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3:一目惚れは膨らむ蕾の如く
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ここはキッチンスタジオICHIYOU。
二人の若手講師が人気を博しているのは周知のことだが、今回は裏方が主人公である。
事務室の一番隅で、黙々と伝票とにらみ合っている男の名は市ノ宮(いちのみや)という。このICHIYOUでは総務担当・・・という名の何でも係であり、私服のはずなのに作業着に見える色味の服装と、洒落っ気のかけらもない丸眼鏡がトレードマークだ。
酷い猫背なので仕事中はいつも24インチのデスクトップパソコンに身を隠しているように見える。
「市ノ宮さん、教室Cの蛍光灯が切れてたよ」
「教室Aは水道が一カ所閉まらなくて水漏れしてるらしいぜ」
看板講師である若狭と仁後がひょっこりと顔を出す。二人とも私服に着替えているところを見ると、どうやらもう帰宅時間になっていたようだ。
市ノ宮はどうにも仕事に没頭し過ぎて時間を忘れてしまう傾向にある。つまり要領が悪いのだ。
「そうですか、では帰る前に確認して手配しておきます」
忘れないようにと付箋にメモしてパソコンの画面に貼っておく。伝票処理の作業もキリが悪い上、就業時間ということは本日の日報も書いておかなければならないので、現場に行くのはまだ少し後になりそうだ。
「あ、そうか。今日は沢口さんがいないから手が足りないんですよね」
若狭がハッとしたように呟く。
そうなのだ。いつもなら伝票の処理や日報は事務員である沢口が少なくとも半分くらいは請け負ってくれる。それが今日は、夕方から不在にしているため、市ノ宮が全てを抱え込むことになってしまった。人手不足のICHIYOUなので、他に仕事を回せるような相手もいない。
「ま~た『出張』になってっけど、どうせ見合いだろ・・・?」
勤務状況を示すホワイトボードを指さしながらげんなりしたように言うのは仁後だ。これには市ノ宮は曖昧に笑ってみせるしかなかった。
「もし良かったら、日報は俺がやっときますよ。蛍光灯は予備を渡してくれればこいつが取り換えてくるし」
「うぇ、俺も? 仕方ねーなぁ、じゃあついでに水道の件も業者に連絡しといてやるよ」
思いがけず、若狭がそんな提案をしてくれる。仁後も嫌がるのかと思いきや、更なる手伝いを申し出てくれた。
「い、いえ、しかし、そんな、悪いですから」
市ノ宮は慌てた。花形である二人にそんな雑用を押しつけるわけにはいかない。
恐縮する市ノ宮を見て、仁後と若狭は顔を見合わせて笑った。
「だーって市ノ宮さん、何か用事あんでしょーよ? 」
「え?」
仁後がパソコン画面を指差すので、いったい何のことかと驚く。示された所を見やれば、つい今し方貼った付箋のすぐ上に、あらかじめ貼っておいた別の付箋があった。内容はこうだ。『木曜 シシリー 19時まで』
「今日、木曜だよ。あと30分で19時だし」
「あ! うわっ!」
若狭にも指摘され、市ノ宮はパソコン画面と壁に掛かっているカレンダーと時計、さらに自分の腕時計まで確認してから慌てて立ち上がった。
「戸締まりもしといてやるから、さっさと行った方が良いんじゃねーの?」
「す、すみません!! お言葉に甘えます!! 」
仁後に諭すように肩を叩かれ、市ノ宮は大きく頷いた。そして二人に何度も何度も頭を下げながら駆け出した。
目的地はCicely(シシリー)。ICHIYOUから歩いて15分ほどの場所にあるフラワーショップである。
シシリーは高級住宅街の一角にある。5階建ての建物で、一階がシシリー、その上は学習塾だ。昼間来るとそうでもないのだが、今日は時間の所為か学習塾の方がかなり賑わっていて学生らしき声がたくさん聞こえる。
それでもシシリーの扉を開けて中に入れば、建物の特性なのか、騒がしさはすぐに感じなくなった。シシリーの店内に流れるオルゴールの音色がとても心地良い。
