演劇部活動記録・白雪姫が狙われた

sakaki

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演劇部活動記録・白雪姫が狙われた1

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帝城高校の文化祭は、6年に一度だけ『白雪祭』と名を変えて、その内容も大きく変わる。
毎年恒例の名物行事であるミスコン(ミスター女装コンテスト)もなくなり、その代りの大きな目玉として『白雪姫』の演劇を初めとする、白雪姫にまつわる催し物が全校上げて行われる。
なぜ白雪姫なのかと言えば、理事長先生の趣味なんだそうだ。

・・・なんて話を、俺:三島海斗(みしま かいと)は友人から聞かされるまで知るよしもなかった。
「ふーん、白雪祭ねぇ・・・」
一通りの話を聞き終え、自販機で買ったパック牛乳をベコベコと鳴らす。
正直なところ、普段通りの文化祭だろうが白雪祭だろうが俺にとっては変わりはないし、なんでわざわざコイツがこんなに熱弁を奮ってくれるのかが分からなかった。
“コイツ”というのは友人の陣野弘大(じんの こうだい)。友人というより悪友かな。
進学科のコイツが遠路遥々校舎の違う普通科にまでやって来るなんておかしい。
まかり間違っても一緒に飯を食うような仲良しこよしではないし、何よりも弘大がこういう時は絶対何か企んでるに決まってる・・・。

「で、ここからが本題なんだけどさ」
弘大が指先で眼鏡をくいっと上げて目を光らせる。
俺は“やっぱり来たか”と身構えた。
「お願いがあるんだよね~、軽音楽部のお二人に」
「ぶっ!?」
俺だけでなく軽音楽部の二人のご指名に、今まで我関せずを決め込んでいた隣の席のバカ面もカツサンドを吹き出した。
コイツの名は菅野淳也(かんの じゅんや)。軽音楽部の部長だ。ちなみに俺は副部長。
「な、なんだよ? お願いって・・・」
恐る恐ると言う風に淳也が問う。
俺同様、弘大にひどい目にあわされたのは一度や二度じゃないんだよな。
「二人にボディーガードをやってほしいんだ」
嘘くさい満面の笑みで弘大が言い放つ。
「「ボディガード!?」」
俺と淳也は声を合わせて叫んだ。
「バカ、大声出さないでよ」
弘大は眉を顰め、おまけに声も潜めて俺たちの耳を引っ張った。

「実は今帝城高校では事件が起きてるんだ」
妙に真剣な口調で言う。“どうせ二人は知らないだろうけど”と前置きついでに俺らを小馬鹿にするのも忘れていない。流石弘大だ。
「被害者は今の所3人。共通点は文化祭の演劇で白雪姫を演じる予定だったってこと。」
被害者だなんて随分と大袈裟な言い回しだ。
けど、思いがけないことに淳也が大きく反応した。
「あ、それ俺知ってる。アリスが階段から突き落とされたってヤツだろ?」
アリスってのは確か去年か一昨年のミスコンでグランプリ取った奴のことだ。
ファンクラブとかもあって、そういや淳也もその一人だっけ・・・。俺は全然興味ないけど。
弘大は淳也に頷きながらさらに続けた。
「そう、そのせいで白雪姫の第一候補だった有栖川クンは骨折。その後も白雪姫に選ばれた演劇部員が続けて同じような目にあってる。犯人は未だ見つかってない」
「マジで?」
俺は思わず咥えていたパック牛乳を落とした。
結構なおおごとなんじゃねーか、もしかして。
「しかも、白雪姫が襲われるのは何も今年が初めてじゃないんだ。白雪祭じゃなくても、例えばミスコンで白雪姫のコスプレを準備してたヤツが怪我させられたり、衣装を切り刻まれたり、脅迫状送られたり・・・とにかく文化祭に出れなくなるように仕向けられるってわけ」
「さしずめ“文化祭の怪人”だな」
弘大の話に淳也がしょうもない通り名を付ける。
弘大も俺も怪訝な顔で淳也を見つめた。
「んで、白雪姫の演劇をやらない訳にはいかないし、これ以上被害者を増やすわけにもいかないから二人にボディガードをお願いしたいってわけ」
俺たちの冷たい視線に落ち込む淳也を後目に、弘大は気を取り直したように締めくくった。
締めくくった端から、俺らの反論を防ぐようにまくしたてる様に言葉を続ける。
「勿論タダで働かせようなんて思ってないよ。交換条件として、うちの部員を軽音楽部に貸してあげる。俺も含めてね」
眼鏡を中指でくいっと押し上げ、ニヤリと笑った。
それを聞いた部長の淳也は身を乗り出して“マジで!?”と食いついている。
・・・それもそのはず、俺たち軽音楽部は現在部員2名。とてもじゃないが、文化祭で満足のいくライブができるような状態じゃないんだ。

