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せ~ぶで~た06:魔法使いの女の子がタコの魔物に襲われ魔力を吸い取られ続け助からない話
01.雑魚はさっさと処理!
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冒険者ギルドが提示するお仕事には、時に遠方でのものがあります。
遠方でのお仕事だからといって、決して報酬がよいわけではありません。よくてもほんの少しですし、日数もかかるため、あまり人気のお仕事ではありません。
けれども、このお仕事を請けた場合、どんなに旅費がかかろうが、ギルドが負担してくれるのです! 冒険者によっては、旅行気分でお仕事を請ける人もいます……。
「南の島でのお仕事……青い空、青い海……そして……南の島のフルーツ!」
そのお仕事を見つけた瞬間、中級冒険者である魔法使いフィオは目を輝かせました。
遠い南の島までタダで行ける! 南の島のフルーツやスイーツを堪能できてしまいます!
二秒後には、お仕事契約のはんこを押してもらっていました。
なんて良いお仕事なんでしょう! お紅茶とお菓子のために稼いでいるフィオにとって、南の島にタダで行ける機会は見逃せません!
……スイーツやアイスティーを堪能する前に、請けたお仕事を済ませなくてはいけませんが。
というわけで――中級冒険者の魔法使いの少女フィオは、お気に入りの深紅の魔女帽子を被って、海辺の洞窟へ来ていました。
ここでのモンスター退治のお仕事をさっさと終わらせ、カフェやスイーツショップに行かなくては! なのですが……。
「暗いしむわっとしてるし……だからみんなこのお仕事請けなかったのね……髪の毛、嫌な感じ……」
海辺の洞窟は薄暗く、湿度も高くて、非常に不快です……湿気のために、フィオの銀色のセミロングもちょっとぼさぼさです。指でくるくると髪をいじりながら、フィオはピンク色の丸い瞳を据わらせます。
暑さもあって、服が肌に張り付いているような感じがします。汗で匂わないか、年頃の女の子にとっては気になってたまりません。
「……水着で来た方がよかったかなぁ」
満潮時に海水が流れ込む洞窟には、海水の水溜りもいくつもあります。水溜りを避けられない場所もあって、進んでしまえば靴はもちろん服も水を吸ってしまいました。もはや濡れるための格好で来た方がよかったほどですが、冒険者の服は鎧にもなるために、フィオはいつもの姿で渋々先へ進みます。
不快な事ばかりですが、モンスター退治のお仕事自体はとても楽です。
「そーれ、びりびり~、はい、ぼ~ん!」
気だるげな声を漏らしながら杖を掲げれば、そこから電撃の魔法が放たれます。標的は壁に這う巨大なヒトデ。電撃を受けたヒトデは全身を強ばらせて剥がれ落ちます。他にも水溜りに潜む凶暴な魚や、毒貝、クラゲ、エイなど、電撃一撃で仕留めていきます……。
人の住む場所の近くにあるこの洞窟。どうやら、人に害を為す魔物が潜むのに適しているらしいのです。満潮時にここから出て人々を襲い、干潮が来る前にここに帰って次の機会を待つ……そのため、南の島の人々は、干潮時にモンスターの一斉討伐を願い出ました。
どのモンスターも、フィオの電撃魔法を前にしては雑魚なのですが。
「……ま、スイーツが私を待ってるんだから、頑張ってさっさと終わらせないとね!」
フィオは再び電撃魔法を放ちます。薄暗い洞窟に、光が満ちました。敵わないと判断して逃げようとしていた小型のサメが、何が起きているのかわからないような顔をした猛毒フグが、うっかり水面から顔を出した麻痺アメフラシが、瞬殺されていきます。
せめてこれくらいの数は討伐してほしい――そう言われた数まであと少し。薄暗く湿っぽい洞窟を、溜息吐きつつフィオは進んでいきます。
……そんな彼女の背を見つめる、怪しい双眸がありました。
海水の水溜りに沈んでいたその瞳は、フィオの行く先を確認すれば、音もなく底へと沈んでいきました。
八本の触手をうねらせながら。
遠方でのお仕事だからといって、決して報酬がよいわけではありません。よくてもほんの少しですし、日数もかかるため、あまり人気のお仕事ではありません。
けれども、このお仕事を請けた場合、どんなに旅費がかかろうが、ギルドが負担してくれるのです! 冒険者によっては、旅行気分でお仕事を請ける人もいます……。
「南の島でのお仕事……青い空、青い海……そして……南の島のフルーツ!」
そのお仕事を見つけた瞬間、中級冒険者である魔法使いフィオは目を輝かせました。
遠い南の島までタダで行ける! 南の島のフルーツやスイーツを堪能できてしまいます!
