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授業を受け持っているクラス全員の分をチェックし終える頃には夕方になっていた。
我ながら中々の集中力だと感心しながら、思い切り背伸びをする。久々のデスクワークにすっかり肩が凝っていた。
ふと目に入った携帯が緑色のランプを点滅させていることに気付く。
一体誰からのメールかと開いてみれば、思いがけない人物の名前が表示されていた。
(姉貴・・・珍しいな、何事だ?)
女王様・・・基、姉の御剣朝香(みつるぎ あさか)からだった。
「・・・・は?」
メールの内容を見て咲夜は固まる。
連絡を寄越してくる度にろくでもないことを言ってくるのはもはや常だが、今回は今までで随一かもしれない。
To:咲夜
美琴ちゃんが今ホテル暮らしをしているらしいと聞いた。
ホテル暮らしなんて無駄遣いもいいとこだ。
というわけで、藤乃が帰国するまでの間は美琴ちゃんをお前の所に泊めてやることにした。
藤乃と美琴にはすでに話は通してある。
あとはよろしくな。
From:朝香
(いやいやいやいやいや・・・)
卒倒しそうになりながら、何度も本文を読み返す。
だが、何度見ても書かれていることは変わらない。
美琴を咲夜の家に泊める・・・・藤乃の帰国なんて、確か今日明日の話ではなかったはずだ。
となれば数日間もの間、美琴と同居生活を送ることになる。
“初めまして”などと言われたばかりだというのに、この女王様はなんというお節介をしてくれたのか・・・。
すぐさま抗議しようとメールを打つが、途中で新たなメッセージを受信した。
☆咲夜へ☆
お姉さまから話は聞いたわ。ミコちゃんも納得済よ。
ホテルはチェックアウトさせて、保健室で待ってるように伝えてあるから
ちゃ~んと迎えに行ってあげるのよ~ん♪
☆藤乃さんより☆
(どいつもこいつも・・・・)
がっくりと項垂れる。
今も昔も、この二人の女帝の言うことは“絶対”なのだ。
逆らったところで聞き入れられたことなど、一度だってない。
(“納得済”って・・・・ホントだろうな・・・)
眉を顰め、藤乃のメールを改めて見返す。
(俺の意思確認なしでチェックアウトさせんなよ・・・っつーか、そもそも藤乃が合鍵くらい渡しけばよかったじゃねーか・・・)
不満がぐるぐると頭を巡るが、ここでいくら頭を抱えていても仕方がない。
うじうじ悩むのは性に合わないことだし・・・。
「行くか・・・」
覚悟を決めて立ち上がる。
机を片付け、荷物をまとめ、非常に重い足取りで咲夜は国語教諭室を後にした。
美琴の待つ保健室に向かうために。
***
広大な敷地の帝城高校は、北側、西側、東側それぞれに校舎が立ち、それに囲まれるようにして職員室や保健室、生徒会室のある中央棟がある。ちなみに南側はグラウンド、武道場、テニスコート、屋内外プールなどなど。
各教科の教諭室は校舎内の各所に散らばっているが、国語教諭室から保健室まではさほど遠くない距離にあった。
おかげで思考の整理もはかどらないまま、あっという間に保健室の扉の前に立つ羽目になっていた。
「し、失礼します」
息を吐き、咳払いをしてから、意を決したように扉に手を掛ける。
スーッと音もなく引き戸を開けば、白衣を着た人物が机に伏していた。
「み・・・綾華・・先生?」
昔のように“美琴”と呼んでしまいそうになったのを咄嗟に誤魔化して、恐る恐る呼び掛ける。
反応がないため一歩二歩と歩み寄り、もう一度声を掛けようとして、止まった。
(寝てるし・・・)
美琴は机に突っ伏したまま、心地よさそうな寝息を立てている。
意気込んでいただけに出鼻を挫かれたような思いだ。
咲夜は所在無く頭を掻いた。
ベッドの上には大きなカバン、傍らにはキャリーバッグも置いてある。
藤乃のメールにあった通り、ホテルをチェックアウトさせたというのは本当のようだ。