前は新入生一番人気の部で、毎年入部希望者で湧き返るほどだった。部内でいくつもバンドが組めるほど。
なのになんでこんな状況になっているかと言えば、今年の春・・・当時3年だった大馬鹿野郎共がお隣の秋野瀬高校の不良グループと時代遅れの大抗争を繰り広げ、双方大打撃の末全員退学処分。
おかげさまで軽音楽部は“相当ヤバい不良のたまり場だ”なんてイメージが付いて退部希望が後を絶たず、入部希望者なんているはずもなく、気付けば俺と淳也しか残ってなかったってわけだ。

「ドラムとギターだけじゃライブするにも物足りないんじゃない?」
確信的に瞳を光らせる弘大。
確かにおっしゃる通り。しかもコイツ、ピアノでなんか有名なコンクールで優勝したとかなんとか・・・。
その弘大がキーボードやってくれるなんてことになれば、確かに相当ありがたい。
「今のままだとボーカルも海斗がやるんでしょ? 大丈夫かなぁ・・・ホントはギターだけに集中したいんじゃないの?」
俺の心を見透かすように弘大がチクチクと言う。
これまたその通りだ。
俺はギターを弾くのは心から好きだけど、歌うのは別に好きじゃない。
ど音痴の淳也には歌わせられないから、俺がやるしかないと思ってたけど・・・確かに他に良いボーカルがいるなら是非とも頼みたいところだ。

「かーいちゃぁーーーーーんっ!!」
「うわっ!?」
大分俺の気持ちが掴まれかけていたところで、突如背後からヘッドロックを掛けられた。
本人的には多分抱きついてきたつもりなんだろうけど、完全に首絞められてるし。
「ゲホゲホッ、殺す気かよ」
「挨拶だよぉー」
咳き込みながら恨みがましく振り返ると、当の本人はあっけらかんとして満面の笑みを浮かべた。
この狂暴な女は西園寺鈴花(さいおんじ りんか)。俺の困った幼馴染だ。
どういうところが“困った”かと言うと・・・
「リンリンねぇ~、海ちゃんにぃ~、お弁当作って来たんだよぉー。愛妻べんとー」
全身からハートが溢れ出るかのような物言い。
可愛らしいハート型の弁当箱に入っているのは、とても人間の食い物だとは思えないどす黒い物体だ。
昔からこれでもかってくらい俺を好きだ好きだと言い寄って来ては得体のしれない物体を食べさせられる。
ガキの頃からずーっとだから、流石にもううんざりしてるんだよな。
繁々と鈴花の創作物を眺めながら、俺はハッとした。
そうだよ、演劇部員なんか貸し出さなくてもコイツがいるじゃん。
「ボーカルなら鈴花に頼むから心配はいらねぇよ」
胸を張って弘大を見返す。
この間延びした喋り方からは想像もできねぇだろうが、鈴花はガキの頃から近所のカラオケ大会で何回も優勝するくらい歌がうまいんだ。
俺の頼みなら聞いてくれるだろうし。
「え~? リンリンできないよぉ~~」
「へ? なんで!?」
思いがけずの断りに愕然とする。
鈴花はさらに驚きの言葉を口にした。
「だってリンリン演劇部だもん」
「はぁっ!?」
一体いつの間に? だってついこないだまで帰宅部だったじゃねーか!!
どうにも信じられないでいる俺に、事情を説明してくれたのは弘大だった。
「服飾科で帰宅部の人には率先して演劇部に入部してもらってるんだ。ひとまずは文化祭の間だけのヘルプってとこかな」
なるほどな・・・。
服飾科は毎年ミスコンのコスプレ衣装の準備に精を出してるから、それがない今年は手が空いてるってわけか。
演劇部の衣装作りには持って来いだもんな。
「鈴花にヴォーカルやってもらうためにも、俺の頼みを聞いてくれるしかないってことだね」
弘大がこれまた嘘くさい笑みを浮かべて言い放つ。
何が“頼み”だよ・・・拒否権のない命令じゃねーか。
「まぁまぁ、いいじゃねーか。俺らも助かるし、やってやろうぜボディーガードくらい」
げんなりしてる俺を後目に淳也が意気込んで拳を鳴らす。
俺と違って淳也は結構やる気みたいだ。・・・というのも、
「俺たちのアリスに怪我させやがった大馬鹿野郎を絶対とっ捕まえてやる」
なるほど・・・愛しのアリスの敵討ちがしたいんだな・・。
俺はますますげんなりした。
「ま、そんなわけだから今日から早速よろしくね。放課後は演劇部室に集合」
「リンリンも待ってるね~」
弘大と鈴花はそれぞれに手を振って教室を出ていく。

