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「君の国じゃ、別に異常なことじゃないんだって?
『一夫多妻制』? 」
「うん、一応ね。
人数の上限とか持った奥さんと子供を全部養えるかとかいろんな条件はついてくるんだけど」
今でこそウルティモは広大な領地に隣接した他国との交易で富み栄えているが、少し以前までは国土の大半が砂漠ということもあり、人々はギリギリの生活を強いられてきた。
そんな中で子孫を残して行く為に作られた制度だと教えられて育った。
皇帝の後宮には更に確実に世継ぎを残すため、それらの規制さえ払われる。
「だったら本当に奥方様ごと連れて行けばいいのに」
他人事だからだろう。
さらりとアベルは言う。
「それができたら、顔を見られた翌日にも帰国できてるわ」
ため息混じりにリーゼロッテは呟いた。
「そもそもさ、どうしてウルティモの皇女様自ら花婿探しにきてる訳?
この国とウルティモの間じゃ、エクシャーナ皇帝がひと言、『婿にくれ』って言えば断れない力関係のはずなんだけど」
アベルはわからないといいたそうに首を傾げる。
「うん。お相手が既婚者じゃなければね。
オズワルド陛下も言って下さったわ。
ウルリヒ様とヴェルナー様意外なら、誰でも明日にでもウルティモに向かわせますって」
「だけど、君はどうしてもヴェルナー殿下が良かったわけだ」
リーゼロッテはその言葉に頷く。
「そしたら、お父様がね。
『そんなにあの男が欲しいのなら自分で口説いて連れてくるといい』って出国許可を下さったの。
この国の宗教では一夫一婦制だけど、帝国の宗教なら一夫多妻制を認めているから重婚が可能だって。
ただし殿下を説得して改宗までしていただくことが絶対の条件だけど。
もしヴェルナー様がわたしのことを思ってくださって、わたしの為に改宗してくださるのであれば婿に迎えると。
そう仰ってくださったの。
もっとも、お父様には他に思惑があったみたいだけど」
それだけ話してリーゼロッテはようやく顔を上げる。
「それで、奥方様には聞いてみた訳? 」
「そんなことできるわけないじゃない」
リーゼロッテは慌てふためいて首を横に振る。
「どうして?
もしかしたらヴェルナー殿下をその気にさせるより早いかも知れないよ?
それで、奥方さまから殿下を説得してもらうってのも方法の一つだと思うんだけどな? 」
「無理よ、そんなの。
そもそも宗教が全く違うんだもの。倫理観だってもね。
夫婦は男女一人ずつが当たり前ってところでずっと育って来た方に、いきなり『わたしの国の後宮に来て旦那様を共有しませんか? 』なんて言える訳ないもの。
きっとドン引きされちゃう。
それに、ね…… 」
「それに? 」
「いくら神様が許したって、わたしが嫌なの。
できることなら旦那様にはわたし一人を見ていて欲しい。
我儘だってわかってるけど……
わたし以上にきっとアーデルハイド様だってそう思ってるわ」
リーゼロッテは視線を泳がせた。
幼い頃、まだ健在だった頃の母の姿が脳裏に浮かぶ。
いつも穏かで優しい母だったけど、周囲を取り巻く妃達も皆優しかったけど。
父帝が別の部屋に入って行く日の母はとても淋しそうな瞳をしていたのを思い出す。
「そうでもないかも知れないよ? 」
少年はやんわりとした笑顔を向けてくれた。
「とにかく、自分の頭だけで考えてないでさ、やってみたら?
もしかしたら、面白がって乗ってくれるかも知れないしさ。
さてと、僕はそろそろ行かなくちゃ」
長いこと続いていた晩餐もようやく終わったのだろう、先ほど出てきたダイニングの辺りが少しざわめいている。
それを耳に入れたようにアベルがリーゼロッテから距離を取った。
「じゃ、またね。
がんばって、皇女様」
軽い笑い声を残して少年は庭の奥に消えていった。
◇◆ ◆4◆ ◆◇◆
「ね? いいでしょ、ニオベ」
先ほどまで傾けていた紅茶のカップを戻しながら、リーゼロッテは何度目かの同じ言葉を乳母に突きつけた。
「いけません。
何度、仰っても無駄ですよ。
先日の騒ぎを覚えていますか? 」
乳母の女はこれ見よがしに眉を吊り上げて見せた。
「お願い。
こんな機会もう二度とないのはニオベだって知ってるでしょ。
せっかくヴェルナー様が連れて行って下さるって言ってるのに」
「そこが問題です。
それでは殿下にご迷惑をかけてしまうことになりますわ」
「じゃ、ニオベが連れて行ってくれる?