「いらっしゃいませ」
「あ、ど、どうも」
オルゴールよりも更に心地よい声に、市ノ宮は思わず背筋を伸ばした。レジの方を見やると、シシリーの店主が柔らかな微笑みをこちらに向けていた。
(今日も綺麗だ・・・)
緊張を悟られないように鼻からゆっくりと息を吐く。
意識的に気を引き締めないと、ついついぼんやりと見とれてしまうのだ。花を買いに来ているのだから、店主ではなく花を見なければ。
「今日も、お教室用のお花ですか?」
「あ、き、今日は受付のところの、このくらいの花瓶に入るくらいで」
接客のため店主が近くにやってくる。ただそれだけで、市ノ宮は全身から汗が吹き出してくるのを感じた。もう何度も通っているというのに、慣れるどころか寧ろ悪化の一途を辿っている。顔を合わせる回数に比例して想いも募っているのだとしたら、それは仕方のないことなのかもしれないが。
ICHIYOUに飾られている花々は全てシシリーで注文している。事務員である沢口が懇意にしていたからなので、初めは彼女が担当していたのだが・・・まぁ例によって、沢口が「出張」で多忙だということで、市ノ宮に担当が回ってきた。そうしてこの店主に出会ったのだ。
一目見たその瞬間、あまりの美しさに心を奪われた。笑った顔などまさに花が咲いたようで、男性に対して適切な褒め言葉ではないかもしれないが、「花の女神のようだ」と思った。
貰った名刺はお守りのように財布の中に入れてある。店主の名前は齋原葉純(さいばら はすみ)という。
「それじゃ、明日お昼頃にお届けに上がりますね」
「は、はい。お、お待ちしております」
葉純に花を選んでもらい、注文書の記載も終わってお互いに深々と頭を下げた。傍目から見ればどちらが客なのか分からないほどだろう。
控えを受け取り、几帳面に畳んでから鞄の内側にあるファスナーポケットに大事に仕舞う。
暫し歩き、店を少し離れたところで振り返ると、葉純がまだ見送ってくれていたのでまた胸が高鳴った。明日もまた会える・・・それだけで市ノ宮は天にも昇る気持ちだ。
翌日、市ノ宮は落胆していた。
シシリーから花が届いたその時間・・・つまりは葉純がやって来ていたその時間、市ノ宮は沢口の命令によって倉庫の大掃除をしていたからだ。大急ぎで掃除を済ませて事務室に戻ったのだが、時既に遅く。受付には秋色で纏められた愛らしいフラワーアレンジメントが飾られ、市ノ宮の机の上には受領書が置かれていた。
葉純に会えると浮かれていただけに、すれ違ってしまった事が残念でならない。
「市ノ宮さんいなかったから俺達が受け取っといたんだけど・・・もしかしてまずかった?」
恐る恐る、という風に仁後が尋ねる。
「いえ・・・昨日から引き続きご迷惑をおかけしてしまって・・・」
力なく頭を下げる。せめてもの慰めとばかりに、受領書に書かれている葉純の字を見つめた。彼の几帳面で繊細な人柄を表しているような、とても美しく整った文字だ。自然と葉純の笑顔が浮かんで来て、また溜息が漏れた。
今日はどんな服装で、どんな髪型をしていたのだろうか。長めの髪を一つ結びにしている時が特に好きなのだが。一目だけでも会いたかった。後ろ姿だけでも良いから見たかった。・・・そんな思いが駆けめぐる。
「何かすっげー残念そうなんだけど・・・」
「うーん・・俺たち余計な事しなきゃ良かったな」
仁後も若狭も、市ノ宮の様子に困惑するばかりといった様子だ。かと思えば、
「あの店長さん、めっちゃくちゃ美人だったもんなぁ~。市ノ宮さんあの人にお熱だったりして?」
仁後が冗談混じりにそんな事を言い出した。不穏な空気を軽くしようという彼の気遣いなのだろうが、図星を付かれた市ノ宮としてはとてもじゃないが笑い飛ばせない。
「ち、ち、違います! そ、そ、そんな! だって、僕も葉純さんも男で、そんな! 幾らなんでも、そんな、そんな!!」
必死に言い訳にすらなっていない反論をしてみるが、
「男同士だからって・・・それを俺たちに言うか?」
仁後がげんなりしながら自分と若狭とを指差す。若狭も困ったように苦笑している。
