たとえばこんな、御伽噺。

弥湖 夕來

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薔薇園のラプンツェル

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 「レディ・アレクサンドリーヌ」
 柔らかな声でふんわりと名前を呼ばれ、渡り廊下の途中でアネットは足を止めた。
「今日は王妃様のところに届ける花はいらないの」
 いつもの庭師の男に穏やかに話しかけられ、アネットは戸惑った。
「ん? 」
「あの…… 、ごめんなさい。
 まさかハーラン王子様だったなんて知らなくて、わたし…… 」
 アネットは戸惑った声を上げる。
「そっか、ばれちゃったか。
 気にする必要はないよ。黙っていたのはこっちだし。
 でもこのことは、他のお嬢さん方には内緒にしておいてくれると助かるな。仕事がはかどらなくなってしまうから」
 渡り廊下のあちこちを歩く少女たちに目を配りながら男は言った。
「でも、どうして王子様がお庭の手入れなんて? 」
「気になる? 」
「ええ。だって、ちゃんと専門の庭師の方がいるみたいなのに」
 アネットは庭の向こう側で作業に没頭するもう一人の初老の男に視線を送る。
「まあ、いろいろとね。
 花は手をかけてあげればあげただけきれいに咲いてくれるから。
 子供の時に興味本位で庭師の仕事に手を出したら、やめられなくなった。
 それにね。
 造園はなかなか奥が深いんだ。他にも通じる学ぶべきことがたくさんあるんだよ」
「のめりこんだのは兄さんだけじゃないよ」
 新しい男の声に振り返ると、サシャの姿があった。
「おいで、いいもの見せてあげる! 」
 サシャは急に手をとるとアネットを庭に引き出した。
「兄さん、アネットにならいいよね? 」
 サシャの言葉にハーランが頷く。
「え? あの、どこへ? 」
「いいから、こっち! 」
 戸惑うアネットをそのまま、庭の奥へと引っ張ってゆく。
「じゃ、ハーラン様また」
 挨拶もそこそこにその場を離れることになってしまった。
 別殿を回り込み、普段アネットたちが目にすることのない場所に塀と高い生垣で囲った一角が見えた。
 その門を真っ直ぐくぐって、サシャはようやく手を離した。
「ついた、ここだよ」
「ここ…… 」
 周囲を見渡してアネットは言葉を失う。
 生垣に囲まれ今までの城の庭と区別されていたが、そこもまた手入れの行き届いた庭園。見事に刈り込まれた生垣に、整形された幾重ものアーチがそこここに絶妙なバランスで点在する。
 そのほとんどに色とりどりのバラが咲き誇り芳香が鼻をくすぐる。
「ステキ…… お城にこんなところがあったなんて…… 」
 思わず声がこぼれる。
「僕と兄さんで造ったんだ。
 僕が設計して兄さんが主に植物を育てて…… 」
「何か、現実じゃないみたい」
 つぶやくアネットにサシャはくすりと笑みをこぼす。
「アネット、そのまま真っ直ぐ前を見ていて。ちょっとそこから動かないでね」
「え? わっ…… なに? 」
 不意に周囲のあちこちから水が噴出してしぶきとなって庭全体に広がる。
 それに驚いてアネットは慌てた声を上げた。
「大丈夫、今の場所を動かなければ濡れないから。
 それより前少し上見て! 」
 促されて視線を動かすと、咲き誇る花をバックにあちこちに小さな虹がかかっていた。
 ただでさえ美しい庭に、より幻想味が増す。
「まるで、フェアリーテイルの世界に迷い込んだみたい…… 
 この花陰に妖精とか潜んでいそう」
 それ以上は言葉が出ない。ただただため息だけが何度も続く。
「ね、髪解いてみて」
「髪? 」
「そう、早く」
 言われるままに結んでいたリボンを解く。
 折りよく吹いた風が、アネットの蜂蜜色の髪を広げ舞い上げる。
 それは自ら光を放つかのように輝いた。
「やっぱり絵になるね。
 ラプンツェル」
 サシャが満足そうに微笑んだ。
「絵、ですか? 」
 何が起こっているのかわからずに、アネットは戸惑いながら訊いた。
「そう。
 アネットの髪最初に見た時から思ったんだ。
 アネットがここに立ってくれたら完璧な『妖精の庭』ができそうだなって」
「わたしが? 」
「今なら、アネット、本当のラプンツェルに見えるよ? 」
「嬉しいけど、だったら、わたし塔の中に閉じ込められちゃうじゃないですか。
 それは、やだなぁ…… 」
 額に掛かる髪をかき上げながらアネットはうっすらと頬を染める。
 正直、アネットの容姿をほめてくれる人などめったにいなかったから、その言葉だけでなんだか気恥ずかしい。
「こんなところでガーデンパーティーとかお茶会とかできたらいいですよね」
 なので、わざと話題を逸らす。
「ガーデンパーティー? 」
 サシャは少しだけ眉根を寄せた。
「あのね、レティシア夫人の課題で、
『お茶会とか、パーティーとか自分で企画してお客様をおもてなししましょう』
 って言うのがあって、
 あ、強制じゃないんだけど、
 ここならガーデンパーティーにぴったりだなって、今ふっと思ったの。
 だって、こんなにきれいなんだもの。
 秘密にしておくの勿体無いし。
 なにより、きれいな女の子がもっと沢山いたほうがより華やかになると思うの。
 見た目も音的にも。
 もちろん、サシャ様やハーラン様がお嫌でなければの話だけど」
「アネットってば…… 」
 サシャは声を上げて笑い出した。
「? 」
「おいでよ。こっちに兄さんの交配した珍しい色の薔薇がある。
 アネットの髪に挿したら似合うと思うんだ」
 サシャはもう一度アネットの手をとった。
 