二秒後には、お仕事契約のはんこを押してもらっていました。
なんて良いお仕事なんでしょう! お紅茶とお菓子のために稼いでいるフィオにとって、南の島にタダで行ける機会は見逃せません!
……スイーツやアイスティーを堪能する前に、請けたお仕事を済ませなくてはいけませんが。
というわけで――中級冒険者の魔法使いの少女フィオは、お気に入りの深紅の魔女帽子を被って、海辺の洞窟へ来ていました。
ここでのモンスター退治のお仕事をさっさと終わらせ、カフェやスイーツショップに行かなくては! なのですが……。
「暗いしむわっとしてるし……だからみんなこのお仕事請けなかったのね……髪の毛、嫌な感じ……」
海辺の洞窟は薄暗く、湿度も高くて、非常に不快です……湿気のために、フィオの銀色のセミロングもちょっとぼさぼさです。指でくるくると髪をいじりながら、フィオはピンク色の丸い瞳を据わらせます。
暑さもあって、服が肌に張り付いているような感じがします。汗で匂わないか、年頃の女の子にとっては気になってたまりません。
「……水着で来た方がよかったかなぁ」
満潮時に海水が流れ込む洞窟には、海水の水溜りもいくつもあります。水溜りを避けられない場所もあって、進んでしまえば靴はもちろん服も水を吸ってしまいました。もはや濡れるための格好で来た方がよかったほどですが、冒険者の服は鎧にもなるために、フィオはいつもの姿で渋々先へ進みます。
不快な事ばかりですが、モンスター退治のお仕事自体はとても楽です。
「そーれ、びりびり~、はい、ぼ~ん!」
気だるげな声を漏らしながら杖を掲げれば、そこから電撃の魔法が放たれます。標的は壁に這う巨大なヒトデ。電撃を受けたヒトデは全身を強ばらせて剥がれ落ちます。他にも水溜りに潜む凶暴な魚や、毒貝、クラゲ、エイなど、電撃一撃で仕留めていきます……。
人の住む場所の近くにあるこの洞窟。どうやら、人に害を為す魔物が潜むのに適しているらしいのです。満潮時にここから出て人々を襲い、干潮が来る前にここに帰って次の機会を待つ……そのため、南の島の人々は、干潮時にモンスターの一斉討伐を願い出ました。
どのモンスターも、フィオの電撃魔法を前にしては雑魚なのですが。
「……ま、スイーツが私を待ってるんだから、頑張ってさっさと終わらせないとね!」
フィオは再び電撃魔法を放ちます。薄暗い洞窟に、光が満ちました。敵わないと判断して逃げようとしていた小型のサメが、何が起きているのかわからないような顔をした猛毒フグが、うっかり水面から顔を出した麻痺アメフラシが、瞬殺されていきます。
せめてこれくらいの数は討伐してほしい――そう言われた数まであと少し。薄暗く湿っぽい洞窟を、溜息吐きつつフィオは進んでいきます。
……そんな彼女の背を見つめる、怪しい双眸がありました。
海水の水溜りに沈んでいたその瞳は、フィオの行く先を確認すれば、音もなく底へと沈んでいきました。
八本の触手をうねらせながら。
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