そうだった。この二人、それぞれにとても可愛らしい男性の恋人がいるのだった・・・。紹介された事はないが、沢口に何度か愚痴られたことがあるので市ノ宮も知っている。
「その葉純さんっての? 好きなら好きで良いじゃんよ。俺たちも応援するし」
「そうだな、出来る限り協力するよ」
二人してそんな申し出までしてくれる。市ノ宮は酷く恐縮した。
「い、いえ、ホントに違うんです。大体僕なんかが、そんな・・・おこがましいですから」
応援してもらって、どうこうなりたいなどという、そんな気持ちではないのだ。ただ憧れているというか、別に手に入れたいなどという気持ちがある訳ではなく、単に会って癒やされるというだけで良くて、恋愛感情というのとは少し違っていて、言うなれば女神のように崇拝しているという感じが相応しい。
そんな風に必死に説明してみたのだが、若狭も仁後もただ笑っているだけだ。市ノ宮の必死さがまるで逆効果になったらしい。
「まぁまぁ。そんな無理だなんて決めつけずにさ。まずは食事にでも誘ってみたらどうかな?」
「し、しょくじ!?」
若狭の提案にギョッとする。実に事も無げにそんなことを言えるのは、若狭が意中の相手を誘って断られたことなどないからなのだろう。
「そうそう、大事なのは押しの一手だって。市ノ宮さんも、メガネ外したら実はちょーイケてるーとか・・・」
仁後も同調しつつ市ノ宮の分厚い眼鏡をはずしにかかる。そして二人して市ノ宮の素顔を暫し見つめ、無言のまま眼鏡を戻した。当然だ。眼鏡を外したら超美形、などというミラクルがそう現実にあるはずがない。
「あら、あんた達なにやってんの? ちゃんと仕事しなさいよ」
若干気まずい雰囲気になっていた三人の元へ沢口がやって来た。手元の書類で花形講師の二人を軽く叩いた後、市ノ宮に手渡した。
「今週末の5周年記念パーティー。会場のお花はシシリーさんに頼むことにしたから、後はよろしくね」
えらく上機嫌に、さっき会ったから序でに依頼しちゃった、などと話してくれる。
「へぇ~、じゃあ今週末また葉純さんに会えるんじゃん」
「会場準備は市ノ宮さんの仕事だし、話すチャンスも増えるね」
市ノ宮の心の内を読んだかのように二人が言った。そして更に、より具体的な話へと発展していく。
「打ち上げがてらの食事に誘うって事で決定だな」
「店の予約なら俺に任せて」
「えぇっ!? い、いえ、僕はホントにそういうのは・・・」
「楽しそうねぇ、何の話よ? 」
市ノ宮がどんなに否定してみても、この後はもう沢口まで加わって「ガンガン行こうぜ」の作戦ばかり言い渡されるのだった。
そして、ICHIYOU5周年記念パーティー当日。
全員が準備に追われている中、市ノ宮は終始そわそわしっぱなしの状態で、幾度となく小さなミスを重ねては沢口の叱責を受けていた。
理由は言わずもがな。葉純をいつ、どうやって誘うのか・・・そればかりを考えて激しく緊張しているからだ。
若狭と仁後は有言実行と言わんばかりに、本当に有名レストランを予約してしまった。勿論市ノ宮の名で。二名で。
その有名レストランというのがまた、普通なら予約数ヶ月待ちの人気店。若狭と仁後は自分達のコネをフル活用してお膳立てしてくれたらしい。
そうまでしてくれたのだから、市ノ宮だって頑張ろうとは思うのだが・・・
(タイミングが分からない・・・)
作業真っ只中の葉純を見つめ、思わずため息を漏らす。真剣な眼差しは美しく、隙がない。今日は髪をお団子のように小さくまとめている。
沢口がシシリーに依頼したのは、各テーブルに飾る小さな花籠。そしてフロアのメインを飾る大きな生け花だ。それこそ展覧会にでも出すような、かなり大掛かりなもの。
それほどの依頼なので搬入する花の量も種類も相当で、今日はシシリーの従業員総出で来ているらしい。作業着のような格好をした3人の男達が葉純の指示を受けてテキパキと動き回っている。
おかげで葉純がなかなか一人になってくれない。食事に誘うチャンスがない。
(ダメだ・・・仕事に戻ろう)