 
 
「あら? 」
 部屋に戻るとリディアが声をあげた。
「ステキな香りね。バラみたいな。
 アネット香水嫌いじゃなかったっけ? 」
「わかる? さっきバラの中にいたから」
「ああ、王妃様のところに持っていったお花? 」
 晩餐の為の髪を整えながらリディアは言う。
「そういえば、このお城のどこかにバラ園があるんですって」
「バラ園? 」
「そう。
 女の子たち捜していて、わたしも訊かれたんだけど、どこにあるか誰にもわからないの。
 アネットなら、毎日のように庭師さんからお花もらっているから知ってたりして」
 
 あのお庭秘密だったんだ。
 よかったのかな? わたしなんかが教えてもらって。
 ガーデンパーティーとかもしかして悪いこと言ってしまったかな?
 
 リディアにわからないようにこっそりとつぶやいた。
「そうそう、アネットにこれ届いていたわ」
 リディアはテーブルの上においてあった一通の封筒を差し出した。
「なぁに? またお家からの手紙? 」
 封蝋にアネットの家の封印が押されている分厚い封筒を見てリディアが言った。
「ほとんど毎週でしょ? しかもその厚さって…… 」
 アネットのお父様って、本当に心配性なのね」
「まぁ…… ね」
 アネットはその言葉を曖昧にごまかすと、とりあえず封を切る。
「う~ 」
 しばらくその数枚の書類に目を通していたが、やがて顔を上げ、唸り声を上げた。
「どうかして? もしかしてお説教とか? 
 あ、首尾よくやってるかとか様子を聞いてきたんでしょ? 
 いやよね、お父様たちってデリカシーなくって」
 アネットの唸り声に読んでいた本から顔を上げリディアが言う。
「……ねぇ、ここって経営学の講義ないわよねぇ」
 うめくように言ってみる。
「経営学? どうしてそんなもの」
 リディアは首をかしげた。
「うん、ちょっと、ってか、なんでもない」
「アネットの向学心には頭が下がるけど。
 ここでやっている講義、乗馬とピアノ以外全部出て、挙句他の事まで勉強したいわけ? 」
「ん、まぁ、そんなとこ。ほらわたし歴史とかの授業物足りないし、もう少し別のこと知りたいなぁって」
「だったら書庫に行ってみたら? 
 ここの書庫は結構蔵書が充実しているんですって。
 教えてもらうことはできないけど、自習くらいならできるかも知れないわよ」
 リディアのその言葉にアネットの脳裏にあの光景が浮かび上がる。
 書庫で本を開いていたシルフィードの周囲に積み上げられていたのは確か…… 
「ちょっと出てくるね」
 アネットは手紙を手に部屋を出た。
 
