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薔薇園のラプンツェル

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「うん、前よりずっと可愛い」
 肩よりやや低い位置で切りそろえられた髪のサイドを上げ、銀細工でできた花飾りを留めて、リディアは鏡の中のアネットに言った。
 ほとんどまとめられずに広げられたままの蜂蜜色の髪は室内の光だけでも以前以上に輝きを放つ。
「……アイリス様、実家に戻されたそうよ」
「そう、なんだ…… 
 悪いのはわたしなのに、可哀想なことしちゃった…… 」
 リディアにではなく、ポツリとつぶやく。
「何言ってるのよ。
 どうしてそうなるのかな? 」
「そりゃそうでしょ。
 わたしがサシャ様に対してうかつな態度を取らなければ、こんなことにならなかったんだもの」
 反省しているのに何故か責められて、アネットはようやく顔を上げる。
「ま、ね。
 それはわたしも認めるわ。
 だけどアイリス様があんなにサシャ様にこだわっていたなんて、わたしたち誰も知らなかったんだもの」
「うん。
 今回だってかなりごねて強引に来させてもらったみたい。
 これ以上きついお咎めがなければいいんだけど」
「もう、お人よしもいい加減にしなさいよ」
「だって、アイリス様の気持ちもわからないわけじゃないもの。
 わたしだって、お姉さまの傍にいたい一心で、無理言ってここにもぐりこさせてもらったんだし。
 相手が誰だっておんなじよ」
「それにしても、ねぇ…… 」
 リディアはそっと手を伸ばし、アネットの髪を掬い上げる。
 持ち上げられた髪はきらきらと光をはらみながらリディアの指をすり抜け零れ落ちる。
「こんなに短くなっちゃって」
 残念そうにため息をついた。
「髪だけで済んでよかったじゃないの」
 それに対して本人のアネットはけろりと言う。
「って、あんなにきれいだったのに」
「別に、伸ばしたくて伸ばしていた髪じゃないし。
 みんなが口をそろえて母様の形見だって言うから、切る機会をなくしてただけよ。
 毎日の手入れ面倒だったし、却ってさっぱりってところかな。
 ただね…… 」
 アネットは大きくひとつ息を吐くと、顔を曇らせた。
「お姉さまになんていえばいいのかなって…… 」
 それはリディアも同感だったらしく、返事はくれずに黙り込む。
 適当にそれっぽい理由なら沢山作れるが、それが通用するとは到底思えない。
「アイリス様の立場もあるから、一応、皆には口止めしてもらったんだけど。
 これだけはみたらひとわかりだもの。
 だけど、今回の騒ぎだけは絶対にお姉さまの耳には入れたくないし…… 」
「まさか、元の長さに伸びるまでお見舞いに伺わないって訳にもいかないものね」
 二人揃ってため息がこぼれた。
 