いったん諦め、事務室へと戻る。
市ノ宮の仕事は会場準備だけではないのだ。机の上に溜まっている伝票と睨み合わねばならない。
いつものようにパソコン画面に向かい、時計を見るのを忘れ始めた頃。
シシリーの従業員が一人、事務室へやって来た。
「生花の搬入が終わりましたので、ご報告に伺いました」
キャップを脱いで、やけにきっちりとしたお辞儀をする。
「あ、そ、それはどうも」
顔を上げた彼が相当な美形だと気付いて少したじろいだ。ICHIYOUの花形講師二人に負けず劣らず・・・いや、作業着姿でこのレベルなのだと考慮すると、それ以上かもそれない。身長もかなり高いし、モデルか何かだと言われてもすんなり納得できそうだ。
「私共はお先に失礼致しますが、店長はあの大物の仕上げがありますので、もう暫く残って作業させていただきます」
「え? あ、そ、そうなんですか。お、お疲れ様でした」
ついつい呆然と観察していた市ノ宮は慌てて頭を下げた。そしてハッとする。頭の中で男の言葉を反芻し、また緊張が高まってきた。
葉純は今一人だ。誘うなら今しかない。
男が立ち去るのを見送り、更には聞き耳を立てて事務室の裏手にある駐車場からシシリーの車が居なくなるのを確認してから、市ノ宮は意を決して葉純の元へ向かった。
(自然に自然に、“お疲れ様です。もし良かったらこの後打ち上げがてらお食事でも”、“お疲れ様です。もし良かったらこの後打ち上げがてら・・・” )
早歩きで会場に向かうまでの間、ブツブツと誘い文句の練習をする。
葉純はどんな反応をするだろうか。やはり断られるだろうか。
(レストランの予約をしてあることは先に伝えるべきなんだろうか? 伝えた方が成功率は上がるような・・・いや、しかし何だか恩着せがましいというか、思い上がっている感じがするような・・・)
悶々と悩んでいたら、あっという間に目的地に着いてしまった。
(よ、よし、行くぞ)
深呼吸をしてから、音を立てないようにゆっくりと扉を開ける。集中しているところを邪魔してはいけないだろうという気遣いだったのだが、どうやら葉純は休憩中らしかった。それも、一人ではなく・・・
「今日は一段と、体中から花の匂いがするな」
先程帰ったと思っていた男が葉純を抱きしめている。首筋に口付けながら、慣れた手つきで結わえた髪を解く。
「あ、こら、まだ仕事中だってば」
葉純はぱらぱらと落ちてくる髪に困ったような顔をして男を嗜めた。身体を離させようとするが、男は少しも従おうとはしない。
「ちょっと息抜きも必要だろ? ほら」
「だめ・・・」
離れるどころか、唇を求めている。葉純は抵抗をしているようにも見えたが、軽い口付けならすぐに受け入れた。触れるだけのキスを何度か交わし、男の手が葉純の腰を撫でる。
「ちょっ・・・ホントにこれ以上は・・・」
「はいはい、分かってるって」
上擦った声での制止に、男はようやく手を止めた。
「続きは帰ってからたっぷりな」
最後とばかりにまた葉純を抱きしめる。柔らかそうな葉純の髪を撫でながら、男は射貫くような視線でこちらを捉えた。
「・・・っ・・」
不敵な笑みを向けられ、市ノ宮は慌ててその場から逃げ出した。
見せ付けられた二人の関係に、ただただ呆然とするばかりだ。
辛いとか、悲しいとか、はたまた悔しいとか、そんな感情もまだ追い付いてこない。とりあえずは失恋したのだという事実と、この後のレストランの予約はどうしようかという、そんな冷静極まりない事柄が浮かんだ。
「あ、ちょっと、市ノ宮! あんた仕事ほっぽって何やってんのよ?」
事務室に帰るなり沢口に出くわす。彼女は来賓客の受付もこなす予定なので、いつもよりも格段にめかしこんでいる。
「・・・・・・沢口さん。今日終わった後、食事行きませんか? やけ酒、付き合って下さい」
ボソボソとうわごとのように口から言葉が漏れていく。
「やけ酒って・・・い、いいわよ・・・」
市ノ宮の廃人振りに同情したのか、沢口は些か引きつりながらも誘いに乗ってくれた。
