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番外編:秘め事
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何かが変わった。
リギィは訝しんでいた。
トイパル座のアジトのあったライラックの街を出てからだ。
どこがどう違うと明確な説明こそできないが、ユアンとブラムは変わったような気がする。二人を取り巻く雰囲気が、以前よりも心なしか甘ったるい感じなのだ。
傍目から見てイチャついているようにしか見えないのは出会った当初からの事なのだが、近頃はそれだけでは済ませられない何かを感じる。
(だってブラム朝帰りしなくなったし!!)
リギィが一番に感じた違和感はこれだ。
今までは“情報収集”にかこつけて酒場に行き、一体具体的に誰と何をしているのかは知らないが、朝方にようやく帰ってくるのが常だった。それがものの見事にパタリとなくなったのだ。
勿論“情報収集”には変わらず行くが、リギィが寝る頃にはもう帰って来ている。この変化は不自然だ。
(絶対なんかあったに決まってるんだ)
リギィとしては、自分だけが蚊帳の外のような気分がして面白くない。
(よーし、こうなったら確かめてやるぞ)
こっそりと意気込む。
・・・とはいえ、ブラムに何か聞いたところで上手くはぐらかされるに決まっているし、ユアンに聞いて見てもほんわか笑顔で誤魔化されるに決まっている。いや、ユアンの場合は誤魔化すつもりではないのだろうが、こちらの意図とは違う返答しか期待できないだろうということだ。
そんな訳で、リギィはこっそり偵察することに決めた。
偵察と言っても寝たフリをして二人の様子を伺うというだけなのだが。
リギィの見ていないところでブラムとユアンがどんな風に過ごしているのかを探るのだ。
(もしかしたらオレが起きてる時なんか比べ物にならないくらいにすげーイチャついてるのかもしれないし・・・)
思わず浮かんだ妄想に一人顔を赤らめる。
(あんな事とかこんな事とか・・・もしかしたらもっとすごい事してたりして・・・)
次々に頭をめぐる妄想劇。それを取り払うように布団を頭から深く被った。
そうしながらも、辛うじて二人の様子が伺えるほどには顔を出している。
(今のところは、いつもと全然変わんないよな・・・)
ブラムとユアンは二人並んでソファに座り、優雅にお茶を飲んでいる。ブラムは酒だが。
寛ぎながらもテーブルの上には地図を広げ、これからの道程について話し合っているようだ。
お互いに顔を寄せ合うようにしてしてはいるが、それはいつものことだし。
(やっぱし・・・オレの気のせいなのかなぁ)
リギィは溜息を漏らす。
段々、二人に生じた変化など最初から何もなかったのではないかという気もして来た。
何せリギィは、元々色恋に鋭い方ではないのだ。単なる思い過ごしだった可能性も十二分にある。
(うん、いつも通りだよな・・・)
自分に言い聞かせるように密かに頷き、口の中から溢れ出そうになるあくびを噛み殺した。
実は単純に睡魔に勝てなかっただけなのだが、リギィは自分の感じていた二人の変化を気のせいだったのだと結論づける事にした。
先程からずっと降りよう降りようとしていた瞼の重さに従い、素直に目を閉じる。その後はもはや瞬時に寝息をかき始めていた。
「リギィのやつ、や~っと寝たな」
ブラムが呆れたように呟く。
「寝付きが悪かったんでしょうか?」
ユアンは心配そうに首を傾げた。
二人とも、早々にベッドに入って起きながら寝ずにいたリギィに気がついていた。
ブラムに至ってはリギィが何のために寝たフリなどしていたのかということまで気づいている。
(詰めが甘いんだよな、ガキンチョは)
ほくそ笑み、まだ十分に長さのある煙草を灰皿に押し付ける。
「俺たちもそろそろ寝るか」
言いながら、ユアンの髪を柔らかく撫でる。
うなじの辺りから髪をすくようにして指を差し入れて細い首筋に触れると、ブラムの意図を察したらしいユアンは少し頬を赤らめた。
「おやすみの挨拶、してくれよ」
ブラムが囁くと、ユアンは一瞬だけリギィの方を伺ってから、ブラムの髪を撫でた。
「今日も1日お疲れ様でした」
飼い主が愛犬を褒めるような仕草。これはもはや毎晩の恒例行事で、リギィの前でもこのやりとりは今まで何度も見せている。
けれどここから先は、まだ見せたことのない・・・というか、おそらく見せることのない、特別な挨拶がある。
「おやすみ、ユアン」
「おやすみ・・・なさい」
互いの息が触れ合う距離で囁き合って、そのまま口付けをする。
流石に直ぐ側にリギィがいる状況下なのでただ少し触れるだけのキスなのだが、今までと比べればこれでも相当な変化だ。
そして、唇が離れた後のユアンの恥じらいの表情がまた堪らなく極上なのだ。
(ま、だから余計に欲求不満ではあるんだけどな)
当然ながらに押し寄せて来る劣情の波を抑え込みながら、ユアンの肩に項垂れる。
「ブラム?どうかしました?」
不思議そうに首を傾げるユアン。
「いや、何でもねー」
ブラムは溜息と共に呟き、ユアンの首筋にキスをした
リギィは訝しんでいた。
トイパル座のアジトのあったライラックの街を出てからだ。
どこがどう違うと明確な説明こそできないが、ユアンとブラムは変わったような気がする。二人を取り巻く雰囲気が、以前よりも心なしか甘ったるい感じなのだ。
傍目から見てイチャついているようにしか見えないのは出会った当初からの事なのだが、近頃はそれだけでは済ませられない何かを感じる。
(だってブラム朝帰りしなくなったし!!)