 
「え? 」
 アネットは、王妃の部屋の入り口に立つメイドの言葉が聞き取れずに聞き返した。
「ですから、申し訳ございませんが王妃様は御様態が悪く、お通しするわけには参りませんの」
 メイドは気の毒そうにもう一度言ってくれる。
「悪いって? どのくらい? 」
「どのくらいと申されましても、わたくしは主治医の先生からそう言付かっただけで、具体的なところまではお答えできません。申し訳ございません」
 メイドは困惑顔で頭を下げる。
「もしかしてわたしのせい? 」
 持っていた花が床に零れ落ちる。
「わたしがあんな…… あん…… 」
 きっと昨日の騒ぎが耳に入ったのだ。
 そのせいで王妃に心労をかけてしまって…… 
「どうしよう…… 」
 あまりのショックに言葉が出ない。
 視界がぼやけて傾いた。
「おっと」
 崩れそうになった身体を誰かに支えられ、アネットは床に崩れ落ちるのをかろうじて免れる。
「大丈夫か? 」
 体勢を立て直しながら、顔を上げるとそこにライオネルの顔がある。
 その背後にはサシャの姿も見てとれる。
「とにかく、ここじゃまずい。こっちへこい」
「ちょっと! どこへ…… 」
 何もわからないうちにその場所から引き離されることにアネットは抵抗して、足に力を込める。
「いいから来いよ」
 ライオネルはアネットの手をつかんだまま、大またに歩き出すと病室からはかなり離れた部屋に引き込んだ。
「お前な、あんなところで倒れて騒ぎになったら、王妃に余計心労かけると思わなかったのかよ」
「あ…… 」
「王妃様なら、心配することはないよ」
 アネットの取り落としていた花を抱えて続いて入ってきたサシャが言う。
「昨夜から少し熱がでて、まだ下がらないだけだって」
 アネットを心配させまいとするかのようにサシャは続けた。
「医者の連中に大げさに言ってもらった」
 ライオネルが付け加える。
「気に病まなくても昨日のことは王妃様の耳には入っていないよ。
 それもあるから、王妃様の部屋にはなるべく誰も入れないように僕たちが指示したんだ。
 口の軽い使用人もいない訳じゃないから。
 王妃と接する人間は一人でも少ないほうがいいでしょ? 」
「……ありがとうございます」
 冷静に淡々としゃべるサシャの声に、アネットはようやく平静を取り戻した。
「それと、昨日はアイリスが、ごめん。
 こんなことになっちゃって」
 サシャはアネットの髪に視線を向けた。
「大丈夫です。
 どこも怪我したわけじゃないし。
 ちょっと、びっくりはしたけれど…… 
 だからアイリス様を責めないであげてくださいね」
「アネットは…… 」
 言いかけてサシャは口をつむぐ。
「? 」
「アネットはあんなことされて、どうしてそう平静で居られるの? 」
 首をかしげたアネットに、搾り出すようにサシャは訊いた。
「アイリス様の気持ちに全く気がつかなかったわたしも悪いんだし」
 そう、今ならわかる。
 高貴な育ちの気位の高い令嬢から下過ぎる身分のアネットに声をかけてきた訳が。
 ずっとサシャのことが気になっていたのだ。
 そのサシャが興味を持ったのがアネットで、だからアネットを通してでもサシャと繋がって居たかったと。
「自分の大好きな人が遠くへ行ってしまいそうになってたら、無理にでもつなぎとめておきたいし、それが無理なら最後の最後の時間まで傍に居たいって気持ち。
 わたしも一緒だからわかるの。
 わたしだってお姉さまの傍に少しでも長く一緒に居たいって、無理を承知でお願いしてここにおいていただいているんだもの。
 だから、サシャ様。
 本当はわたしからお願いできるようなことじゃないんだけど、もう少しの間だけアイリス様の傍にいてあげることはできませんか? 」
 サシャを真っ直ぐに見つめてアネットは言った。
「…… 」
 サシャはそれに返事をしなかったが、代わりにつらそうに顔をゆがめアネットから視線をそらせた。
「ところでお前、王妃のところに来たんだろう? 」
 そのまま止まってしまいそうな時を強引に動かそうというかのように、突然ライオネルの声が割って入った。
「話はともかく顔を見るくらいならできると思うが、どうする? 」
 ライオネルは王妃の部屋の方角に視線を送りながらアネットに言ってくれた。
「いいです、今日は戻ります。
 お姉ちゃん、これ以上疲れさせたらいけないし」
 肩に手をやり、短くなった髪に触れる。
「これの都合のいい理由、思いつけていないし」
 ついでライオネルの顔を見上げアネットは言うと、テーブルの上に置かれた花を抱えあげた。
「じゃ、失礼します」
 まだ黙ったままのサシャを残し、軽く頭を下げて部屋を出た。
「待てよ」
 歩き出したアネットをライオネルが追ってきた。
「一緒に行くから」
 引き止めるように腕を取る。
「大丈夫です。一人でも戻れますから」
 一応遠慮してみるが、ライオネルは足を止めようとはしなかった。
「どうせ兵舎へ戻るのに方向が一緒だから」
 わずかに背後のサシャへ視線を走らせて、ライオネルは言う。
「……聞き分けがいいんだな? 」
 ゆっくりと廊下を歩きながらライオネルがつぶやいた。
「もっと、泣いたりわめいたりされるかと思った」
「だって、お医者様がそういうんなら仕方がないもの。
 わたしがここへきたことでお姉さまにも負担を掛けていることくらいわかってるから」
「いや、その髪…… 」
「そのことは気にしないでください。
 本当になんとも思ってないの。
 ただなんとなく伸ばしていただけだし、却っていい機会だったかなって」
「だったら」
 不意にライオネルの手が伸び、アネットの頬に手を伸ばす。
「次に王妃に会う時までにはこの顔を何とかしておくんだな」
「わたしそんな顔…… 」
「してないってか? 
 部屋に戻ったら鏡を見てみろ」
 ライオネルはアネットの頬を軽く引っ張った。
「何するんですか! 」
 急に乱暴な行動をとられ、アネットは身体をできるだけ男から離そうと身をよじる。
 それに対してライオネルは手を離すと、うっすらと笑った。
「慣れない場所のあっちと、こっちで大変だろう。
 その上この騒ぎだものな。普通の顔していろって言うほうが無理かもしれないが。
 でもな、王妃の前では笑顔でいろ。お前はそのためにここへ来たんだろう? 」
「うん…… 」
「お前知ってるか? 部屋にきたお前の笑顔が輝いているときには王妃も機嫌がいいんだよ。
 何かあったら相談に乗るから、いつでも声をかけてくれ」
「ありがとう。そういってくれるだけで心強いです」
 アネットはライオネルの言葉にありきたりの礼を述べた。
 実際、こうしてライオネルと話すことなど、ここを出てしまえばたぶんもうないだろう。
 そんな思いが頭の片隅をよぎる。
 すると同時に胸がぎゅっと締め付けられるような気がした。
 中央の大きな階段を下り、別宮へと続く渡り廊下への出口でアネットは足をとめた。
「ありがとうございます。じゃ、また…… 」
「部屋まで送る」
「ううん」
 アネットはかぶりを降る。
「ありがたいけれど、他の皆さんに悪いから。
 あ、これよかったら差し上げます」
 アネットは手にしていた真紅のオールドローズをライオネルに差し出した。
「お姉さまのお部屋にと思って、庭師の方に切っていただいたんだけど、体調の優れない人には花の香も害になるって聞いたことあるし。別殿には飾るところもないし」
「確かに、あそこはあちこちから届けられる花でいっぱいだよな」
 その光景を思い出してかライオネルは苦笑した。
「じゃ、もらっとく」
 アネットは差し出されたライオネルの手に花束を押し付けると、駆け出した。
 