この食事がきっかけとなり、二人は二年後めでたくゴールインすることになるのだが・・・それはまた別のお話。
二人の若手講師が人気を博しているのは周知のことだが、今回は裏方が主人公である。
事務室の一番隅で、黙々と伝票とにらみ合っている男の名は市ノ宮(いちのみや)という。このICHIYOUでは総務担当・・・という名の何でも係であり、私服のはずなのに作業着に見える色味の服装と、洒落っ気のかけらもない丸眼鏡がトレードマークだ。
酷い猫背なので仕事中はいつも24インチのデスクトップパソコンに身を隠しているように見える。
「市ノ宮さん、教室Cの蛍光灯が切れてたよ」
「教室Aは水道が一カ所閉まらなくて水漏れしてるらしいぜ」
看板講師である若狭と仁後がひょっこりと顔を出す。二人とも私服に着替えているところを見ると、どうやらもう帰宅時間になっていたようだ。
市ノ宮はどうにも仕事に没頭し過ぎて時間を忘れてしまう傾向にある。つまり要領が悪いのだ。
「そうですか、では帰る前に確認して手配しておきます」
忘れないようにと付箋にメモしてパソコンの画面に貼っておく。伝票処理の作業もキリが悪い上、就業時間ということは本日の日報も書いておかなければならないので、現場に行くのはまだ少し後になりそうだ。
「あ、そうか。今日は沢口さんがいないから手が足りないんですよね」
若狭がハッとしたように呟く。
そうなのだ。いつもなら伝票の処理や日報は事務員である沢口が少なくとも半分くらいは請け負ってくれる。それが今日は、夕方から不在にしているため、市ノ宮が全てを抱え込むことになってしまった。人手不足のICHIYOUなので、他に仕事を回せるような相手もいない。
「ま~た『出張』になってっけど、どうせ見合いだろ・・・?」
勤務状況を示すホワイトボードを指さしながらげんなりしたように言うのは仁後だ。これには市ノ宮は曖昧に笑ってみせるしかなかった。
「もし良かったら、日報は俺がやっときますよ。蛍光灯は予備を渡してくれればこいつが取り換えてくるし」
「うぇ、俺も? 仕方ねーなぁ、じゃあついでに水道の件も業者に連絡しといてやるよ」
思いがけず、若狭がそんな提案をしてくれる。仁後も嫌がるのかと思いきや、更なる手伝いを申し出てくれた。
「い、いえ、しかし、そんな、悪いですから」
市ノ宮は慌てた。花形である二人にそんな雑用を押しつけるわけにはいかない。
恐縮する市ノ宮を見て、仁後と若狭は顔を見合わせて笑った。
「だーって市ノ宮さん、何か用事あんでしょーよ? 」
「え?」
仁後がパソコン画面を指差すので、いったい何のことかと驚く。示された所を見やれば、つい今し方貼った付箋のすぐ上に、あらかじめ貼っておいた別の付箋があった。内容はこうだ。『木曜 シシリー 19時まで』
「今日、木曜だよ。あと30分で19時だし」
「あ! うわっ!」
若狭にも指摘され、市ノ宮はパソコン画面と壁に掛かっているカレンダーと時計、さらに自分の腕時計まで確認してから慌てて立ち上がった。
「戸締まりもしといてやるから、さっさと行った方が良いんじゃねーの?」
「す、すみません!! お言葉に甘えます!! 」
仁後に諭すように肩を叩かれ、市ノ宮は大きく頷いた。そして二人に何度も何度も頭を下げながら駆け出した。
目的地はCicely(シシリー)。ICHIYOUから歩いて15分ほどの場所にあるフラワーショップである。
シシリーは高級住宅街の一角にある。5階建ての建物で、一階がシシリー、その上は学習塾だ。昼間来るとそうでもないのだが、今日は時間の所為か学習塾の方がかなり賑わっていて学生らしき声がたくさん聞こえる。
それでもシシリーの扉を開けて中に入れば、建物の特性なのか、騒がしさはすぐに感じなくなった。シシリーの店内に流れるオルゴールの音色がとても心地良い。
「いらっしゃいませ」
「あ、ど、どうも」
オルゴールよりも更に心地よい声に、市ノ宮は思わず背筋を伸ばした。レジの方を見やると、シシリーの店主が柔らかな微笑みをこちらに向けていた。