わたしは相手が誰でも構わないのよ」
本当はヴェルナーと一緒に時間を過ごしたいところだけど、街の視察は話が別だ。
先日、産まれてはじめてみた光景が頭の中なら放れない。
様々な人と物の溢れたあの生き生きとした光景は、例え相手がニオベでもぜひもう一度見ておきたい。
国に帰り父の庇護下に戻ったが最後、もう二度と後宮から出してもらえないのは目に見えている。
「それともミス・スワンに頼もうかな?
ニオベより融通利きそうだし」
わざとポツリと言ってみる。
「姫様、よぉくお考え下さい。
皇女様の外出となると、ただご自身がお出かけするだけでは済まないのですよ。
警護の人間だけでも何人動くか。
その中には結局殿下方のどなたかがお入りになるでしょう。
どれだけこちらの国王陛下のご迷惑になるか……
ミス・スワンだって困ってしまいますよ」
「そんなのわかってるわ。
だからわたし、今まで街に出たいって言わなかったでしょ?
せっかくヴェルナー様が連れて行って下さるって仰ってくださっているのに……
ね? お願い。
そしたらもうこんな我儘言わないから! 」
リーゼロッテは乳母の顔を見つめた。
「……仕方ありませんね」
根負けしたように、ようやく乳母は頷いた。
「ありがとう! 」
リーゼロッテは満面に笑みを浮かべると女に抱きつく。
「また、お食事どころか晩餐会でも欠席などと言い出されては、国王陛下に余計なご迷惑が掛かりますからね」
大仰にため息を付いて乳母は呟く。
リーゼロッテが機嫌を損なうとどうなるか身にしみている乳母が最終的には折れざるを得ないのは計算済みだ。
「あら、姫様はまた我儘ですか? 」
その光景を目にドアを開けた家庭教師に言われた。
「今度は何のおねだりですか? 」
苦笑しながら訊いてくる。
「お帰りなさい! ミス・スワン。
お里帰りはどうだった? 」
夕べから休みを取っていた家庭教師にリーゼロッテは顔を向けた。
「ありがとうございました。
久しぶりにゆっくりさせていただきましたわ」
家庭教師は満足そうな笑みを浮かべた。
「そうそう。姫様、また届いていましたよ」
手にしていた何通過の封筒を家庭教師はリーゼロッテに差し出した。
「また、何かの招待状のようですけど、いかがいたしましょう?
いつものようにお断りになりますか? 」
リーゼロッテに封書を差し出しながら訊いてくれる。
リーゼロッテがこの国に滞在している間に、大国の姫君と顔見知りになっておこうと考える貴族達から夜会や茶会などの招待状が引きも切らずに届けられていた。
せっかくの招待はありがたいが、数が数だけに全てをこなせる量ではない。しかも城外へ出るとなると先ほど乳母が言った通り、警護の人間などこの国の国王にも迷惑が掛かってしまう事態になる。
そんなこんなで、基本城での行事意外は全て断ることにしてあった。
「そうね、そうして…… 」
手渡された封書の封も切らずに差出人の名前だけ確認していたリーゼロッテの手がふと止まる。
白地にエンボスなどで花の模様をつけ封蝋の押された誰からきたのか見分けのつかなくなりそうなほどに揃った封筒の中に、一つだけ色味の違うものがある。
優しい緑の地に青い小鳥の止まった封書は殊のほか目を引いた。
それをとりわけ残りをミス・スワンに手渡すとリーゼロッテはそっと封を開けた。
取り出された封筒と同じ緑色のカードにはたどたどしい大きく不ぞろいの文字でピクニックへのお誘いがしたためられていた。
『一夫多妻制』? 」
「うん、一応ね。
人数の上限とか持った奥さんと子供を全部養えるかとかいろんな条件はついてくるんだけど」
今でこそウルティモは広大な領地に隣接した他国との交易で富み栄えているが、少し以前までは国土の大半が砂漠ということもあり、人々はギリギリの生活を強いられてきた。
そんな中で子孫を残して行く為に作られた制度だと教えられて育った。
皇帝の後宮には更に確実に世継ぎを残すため、それらの規制さえ払われる。
「だったら本当に奥方様ごと連れて行けばいいのに」
他人事だからだろう。
さらりとアベルは言う。
「それができたら、顔を見られた翌日にも帰国できてるわ」
ため息混じりにリーゼロッテは呟いた。
「そもそもさ、どうしてウルティモの皇女様自ら花婿探しにきてる訳?
