上 下
88 / 106

【第89話】人さらい

しおりを挟む
魔物討伐の依頼を受けて、依頼者の村へと向かった。

その間、陽向と赤ちゃんが仲良くなって2人で久遠の背中て寝ていた。

母親は、久遠に謝罪しまくりだった。

母親の名前は、ハール。子供は女の子でレネット。村の村長婦人とのことだけれど、村長は戦いで亡くなったとのことだった。

村は老人や女性、子供がほとんどだった。カリディアもそうだけれど国同士の争いが多いと男たちが少なくなる。
戦いで減るからだ。

この魔物の国ナオルグは、クルミの前世にもあった。クルミも建国を助けて作りあげた国だった。しかも当時は、強い亜人、魔物を多く竜神王国よりも強国だった。
しかし、時代も代わりその当時の強者も引退。子孫は魔物の血も薄まり外見におもかげがあるだけで強さは低下していった。

その代わりに子孫を増やすようになっていったのだった。子だくさんの家が多かった。周りの国から侵略を受けて人口が減っても子供をたくさん作り対抗しているという国になってしまったのだった。

そして知性のない魔物も増えてしまい手に負えなくなった村もありそれがこの村だった。

「それでは、3方向に分かれて魔物を討伐していきましょう!」

久遠、メリット、フリードの3人で向かうようだ。クルミは村に残り留守番することになった。

クルミは、青い髪の猫の亜人に変化している。

「いってら!」
陽向が久遠を見送る。珍しくついていかないようだったがレネットを抱っこして遊びに夢中だった。

「何がありましたら、連絡はフィに。」
火の妖精でフリードと契約しているふフィが手を上げて、クルミの水の精霊ルティーに向けてだ。

「にゃ~」
めんどくさそうに返事をした。
誰に似たのかな?わたしかな?とクルミは思ってしまった。

そして出発した3人を見てレネットの母親ハールは不安そうだった。

「あの~ 護衛の方がいなくても大丈夫なのでしょうか?」

やっぱりクルミを貴族の令嬢だとでも思っているようだった。

「大丈夫ですよ。一番強い私が留守を守りますから!」

そう言っても信じてもらえてない様子だった。

こういう時は何か起こることはよくあることだからね。クルミは、陽向とレネットと遊びながら警戒は怠っていなかった。

風の精霊ルードも呼び出して、わからないように警戒をしてもらっていた。

そして考えていた。

精霊2体までは同時に召喚できるけど複合精霊魔法は、まだ使えないようなので、まずは2体召喚に慣れておこう。この世界では精霊召喚もできる人が、いるのかわからない状況だけど悪魔もいるから練習しとかないとね。


村の中から叫び声が聞こえた。

「やっぱり、こういう時に何か起こるのは相場だよね。」

「人さらいが現れたようです。直に全員を集められるでしょう。」

ハールは、暗い顔をしてレネットを見た。そして決意した。

「クルミ様は、こちらに!!」
暖炉に見せかけた物置に誘導した。

レネット、陽向を預けた。

「しばらくして戻らない場合は、レネットを奴隷として育ててもらえないでしょうか?」

「えっ!大丈夫だから落ち着いて!」
クルミが話しかける前にハールは、飛び出していった。

「まったく。はぁ~。」

このナオルグの田舎の村ではよくある、人さらいの襲撃だった。人口だけは他国よりも多いナオルグ。王国の中心部には強い兵も多いが周辺の村まで警備できておらず村の人々はある意味諦めていた。

数人の犠牲で終わらせることを選択していたのだった。


村の中心に集められた村人達。

「今日は、30人ほど連れて行くからな、また増やしとけよ! ヒャハハ。」

人間の兵士崩れのリーダーの1人が宣言した。

諦める村人達。200人ほどの村。対する人さらい達は、50人ほどだった。
ただし、戦力的には負けていた。あちらは完全武装。こちらは武装などもしておらず無抵抗だった。

クルミは水の精霊ルティーに子供2人は任せてきた。ルティーはめんどくさそうだったので多分魔法で眠らせているだろうと思う。

ここで追い払うのは簡単だけどその後が大変よね。ずっとこの村で過ごすわけでもないしね。

そして選別が終わった。1人の男の子が選ばれた。男の子は働き手、兵士としても需要が高く選ばれやすい。

「ママ! 助けて!」
その子の母親は、周りの村人に抑えられていた。ハハオヤモ抑える村人も泣きながらこらえていた。

その姿を見て、クルミは覚悟を決めた。

「よし今日はこれくらいだ。次の村にいくぞ!」

人さらいが地獄を観ることになるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!

奏音 美都
恋愛
 ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。  そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。  あぁ、なんてことでしょう……  こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

公爵に媚薬をもられた執事な私

天災
恋愛
 公爵様に媚薬をもられてしまった私。

処理中です...