(今日も綺麗だ・・・)
緊張を悟られないように鼻からゆっくりと息を吐く。
意識的に気を引き締めないと、ついついぼんやりと見とれてしまうのだ。花を買いに来ているのだから、店主ではなく花を見なければ。
「今日も、お教室用のお花ですか?」
「あ、き、今日は受付のところの、このくらいの花瓶に入るくらいで」
接客のため店主が近くにやってくる。ただそれだけで、市ノ宮は全身から汗が吹き出してくるのを感じた。もう何度も通っているというのに、慣れるどころか寧ろ悪化の一途を辿っている。顔を合わせる回数に比例して想いも募っているのだとしたら、それは仕方のないことなのかもしれないが。
ICHIYOUに飾られている花々は全てシシリーで注文している。事務員である沢口が懇意にしていたからなので、初めは彼女が担当していたのだが・・・まぁ例によって、沢口が「出張」で多忙だということで、市ノ宮に担当が回ってきた。そうしてこの店主に出会ったのだ。
一目見たその瞬間、あまりの美しさに心を奪われた。笑った顔などまさに花が咲いたようで、男性に対して適切な褒め言葉ではないかもしれないが、「花の女神のようだ」と思った。
貰った名刺はお守りのように財布の中に入れてある。店主の名前は齋原葉純(さいばら はすみ)という。
「それじゃ、明日お昼頃にお届けに上がりますね」
「は、はい。お、お待ちしております」
葉純に花を選んでもらい、注文書の記載も終わってお互いに深々と頭を下げた。傍目から見ればどちらが客なのか分からないほどだろう。
控えを受け取り、几帳面に畳んでから鞄の内側にあるファスナーポケットに大事に仕舞う。
暫し歩き、店を少し離れたところで振り返ると、葉純がまだ見送ってくれていたのでまた胸が高鳴った。明日もまた会える・・・それだけで市ノ宮は天にも昇る気持ちだ。
翌日、市ノ宮は落胆していた。
シシリーから花が届いたその時間・・・つまりは葉純がやって来ていたその時間、市ノ宮は沢口の命令によって倉庫の大掃除をしていたからだ。大急ぎで掃除を済ませて事務室に戻ったのだが、時既に遅く。受付には秋色で纏められた愛らしいフラワーアレンジメントが飾られ、市ノ宮の机の上には受領書が置かれていた。
葉純に会えると浮かれていただけに、すれ違ってしまった事が残念でならない。
「市ノ宮さんいなかったから俺達が受け取っといたんだけど・・・もしかしてまずかった?」
恐る恐る、という風に仁後が尋ねる。
「いえ・・・昨日から引き続きご迷惑をおかけしてしまって・・・」
力なく頭を下げる。せめてもの慰めとばかりに、受領書に書かれている葉純の字を見つめた。彼の几帳面で繊細な人柄を表しているような、とても美しく整った文字だ。自然と葉純の笑顔が浮かんで来て、また溜息が漏れた。
今日はどんな服装で、どんな髪型をしていたのだろうか。長めの髪を一つ結びにしている時が特に好きなのだが。一目だけでも会いたかった。後ろ姿だけでも良いから見たかった。・・・そんな思いが駆けめぐる。
「何かすっげー残念そうなんだけど・・・」
「うーん・・俺たち余計な事しなきゃ良かったな」
仁後も若狭も、市ノ宮の様子に困惑するばかりといった様子だ。かと思えば、
「あの店長さん、めっちゃくちゃ美人だったもんなぁ~。市ノ宮さんあの人にお熱だったりして?」
仁後が冗談混じりにそんな事を言い出した。不穏な空気を軽くしようという彼の気遣いなのだろうが、図星を付かれた市ノ宮としてはとてもじゃないが笑い飛ばせない。
「ち、ち、違います! そ、そ、そんな! だって、僕も葉純さんも男で、そんな! 幾らなんでも、そんな、そんな!!」
必死に言い訳にすらなっていない反論をしてみるが、
「男同士だからって・・・それを俺たちに言うか?」
仁後がげんなりしながら自分と若狭とを指差す。若狭も困ったように苦笑している。
そうだった。この二人、それぞれにとても可愛らしい男性の恋人がいるのだった・・・。紹介された事はないが、沢口に何度か愚痴られたことがあるので市ノ宮も知っている。
