニルスはルティを舐めるように見た。
ルティはブルッと震えた。

「まずは貴方からですかね、聖女様。どうやら大分お疲れのようですけどね。」

「あら、わかる?。でもこれでも余裕なんだけどね。」

クルミはニルスの力量はそこそこあることに気づいた。でもそこそこレベルでどうにかなると思っていた。

「さぁ始めましょうか!!。」

ニルスがアリスにもう一撃入れてクルミを挑発してきた。

グッ。アリスが血を吐いた。薄い水の膜は赤く染まっていた。

「この感触いいですね。」

声を出すニルス、その隙にクルミは距離を詰めていた。

そして横薙ぎの一閃。

鈍い音がしてその一閃を受け止められた。

「硬いわね。」
クルミはニルスの鎧の異常さに気づいた。通常の鎧であれば神剣である草薙の一撃に耐えられるわけもなく両断される。

それを耐えたのであれば鎧も特殊な物かグレードの良いものだと推測される。

「速いですね。しかしトルゴラムの最新装備は簡単には切れませんよ。」

ニルスは余裕な表情を崩さなかったが内心では焦っていた。クルミの速さに追いつけなかったからだ。

なんて速さだ、このままでは厳しいか。

兵士たちを見ると猫娘におされている。壊滅するのも時間の問題だった。爪を合せて小太刀して両手にもち振る。こちらの速さもまさに獣を相手しているかのようで対応できていなかった。

「仕方ない、ここは撤退しますか。」

「逃がすと思うの?」

クルミはアリスを背に油断なく構える。

「もう少し遊んでからですがね。これを使いたくはなかったのですが、仕方ありません。」

ニルスは、呪文を唱えた。

すると兵士たちに怯えの表情が、出始めた。そして兵士たちが光りだしたのだった。

「人間爆弾です。どうですか面白いでしょ?生きてたらまた会いましょう。お互いね!!」

辺りは光に包まれた。

    
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