この国とウルティモの間じゃ、エクシャーナ皇帝がひと言、『婿にくれ』って言えば断れない力関係のはずなんだけど」
アベルはわからないといいたそうに首を傾げる。
「うん。お相手が既婚者じゃなければね。
オズワルド陛下も言って下さったわ。
ウルリヒ様とヴェルナー様意外なら、誰でも明日にでもウルティモに向かわせますって」
「だけど、君はどうしてもヴェルナー殿下が良かったわけだ」
リーゼロッテはその言葉に頷く。
「そしたら、お父様がね。
『そんなにあの男が欲しいのなら自分で口説いて連れてくるといい』って出国許可を下さったの。
この国の宗教では一夫一婦制だけど、帝国の宗教なら一夫多妻制を認めているから重婚が可能だって。
ただし殿下を説得して改宗までしていただくことが絶対の条件だけど。
もしヴェルナー様がわたしのことを思ってくださって、わたしの為に改宗してくださるのであれば婿に迎えると。
そう仰ってくださったの。
もっとも、お父様には他に思惑があったみたいだけど」
それだけ話してリーゼロッテはようやく顔を上げる。
「それで、奥方様には聞いてみた訳? 」
「そんなことできるわけないじゃない」
リーゼロッテは慌てふためいて首を横に振る。
「どうして?
もしかしたらヴェルナー殿下をその気にさせるより早いかも知れないよ?
それで、奥方さまから殿下を説得してもらうってのも方法の一つだと思うんだけどな? 」
「無理よ、そんなの。
そもそも宗教が全く違うんだもの。倫理観だってもね。
夫婦は男女一人ずつが当たり前ってところでずっと育って来た方に、いきなり『わたしの国の後宮に来て旦那様を共有しませんか? 』なんて言える訳ないもの。
きっとドン引きされちゃう。
それに、ね…… 」
「それに? 」
「いくら神様が許したって、わたしが嫌なの。
できることなら旦那様にはわたし一人を見ていて欲しい。
我儘だってわかってるけど……
わたし以上にきっとアーデルハイド様だってそう思ってるわ」
リーゼロッテは視線を泳がせた。
幼い頃、まだ健在だった頃の母の姿が脳裏に浮かぶ。
いつも穏かで優しい母だったけど、周囲を取り巻く妃達も皆優しかったけど。
父帝が別の部屋に入って行く日の母はとても淋しそうな瞳をしていたのを思い出す。
「そうでもないかも知れないよ? 」
少年はやんわりとした笑顔を向けてくれた。
「とにかく、自分の頭だけで考えてないでさ、やってみたら?