「その葉純さんっての? 好きなら好きで良いじゃんよ。俺たちも応援するし」
「そうだな、出来る限り協力するよ」
二人してそんな申し出までしてくれる。市ノ宮は酷く恐縮した。
「い、いえ、ホントに違うんです。大体僕なんかが、そんな・・・おこがましいですから」
応援してもらって、どうこうなりたいなどという、そんな気持ちではないのだ。ただ憧れているというか、別に手に入れたいなどという気持ちがある訳ではなく、単に会って癒やされるというだけで良くて、恋愛感情というのとは少し違っていて、言うなれば女神のように崇拝しているという感じが相応しい。
そんな風に必死に説明してみたのだが、若狭も仁後もただ笑っているだけだ。市ノ宮の必死さがまるで逆効果になったらしい。
「まぁまぁ。そんな無理だなんて決めつけずにさ。まずは食事にでも誘ってみたらどうかな?」
「し、しょくじ!?」
若狭の提案にギョッとする。実に事も無げにそんなことを言えるのは、若狭が意中の相手を誘って断られたことなどないからなのだろう。
「そうそう、大事なのは押しの一手だって。市ノ宮さんも、メガネ外したら実はちょーイケてるーとか・・・」
仁後も同調しつつ市ノ宮の分厚い眼鏡をはずしにかかる。そして二人して市ノ宮の素顔を暫し見つめ、無言のまま眼鏡を戻した。当然だ。眼鏡を外したら超美形、などというミラクルがそう現実にあるはずがない。
「あら、あんた達なにやってんの? ちゃんと仕事しなさいよ」
若干気まずい雰囲気になっていた三人の元へ沢口がやって来た。手元の書類で花形講師の二人を軽く叩いた後、市ノ宮に手渡した。
「今週末の5周年記念パーティー。会場のお花はシシリーさんに頼むことにしたから、後はよろしくね」
えらく上機嫌に、さっき会ったから序でに依頼しちゃった、などと話してくれる。
「へぇ~、じゃあ今週末また葉純さんに会えるんじゃん」
「会場準備は市ノ宮さんの仕事だし、話すチャンスも増えるね」
市ノ宮の心の内を読んだかのように二人が言った。そして更に、より具体的な話へと発展していく。
「打ち上げがてらの食事に誘うって事で決定だな」
「店の予約なら俺に任せて」
「えぇっ!? い、いえ、僕はホントにそういうのは・・・」
「楽しそうねぇ、何の話よ? 」
市ノ宮がどんなに否定してみても、この後はもう沢口まで加わって「ガンガン行こうぜ」の作戦ばかり言い渡されるのだった。
そして、ICHIYOU5周年記念パーティー当日。
全員が準備に追われている中、市ノ宮は終始そわそわしっぱなしの状態で、幾度となく小さなミスを重ねては沢口の叱責を受けていた。
理由は言わずもがな。葉純をいつ、どうやって誘うのか・・・そればかりを考えて激しく緊張しているからだ。
若狭と仁後は有言実行と言わんばかりに、本当に有名レストランを予約してしまった。勿論市ノ宮の名で。二名で。
その有名レストランというのがまた、普通なら予約数ヶ月待ちの人気店。若狭と仁後は自分達のコネをフル活用してお膳立てしてくれたらしい。
そうまでしてくれたのだから、市ノ宮だって頑張ろうとは思うのだが・・・
(タイミングが分からない・・・)
作業真っ只中の葉純を見つめ、思わずため息を漏らす。真剣な眼差しは美しく、隙がない。今日は髪をお団子のように小さくまとめている。
沢口がシシリーに依頼したのは、各テーブルに飾る小さな花籠。そしてフロアのメインを飾る大きな生け花だ。それこそ展覧会にでも出すような、かなり大掛かりなもの。
それほどの依頼なので搬入する花の量も種類も相当で、今日はシシリーの従業員総出で来ているらしい。作業着のような格好をした3人の男達が葉純の指示を受けてテキパキと動き回っている。
おかげで葉純がなかなか一人になってくれない。食事に誘うチャンスがない。
(ダメだ・・・仕事に戻ろう)
いったん諦め、事務室へと戻る。
市ノ宮の仕事は会場準備だけではないのだ。机の上に溜まっている伝票と睨み合わねばならない。
いつものようにパソコン画面に向かい、時計を見るのを忘れ始めた頃。