こうして、俺たち軽音楽部は演劇部のボディガードをすることになった。
これからどんな厄介なことが起きるかなんて、この時は全く想像すらしていなかったのだ。



***

放課後になって俺と淳也は雁首揃えて演劇部室へやってきた。
我ながら素直だ・・・。ま、弘大に逆らうと怖いしな。

「うわ。ひでぇな、これ」
禁煙パイポを咥えたままで淳也がつぶやく。
見れば、演劇部の部室の窓ガラスがすべて割られていた。
これも例の“文化祭の怪人”の仕業なんだろうか・・・。
「お、ちゃんと来たね。二人とも」
「「うわっ!!」」
背後から声をかけられて俺たちは間抜けな声を上げた。
後ろにいたのは弘大だ。
手には大量のノートみたいなものが持たれている。
「もうみんな集まってるだろうから、さっさと顔合わせするよ」
「あ、あぁ・・」
当然のように荷物を俺に持たせ、弘大はすたすたと部室内に向かった。
ノートだと思ったものは表紙に『白雪姫』と書かれた冊子だった。きっと劇の台本なんだろう。
素直に後ろについていくと、弘大の言う通り部員達が勢ぞろいしている。
同じく付いてきていた淳也は物珍しそうにキョロキョロとあたりを見回している。
・・・ってか、ここにいる奴らほとんど鈴花と同じ服飾科の生徒たちじゃねーか?
演劇部員ってもっと他にいなかったっけ?
「白雪姫が立て続けに襲われた所為で部員もほとんど辞めちゃってさ・・・ここにいるのは数少ない残り部員と、俺が頼み込んで助っ人に来てくれてる仮部員たちなんだ」
俺の疑問を読み取ったらしい弘大が首尾よく説明をしてくれた。
弘大は俺に持たせていた台本を1冊だけとって部員たちを集めた。
「皆聞いて。新しい台本がようやく書きあがった。これから皆に順番に渡していくから集まって」
言うが早いか、ずらずらと一列に並んだ部員たちに手際よく台本を手渡していく。
よく見ると台本にはすでに部員の名前が書かれていて、本人専用のものになっているらしかった。
すっかり台本置場みたいになってる俺は棒立ちのまま部員たちの様子を見ていた。
まだ紹介されてないこともあって、かなりの部外者感。
部員たちが誰も気にしてないみたいなのが幸いだけど、淳也は今度は部屋の隅にあった衣装や小道具なんかをいじり始めてる。やめろ、頼むから。お前絶対壊すから・・・。
俺の心配通り、照明器具か何かがガシャンと派手な音を立てて倒れた。
「ったく、何やって・・・」
呆れながら視線を戻し、俺は言葉を失った。
他の奴らと同じく台本を取りに来た小柄な人影に目を奪われたからだ。
台本を大事そうに両手で抱えるようにして受け取ったそいつは、ちまっとしてて、目がくりっとしてて・・・・
なんて可愛い生き物なんだ・・・。
「何ボーっとしてんの?」
「へ?」
弘大にニヤニヤしながら見つめられ、俺はハッとした。
さっきの奴に見とれてる間にすっかり台本は配り終えてたみたいだ。
「ふ~ん、なるほどね~」
「な、なんだよ・・・」
物言いたげな弘大に、俺は慌てる。
だが弘大はそれ以上突っ込んでくることはせず、気を取り直したように部員たちに向き直った。
「これから大事なことをいうから、台本に目を通す前にちゃんと聞いておいて」