もしかしたら、面白がって乗ってくれるかも知れないしさ。
さてと、僕はそろそろ行かなくちゃ」
長いこと続いていた晩餐もようやく終わったのだろう、先ほど出てきたダイニングの辺りが少しざわめいている。
それを耳に入れたようにアベルがリーゼロッテから距離を取った。
「じゃ、またね。
がんばって、皇女様」
軽い笑い声を残して少年は庭の奥に消えていった。
◇◆ ◆4◆ ◆◇◆
「ね? いいでしょ、ニオベ」
先ほどまで傾けていた紅茶のカップを戻しながら、リーゼロッテは何度目かの同じ言葉を乳母に突きつけた。
「いけません。
何度、仰っても無駄ですよ。
先日の騒ぎを覚えていますか? 」
乳母の女はこれ見よがしに眉を吊り上げて見せた。
「お願い。
こんな機会もう二度とないのはニオベだって知ってるでしょ。
せっかくヴェルナー様が連れて行って下さるって言ってるのに」
「そこが問題です。
それでは殿下にご迷惑をかけてしまうことになりますわ」
「じゃ、ニオベが連れて行ってくれる?
わたしは相手が誰でも構わないのよ」
本当はヴェルナーと一緒に時間を過ごしたいところだけど、街の視察は話が別だ。
先日、産まれてはじめてみた光景が頭の中なら放れない。
様々な人と物の溢れたあの生き生きとした光景は、例え相手がニオベでもぜひもう一度見ておきたい。
国に帰り父の庇護下に戻ったが最後、もう二度と後宮から出してもらえないのは目に見えている。
「それともミス・スワンに頼もうかな?
ニオベより融通利きそうだし」
わざとポツリと言ってみる。
「姫様、よぉくお考え下さい。
皇女様の外出となると、ただご自身がお出かけするだけでは済まないのですよ。
警護の人間だけでも何人動くか。
その中には結局殿下方のどなたかがお入りになるでしょう。
どれだけこちらの国王陛下のご迷惑になるか……
ミス・スワンだって困ってしまいますよ」
「そんなのわかってるわ。
だからわたし、今まで街に出たいって言わなかったでしょ?
せっかくヴェルナー様が連れて行って下さるって仰ってくださっているのに……
ね? お願い。
そしたらもうこんな我儘言わないから! 」
リーゼロッテは乳母の顔を見つめた。
「……仕方ありませんね」
根負けしたように、ようやく乳母は頷いた。
「ありがとう! 」
リーゼロッテは満面に笑みを浮かべると女に抱きつく。
「また、お食事どころか晩餐会でも欠席などと言い出されては、国王陛下に余計なご迷惑が掛かりますからね」
大仰にため息を付いて乳母は呟く。
リーゼロッテが機嫌を損なうとどうなるか身にしみている乳母が最終的には折れざるを得ないのは計算済みだ。
「あら、姫様はまた我儘ですか? 」
その光景を目にドアを開けた家庭教師に言われた。
「今度は何のおねだりですか? 」
苦笑しながら訊いてくる。
「お帰りなさい! ミス・スワン。
お里帰りはどうだった? 」
夕べから休みを取っていた家庭教師にリーゼロッテは顔を向けた。
「ありがとうございました。
久しぶりにゆっくりさせていただきましたわ」
家庭教師は満足そうな笑みを浮かべた。
「そうそう。姫様、また届いていましたよ」
手にしていた何通過の封筒を家庭教師はリーゼロッテに差し出した。
「また、何かの招待状のようですけど、いかがいたしましょう?
いつものようにお断りになりますか? 」
リーゼロッテに封書を差し出しながら訊いてくれる。
リーゼロッテがこの国に滞在している間に、大国の姫君と顔見知りになっておこうと考える貴族達から夜会や茶会などの招待状が引きも切らずに届けられていた。
せっかくの招待はありがたいが、数が数だけに全てをこなせる量ではない。しかも城外へ出るとなると先ほど乳母が言った通り、警護の人間などこの国の国王にも迷惑が掛かってしまう事態になる。
そんなこんなで、基本城での行事意外は全て断ることにしてあった。
「そうね、そうして…… 」
手渡された封書の封も切らずに差出人の名前だけ確認していたリーゼロッテの手がふと止まる。
白地にエンボスなどで花の模様をつけ封蝋の押された誰からきたのか見分けのつかなくなりそうなほどに揃った封筒の中に、一つだけ色味の違うものがある。
優しい緑の地に青い小鳥の止まった封書は殊のほか目を引いた。
それをとりわけ残りをミス・スワンに手渡すとリーゼロッテはそっと封を開けた。
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