・・・と言うことは、咲夜の家に泊まるということに、美琴が納得しているということも本当のことなのだろう。
(人の気も知らねぇで、呑気に寝てんな・・・)
立ち尽くしたまま美琴の寝顔を見つめる。
先程職員室で顔を合わせた時にはあまりに余裕がなかった所為で気が付かなかったが、こうして見ると記憶の中の美琴よりも随分大人びているような気がする。
3年も経っているのだから当然と言えば当然なのかもしれないが。
(髪型と・・・眼鏡の所為もあるか)
あの頃の美琴は今よりずっと髪が長く、真っ黒なストレートヘアがまさに大和撫子といった風貌だった。
小さくて、か弱くて、誰しもが守ってやりたくなるような妹的存在・・・それが美琴だった。
(美人になっちまってまぁ・・・)
昔は“可愛い”という形容詞がピッタリだったが、今はどちらかと言うと“綺麗”の方が相応しい。
(睫毛なげーな・・・・)
せっかくのチャンスだとばかりにまじまじと見つめる。
初めの緊張もすっかり薄れ、口元が油断に緩み始めると、不意に美琴の瞼が開いた。
「あ・・・」
ばっちりと目が合ってしまい、思わず固まる咲夜。
気まずさのあまり背中に汗が滲んだが、美琴は特に気に留める様子もなく、ふわっと大きな欠伸を漏らした。
「お、おはよう」
バツの悪そうに咲夜が引きつった笑いを浮かべる。
「おはようございます。・・・誰かさんが遅いから、すっかり待ちくたびれて寝てました」
美琴は背伸びをしながらつんとした口調で言った。
「てっきりすっぽかされるのかとも思いましたけど、お姉さんと藤乃さんに逆らえないのは相変わらずみたいですね。御剣先生」
意地悪く微笑み、こちらを見つめる。
“相変わらず”という言葉に何だかホッとしつつ、咲夜は自然と頬を緩ませた。
「なんだよ、“初めまして”なんて言われたからてっきり記憶喪失にでもなってんのかと思ってたぜ」
悪戯っぽく舌を出すと、美琴は少しムッとした顔をした。
「あの時は他に先生方もいましたし、詮索されるのも面倒ですから」
きっぱりと言ってのける。
立ち上がり、咲夜に一歩二歩と近づいて今度はニッコリと笑った。
「久しぶりですね。元気そうで何よりです」
美琴が口にしたのは、先ほどは聞くことのできなかった再会の挨拶。
差し出された手を握り、咲夜も改めて言った。
「久しぶり。・・・・悪かったな、迎えに来るの遅くなって」
仕事に没頭していたとはいえ、咲夜が朝香からのメールに気が付くまでは確かに結構な時間が経っていた。
もし美琴が咲夜の迎えを待っていたのだとすれば、本当に“待ちくたびれていた”のだろう。
だが、美琴は咲夜の素直な謝罪に少しばかりきまりの悪そうな顔をした。
「本気にしないでください。寝ちゃってたのは単なる時差ボケですから」
言い辛そうにポツリと呟く。そして荷物を取るべく、ベッドの方へ進んだ。
「時差ボケって・・・お前いつ帰って来たの?」
思いがけない言い分に驚きつつ、咲夜が尋ねる。
「昨日ですよ」
「昨日?」
さも当然と言う風に答える美琴に、咲夜はまた驚いた。
昨日帰国したばかりなら、咲夜が知らされていないのも当然だ。
(なんだ・・・そっか・・・)
妙に納得し、避けられていた訳ではないのだとホッとする。
美琴が抱えようとした大きなカバンを奪い取るように持ち、キャリーバックも手に取った。
「別に持ってくれなくても・・・」
不満そうに・・・というよりも、何処となく照れ臭そうに美琴がぼやく。
「まぁまぁ、いいじゃん。とっとと帰ろうぜ、綾華」
咲夜は満面の笑みで美琴の背中を叩いた。
我ながら中々の集中力だと感心しながら、思い切り背伸びをする。久々のデスクワークにすっかり肩が凝っていた。
ふと目に入った携帯が緑色のランプを点滅させていることに気付く。
一体誰からのメールかと開いてみれば、思いがけない人物の名前が表示されていた。
(姉貴・・・珍しいな、何事だ?)