シシリーの従業員が一人、事務室へやって来た。
「生花の搬入が終わりましたので、ご報告に伺いました」
キャップを脱いで、やけにきっちりとしたお辞儀をする。
「あ、そ、それはどうも」
顔を上げた彼が相当な美形だと気付いて少したじろいだ。ICHIYOUの花形講師二人に負けず劣らず・・・いや、作業着姿でこのレベルなのだと考慮すると、それ以上かもそれない。身長もかなり高いし、モデルか何かだと言われてもすんなり納得できそうだ。
「私共はお先に失礼致しますが、店長はあの大物の仕上げがありますので、もう暫く残って作業させていただきます」
「え? あ、そ、そうなんですか。お、お疲れ様でした」
ついつい呆然と観察していた市ノ宮は慌てて頭を下げた。そしてハッとする。頭の中で男の言葉を反芻し、また緊張が高まってきた。
葉純は今一人だ。誘うなら今しかない。
男が立ち去るのを見送り、更には聞き耳を立てて事務室の裏手にある駐車場からシシリーの車が居なくなるのを確認してから、市ノ宮は意を決して葉純の元へ向かった。
(自然に自然に、“お疲れ様です。もし良かったらこの後打ち上げがてらお食事でも”、“お疲れ様です。もし良かったらこの後打ち上げがてら・・・” )
早歩きで会場に向かうまでの間、ブツブツと誘い文句の練習をする。
葉純はどんな反応をするだろうか。やはり断られるだろうか。
(レストランの予約をしてあることは先に伝えるべきなんだろうか? 伝えた方が成功率は上がるような・・・いや、しかし何だか恩着せがましいというか、思い上がっている感じがするような・・・)
悶々と悩んでいたら、あっという間に目的地に着いてしまった。
(よ、よし、行くぞ)
深呼吸をしてから、音を立てないようにゆっくりと扉を開ける。集中しているところを邪魔してはいけないだろうという気遣いだったのだが、どうやら葉純は休憩中らしかった。それも、一人ではなく・・・
「今日は一段と、体中から花の匂いがするな」
先程帰ったと思っていた男が葉純を抱きしめている。首筋に口付けながら、慣れた手つきで結わえた髪を解く。
「あ、こら、まだ仕事中だってば」
葉純はぱらぱらと落ちてくる髪に困ったような顔をして男を嗜めた。身体を離させようとするが、男は少しも従おうとはしない。
「ちょっと息抜きも必要だろ? ほら」
「だめ・・・」
離れるどころか、唇を求めている。葉純は抵抗をしているようにも見えたが、軽い口付けならすぐに受け入れた。触れるだけのキスを何度か交わし、男の手が葉純の腰を撫でる。
「ちょっ・・・ホントにこれ以上は・・・」
「はいはい、分かってるって」
上擦った声での制止に、男はようやく手を止めた。
「続きは帰ってからたっぷりな」
最後とばかりにまた葉純を抱きしめる。柔らかそうな葉純の髪を撫でながら、男は射貫くような視線でこちらを捉えた。
「・・・っ・・」
不敵な笑みを向けられ、市ノ宮は慌ててその場から逃げ出した。
見せ付けられた二人の関係に、ただただ呆然とするばかりだ。
辛いとか、悲しいとか、はたまた悔しいとか、そんな感情もまだ追い付いてこない。とりあえずは失恋したのだという事実と、この後のレストランの予約はどうしようかという、そんな冷静極まりない事柄が浮かんだ。
「あ、ちょっと、市ノ宮! あんた仕事ほっぽって何やってんのよ?」
事務室に帰るなり沢口に出くわす。彼女は来賓客の受付もこなす予定なので、いつもよりも格段にめかしこんでいる。
「・・・・・・沢口さん。今日終わった後、食事行きませんか? やけ酒、付き合って下さい」
ボソボソとうわごとのように口から言葉が漏れていく。
「やけ酒って・・・い、いいわよ・・・」
市ノ宮の廃人振りに同情したのか、沢口は些か引きつりながらも誘いに乗ってくれた。
この食事がきっかけとなり、二人は二年後めでたくゴールインすることになるのだが・・・それはまた別のお話。
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