リギィが一番に感じた違和感はこれだ。
今までは“情報収集”にかこつけて酒場に行き、一体具体的に誰と何をしているのかは知らないが、朝方にようやく帰ってくるのが常だった。それがものの見事にパタリとなくなったのだ。
勿論“情報収集”には変わらず行くが、リギィが寝る頃にはもう帰って来ている。この変化は不自然だ。
(絶対なんかあったに決まってるんだ)
リギィとしては、自分だけが蚊帳の外のような気分がして面白くない。
(よーし、こうなったら確かめてやるぞ)
こっそりと意気込む。
・・・とはいえ、ブラムに何か聞いたところで上手くはぐらかされるに決まっているし、ユアンに聞いて見てもほんわか笑顔で誤魔化されるに決まっている。いや、ユアンの場合は誤魔化すつもりではないのだろうが、こちらの意図とは違う返答しか期待できないだろうということだ。
そんな訳で、リギィはこっそり偵察することに決めた。
偵察と言っても寝たフリをして二人の様子を伺うというだけなのだが。
リギィの見ていないところでブラムとユアンがどんな風に過ごしているのかを探るのだ。
(もしかしたらオレが起きてる時なんか比べ物にならないくらいにすげーイチャついてるのかもしれないし・・・)
思わず浮かんだ妄想に一人顔を赤らめる。
(あんな事とかこんな事とか・・・もしかしたらもっとすごい事してたりして・・・)
次々に頭をめぐる妄想劇。それを取り払うように布団を頭から深く被った。
そうしながらも、辛うじて二人の様子が伺えるほどには顔を出している。
(今のところは、いつもと全然変わんないよな・・・)
ブラムとユアンは二人並んでソファに座り、優雅にお茶を飲んでいる。ブラムは酒だが。
寛ぎながらもテーブルの上には地図を広げ、これからの道程について話し合っているようだ。
お互いに顔を寄せ合うようにしてしてはいるが、それはいつものことだし。
(やっぱし・・・オレの気のせいなのかなぁ)
リギィは溜息を漏らす。
段々、二人に生じた変化など最初から何もなかったのではないかという気もして来た。
何せリギィは、元々色恋に鋭い方ではないのだ。単なる思い過ごしだった可能性も十二分にある。
(うん、いつも通りだよな・・・)
自分に言い聞かせるように密かに頷き、口の中から溢れ出そうになるあくびを噛み殺した。
実は単純に睡魔に勝てなかっただけなのだが、リギィは自分の感じていた二人の変化を気のせいだったのだと結論づける事にした。
先程からずっと降りよう降りようとしていた瞼の重さに従い、素直に目を閉じる。その後はもはや瞬時に寝息をかき始めていた。
「リギィのやつ、や~っと寝たな」
ブラムが呆れたように呟く。
「寝付きが悪かったんでしょうか?」
ユアンは心配そうに首を傾げた。
二人とも、早々にベッドに入って起きながら寝ずにいたリギィに気がついていた。
ブラムに至ってはリギィが何のために寝たフリなどしていたのかということまで気づいている。
(詰めが甘いんだよな、ガキンチョは)
ほくそ笑み、まだ十分に長さのある煙草を灰皿に押し付ける。
「俺たちもそろそろ寝るか」
言いながら、ユアンの髪を柔らかく撫でる。
うなじの辺りから髪をすくようにして指を差し入れて細い首筋に触れると、ブラムの意図を察したらしいユアンは少し頬を赤らめた。
「おやすみの挨拶、してくれよ」
ブラムが囁くと、ユアンは一瞬だけリギィの方を伺ってから、ブラムの髪を撫でた。
「今日も1日お疲れ様でした」
飼い主が愛犬を褒めるような仕草。これはもはや毎晩の恒例行事で、リギィの前でもこのやりとりは今まで何度も見せている。
けれどここから先は、まだ見せたことのない・・・というか、おそらく見せることのない、特別な挨拶がある。
「おやすみ、ユアン」
「おやすみ・・・なさい」
互いの息が触れ合う距離で囁き合って、そのまま口付けをする。
流石に直ぐ側にリギィがいる状況下なのでただ少し触れるだけのキスなのだが、今までと比べればこれでも相当な変化だ。
そして、唇が離れた後のユアンの恥じらいの表情がまた堪らなく極上なのだ。
(ま、だから余計に欲求不満ではあるんだけどな)
当然ながらに押し寄せて来る劣情の波を抑え込みながら、ユアンの肩に項垂れる。
「ブラム?どうかしました?」
不思議そうに首を傾げるユアン。
「いや、何でもねー」
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