女王様・・・基、姉の御剣朝香(みつるぎ あさか)からだった。
「・・・・は?」
メールの内容を見て咲夜は固まる。
連絡を寄越してくる度にろくでもないことを言ってくるのはもはや常だが、今回は今までで随一かもしれない。
To:咲夜
美琴ちゃんが今ホテル暮らしをしているらしいと聞いた。
ホテル暮らしなんて無駄遣いもいいとこだ。
というわけで、藤乃が帰国するまでの間は美琴ちゃんをお前の所に泊めてやることにした。
藤乃と美琴にはすでに話は通してある。
あとはよろしくな。
From:朝香
(いやいやいやいやいや・・・)
卒倒しそうになりながら、何度も本文を読み返す。
だが、何度見ても書かれていることは変わらない。
美琴を咲夜の家に泊める・・・・藤乃の帰国なんて、確か今日明日の話ではなかったはずだ。
となれば数日間もの間、美琴と同居生活を送ることになる。
“初めまして”などと言われたばかりだというのに、この女王様はなんというお節介をしてくれたのか・・・。
すぐさま抗議しようとメールを打つが、途中で新たなメッセージを受信した。
☆咲夜へ☆
お姉さまから話は聞いたわ。ミコちゃんも納得済よ。
ホテルはチェックアウトさせて、保健室で待ってるように伝えてあるから
ちゃ~んと迎えに行ってあげるのよ~ん♪
☆藤乃さんより☆
(どいつもこいつも・・・・)
がっくりと項垂れる。
今も昔も、この二人の女帝の言うことは“絶対”なのだ。
逆らったところで聞き入れられたことなど、一度だってない。
(“納得済”って・・・・ホントだろうな・・・)
眉を顰め、藤乃のメールを改めて見返す。
(俺の意思確認なしでチェックアウトさせんなよ・・・っつーか、そもそも藤乃が合鍵くらい渡しけばよかったじゃねーか・・・)
不満がぐるぐると頭を巡るが、ここでいくら頭を抱えていても仕方がない。
うじうじ悩むのは性に合わないことだし・・・。
「行くか・・・」
覚悟を決めて立ち上がる。
机を片付け、荷物をまとめ、非常に重い足取りで咲夜は国語教諭室を後にした。
美琴の待つ保健室に向かうために。
***
広大な敷地の帝城高校は、北側、西側、東側それぞれに校舎が立ち、それに囲まれるようにして職員室や保健室、生徒会室のある中央棟がある。ちなみに南側はグラウンド、武道場、テニスコート、屋内外プールなどなど。
各教科の教諭室は校舎内の各所に散らばっているが、国語教諭室から保健室まではさほど遠くない距離にあった。
おかげで思考の整理もはかどらないまま、あっという間に保健室の扉の前に立つ羽目になっていた。
「し、失礼します」
息を吐き、咳払いをしてから、意を決したように扉に手を掛ける。
スーッと音もなく引き戸を開けば、白衣を着た人物が机に伏していた。
「み・・・綾華・・先生?」
昔のように“美琴”と呼んでしまいそうになったのを咄嗟に誤魔化して、恐る恐る呼び掛ける。
反応がないため一歩二歩と歩み寄り、もう一度声を掛けようとして、止まった。
(寝てるし・・・)
美琴は机に突っ伏したまま、心地よさそうな寝息を立てている。
意気込んでいただけに出鼻を挫かれたような思いだ。
咲夜は所在無く頭を掻いた。
ベッドの上には大きなカバン、傍らにはキャリーバッグも置いてある。
藤乃のメールにあった通り、ホテルをチェックアウトさせたというのは本当のようだ。
・・・と言うことは、咲夜の家に泊まるということに、美琴が納得しているということも本当のことなのだろう。
(人の気も知らねぇで、呑気に寝てんな・・・)