パンっと手をたたいて真剣な面持ちに変わる。
そして“大事なこと”を話し始めた。それは弘大の“文化祭の怪人対策”ともいえることだった。
「今渡した台本にはそれぞれ自分の役にだけ印がつけてある。台詞や動きは徹底的に頭に叩き込んでほしい」
ここまでは普通だ。
文化祭までそんなに日もないことだし、必死に台本の中身を頭に叩き込むしかないだろう。
だが、弘大は続いて驚くべきことを口にした。
「文化祭本番まで、稽古もセリフ合わせも一切しないから自己練習のみ。つまりはぶっつけ本番で臨むことになる」
当然ながら部員達からもどよめきが起こる。
そりゃそうだろ。台本の読み合せやたち稽古、リハーサルなんかがどれだけ大事かってことくらい俺にだってわかるくらいだ。
なのに弘大は部活動の時間は大道具や小道具、衣装づくりだけをするという。
その代わりに遅くまで学校には残らないようにして、あとは自宅で一人で練習・・・大丈夫なのかよ? そんなんで。
「自分が何の役なのかも本番までは誰にも言わないこと。そうすれば、白雪姫がピンポイントで狙われる可能性はなくなるはずだ」
すべてはこれ以上の被害者を出さないため・・・弘大は一際力強く言った。
それまで唖然としていた部員たち(それと俺)は思わず“確かに”“なるほど”と口々につぶやいていた。
「そしてさらに」
弘大が突如振り返る。
俺の腕と淳也の首根っこを掴み、部員たちに満面の笑みを向けた。
「この腕っぷしには自信ありの軽音楽部の二人が命がけで護衛を買って出てくれたから一安心だよ」
弘大の言葉に部員たちが“おお~”なんて感嘆の声を上げる。拍手なんてしてる奴らもいるし。
なんか・・・ずいぶん語弊があるような気がする。
命がけなんて一言も言ってねぇし、“護衛を買って出た”って、無理やり押しつけただけじゃなかったか?
っつーかさ、こんなことよりちゃんと犯人探したほうがいいんじゃねーの?
「別口で犯人捜しについても遂行してるから、安心していいよ」
俺の考えが読めたのか、弘大はそっと耳打ちをしてきた。
「とにかく、無事に本番を迎えることだけを考えよう。皆いいね?」
弘大の問いかけにまたも部員たちは声高らかに賛同する。
“弘大様の言うことは絶対”・・・そんなフレーズが咄嗟に浮かんだ。

「ってわけで、二人ともこれにサインして」
何が“ってわけで”なのかはわからないが、弘大が俺と淳也に紙切れを寄越してきた。
「「入部届?」」
思いがけない文言に俺たちは顔を見合わせる。
弘大はまた嘘くさい満面の笑みを浮かべ、そして言い放った。
「軽音楽部は本日をもって演劇部に吸収合併。生徒会の承認もすでに得てるよ」
“あれ?言ってなかったっけ?”なんてわざとらしく恍けてみせてるけど、聞いてねぇよ。ってか、絶対確信犯だろ。
「さっさと書いてね。血判でもいいよ」
「「・・・・・・・」」
俺たちは絶句。
けど逆らえるはずもなく、素直に入部届にサインした。
騙された・・・と気づいたときはもう遅い。
どうあがいても“弘大様の言うことは絶対”なのだ・・・。


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