 

 
 廊下を歩いていると、部屋の前に数人の少女が居るのが見えた。
 何故かアネットの部屋を気にしているようだ。
 普段ならきちんと閉まっている部屋のドアが開いていた。
「? 」
 首をかしげながらその脇を通り過ぎると部屋に入る。
「お帰りなさいアネット。お客様よ」
 リディアがいつものように明るい声で言うと、部屋の中央へ振り返った。
 そこに置かれた椅子に軽く腰掛け、ティーカップを口に運ぶ途中の人影。
「ダニエル様! 」
 予期せぬ来客にアネットは思わず声が大きくなる。
 部屋のドアが開いていた理由がわかった。
「ごめん、リディアありがとう! 」
 せっかく尋ねてきた友人の兄を追い返すことも廊下で待たせることもできず、部屋に通してお茶を出しておいてくれたリディアに礼を言う。
「お待たせしました。何かご用ですか? 」
 アネットは首をかしげる。
「ああ、預かり物を届けにきた」
 そういってダニエルは自分の傍らに置かれた大きな箱を差し出す。
「アイリス様からだよ」
「これを? アイリス様が? 」 
「手紙も預かっている」
 ダニエルはアネットに封筒を差し出した。
「でもどうしてダニエル様が届けてくれたの? 」
 手紙を受け取りながらアネットは首をかしげた。
「アイリス様の従者から言付かった。ここは、男は殿下方以外は親族しか入れないことになっているから。
 メイドに届けさせろって言ったら、
『それじゃ誠意が伝わらないから』って押し付けられた」
 少し憮然としながらダニエルは言う。
「わざわざ、ありがとうございました」
 礼を言って、アネットは受け取った手紙の封を恐る恐る開けた。
「なんて? 」
 内容が気になっているのだろう、リディアが訊いて来る。
「うん、『ごめんなさい』って。
 謝っても取り返しのつくことじゃないけど、謝りますって。
 それからわたしのお下がりだけどよければ着てくださいって」
 アネットはダニエルの前に置かれた箱に目をやると、手にしていた手紙をその場に置く。
 箱を開けると、ふんわりとした桜草色の光がこぼれる。
「これって、ドレスよね? 」
「どうみてもドレスだろう? 」
「しかも、お下がりっていってたけど、これ新品みたいよね」
 箱の中をかわるがわる覗き込んで口にした。
「でも、アイリス様のドレスじゃアネットに着られるように直すのは無理があると思うのよね」
 リディアは首をかしげながらドレスを取り出しアネットの肩に当てる。
 ドレスは丈や幅などどれをとっても、アネットにぴったりだ。
「うん、かわいい。
 王妃様のドレスもきれいだったけど少し大人っぽかったでしょ? 
 アイリス様の見立てのほうが今のアネットの雰囲気に合っていると思うわ。
 もしかして、アネットのためにわざわざ仕立ててくれたのかもしれないわね」
 リディアがにっこりと微笑んだ。
「どうしよう、こんな高価なものもらえるわけないわよね」
 アネットは戸惑った。
「お前がその髪のこと気にしていないのなら。
 アイリス様を許すつもりがあるんならもらっておけよ」
 アネットを見つめて淡々とダニエルは言う。
「せっかくあつらえて作ってくれたんだ。
 無下に返したりしたら、『まだ怒ってる許さない』って意思表示になる」
「ん、ダニエル様がそう言うなら…… 」
 アネットはうなずいた。
「じゃぁな、俺は確かに届けたからな」
 ダニエルは立ち上がると部屋を出る。
「それから、サシャ殿下が例の庭ガーデンパーティーに使っていいって伝えてくれって」
 部屋の入り口で思い出したように言った。
 
 
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