立ち尽くしたまま美琴の寝顔を見つめる。
先程職員室で顔を合わせた時にはあまりに余裕がなかった所為で気が付かなかったが、こうして見ると記憶の中の美琴よりも随分大人びているような気がする。
3年も経っているのだから当然と言えば当然なのかもしれないが。
(髪型と・・・眼鏡の所為もあるか)
あの頃の美琴は今よりずっと髪が長く、真っ黒なストレートヘアがまさに大和撫子といった風貌だった。
小さくて、か弱くて、誰しもが守ってやりたくなるような妹的存在・・・それが美琴だった。
(美人になっちまってまぁ・・・)
昔は“可愛い”という形容詞がピッタリだったが、今はどちらかと言うと“綺麗”の方が相応しい。
(睫毛なげーな・・・・)
せっかくのチャンスだとばかりにまじまじと見つめる。
初めの緊張もすっかり薄れ、口元が油断に緩み始めると、不意に美琴の瞼が開いた。
「あ・・・」
ばっちりと目が合ってしまい、思わず固まる咲夜。
気まずさのあまり背中に汗が滲んだが、美琴は特に気に留める様子もなく、ふわっと大きな欠伸を漏らした。
「お、おはよう」
バツの悪そうに咲夜が引きつった笑いを浮かべる。
「おはようございます。・・・誰かさんが遅いから、すっかり待ちくたびれて寝てました」
美琴は背伸びをしながらつんとした口調で言った。
「てっきりすっぽかされるのかとも思いましたけど、お姉さんと藤乃さんに逆らえないのは相変わらずみたいですね。御剣先生」
意地悪く微笑み、こちらを見つめる。
“相変わらず”という言葉に何だかホッとしつつ、咲夜は自然と頬を緩ませた。
「なんだよ、“初めまして”なんて言われたからてっきり記憶喪失にでもなってんのかと思ってたぜ」
悪戯っぽく舌を出すと、美琴は少しムッとした顔をした。
「あの時は他に先生方もいましたし、詮索されるのも面倒ですから」
きっぱりと言ってのける。
立ち上がり、咲夜に一歩二歩と近づいて今度はニッコリと笑った。
「久しぶりですね。元気そうで何よりです」
美琴が口にしたのは、先ほどは聞くことのできなかった再会の挨拶。
差し出された手を握り、咲夜も改めて言った。
「久しぶり。・・・・悪かったな、迎えに来るの遅くなって」
仕事に没頭していたとはいえ、咲夜が朝香からのメールに気が付くまでは確かに結構な時間が経っていた。
もし美琴が咲夜の迎えを待っていたのだとすれば、本当に“待ちくたびれていた”のだろう。
だが、美琴は咲夜の素直な謝罪に少しばかりきまりの悪そうな顔をした。
「本気にしないでください。寝ちゃってたのは単なる時差ボケですから」
言い辛そうにポツリと呟く。そして荷物を取るべく、ベッドの方へ進んだ。
「時差ボケって・・・お前いつ帰って来たの?」
思いがけない言い分に驚きつつ、咲夜が尋ねる。
「昨日ですよ」
「昨日?」
さも当然と言う風に答える美琴に、咲夜はまた驚いた。
昨日帰国したばかりなら、咲夜が知らされていないのも当然だ。
(なんだ・・・そっか・・・)
妙に納得し、避けられていた訳ではないのだとホッとする。
美琴が抱えようとした大きなカバンを奪い取るように持ち、キャリーバックも手に取った。
「別に持ってくれなくても・・・」
不満そうに・・・というよりも、何処となく照れ臭そうに美琴がぼやく。
「まぁまぁ、いいじゃん。とっとと帰ろうぜ、綾華」
咲夜は満面の笑みで美琴の背中を叩いた。
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