 焦る足を押さえてできるだけ平静に廊下を歩き、アネットは書庫のドアをノックした。
「どうぞ」
 部屋の中からは先日の穏やかな声が返ってくる。
「あの、わたしに経営学教えてください」
 アネットはドアを開けると同時に言った。
「経営学って、何を? 急に…… 」
 思わず立ち上がったように呆然としながら立ち、シルフィードがアネットに向かいつぶやく。
「あの…… 駄目ですか? 」
 それっきり何も言ってくれないシルフィードにアネットはおずおずと訊いてみる。
「いや、駄目って訳じゃ…… 」
 男の声は明らかに戸惑っている。
「だったらお願いします」
 アネットは思い切り頭を下げた。
「驚いたな…… 」
 男はひとつ息を吐く。
「『経営学』なんてここに集まっている普通のお嬢さんには無縁のはずですよ? 
 そんなもの学んで何をしようって言うのですか? 」
「それは…… 」
 アネットは口ごもる。
「いいかい、そこに居たかったら絶対にばれるんじゃないぞ」
 ここに入る直前、そう言ったトーガス伯爵の言葉が脳裏にはっきりよみがえる。
「言えない事情というものですか」
 ポツリとシルフィードがつぶやくと探るようにじっとアネットの顔を見つめた。
 でも、せっかく見つけた教師の宛だ。逃すのは悔しい。
 アネットもまた男の顔を真っ直ぐに見た。
「いいですよ」
 しばらくしてシルフィードは根負けしたように、おもむろに視線を逸らすとため息混じりに答えた。
「そんな真剣な顔した君を断ったら、逃げているように思われるでしょう。
 それは心外ですし。
 ただし僕が教えられるのはホンの基礎だけですけどね」
「ありがとうございます」
 アネットはもう一度頭を下げた。
 
 
 
「何? これ…… 」
 ダンスのレッスンの時間、ボールルームに集まった人数にアネットとは唖然とする。
 いつもなら、暇をもてあましたアネットを筆頭に決まった顔ぶれが数人いるだけなのだが、今日はここに来ている令嬢のほとんどが集まっている。
 しかも、なぜか着飾って。
「今日のレッスンのパートナーを王子様が勤めてくださるって噂が広まったのよ」
 やはりめったに出席したことのない、アイリスがひょっこり顔を出す説明してくれる。
「もしかしてアイリス様も? 」
「だって本番の舞踏会で踊れるとは限らないもの。チャンスは有効に利用するものでしょう? 」
 確かに王子の数に対して多すぎる花嫁候補の数では、この先催される予定になっている舞踏会でも、ダンスを申し込まれる可能性は少ない。
「それに、こんなときでもなければそもそも自分の名前を売り込むことできないし」
 少し非難を含んだ目でアイリスはアネットを見上げた。
 そんな少女達と少し間を置いて、先ほどからダンス教師のセオドアを中心にして数人の若い男が打ち合わせを始めていた。
 ホールに響いていた少し興奮気味の少女達の声を耳にしながらアネットは、その中にライオネルの姿を探していた。
 先日お礼に行ったはずなのに、なぜか泣きじゃくって却って困らせてしまったことを謝りたかった。
 しかし、その姿はここにはない。
「でも、この分じゃ、今日のわたしたちのレッスンは無理みたいね」
 パートナーの数を数え、アイリスはため息をついた。
「サシャ様はいらっしゃらないし、セオドアお兄様相手にダンスしたってつまらないし。
 わたくし、お部屋に戻ります。
 ご一緒にどう? お茶でもいかが? 」
 アイリスの誘いに頷こうとした時、不意に人影がアネットの目の前をふさいだ。
「? 」
「お前は、踊らないのかよ? 」
 目の前に立った黒髪の男はそういいながらアネットの手をとるとホール中央に引き出そうとした。
「あの、でも順番が、ね」
 アネットは助けを求めてリディアに顔を向ける。
「階級順なので、わたしたちの順番は一番最後なんです。
 わたしの前にアイリス様が…… 」
「そんなの関係ないだろ。ってか、ご令嬢方みんなして王子殿下にご執心で誰がパートナーでもいいわけじゃなさそうだぜ」
 少女たちに取り囲まれた王子たちに男は視線を送った。
「なわけで、お前が相手してくれないと、何のために俺がここに連れてこられたのかわからなくなる」
 言いながら男は完全にアネットをホールの中央に引き出した。
 待ちかねたように、音楽の演奏が始まる。
 男はアネットの腰へ手を添えると、優雅にステップを踏み出した。
「それに、俺の相手がお前じゃ誰も文句は言えないんだよ」
 巧みにアネットをリードしながら男は耳元でささやいた。
「えっと…… それって、どういう? 」
 男の言葉の意味がわからずにアネットは戸惑った。 
 近衛の制服を着た黒髪のこの男には見覚えがある。
 確か、以前正殿へ入るのを止められた時助けてくれた人物だ。
「あの時はありがとうございました」
 思い出してあわてて言う。だがそれ以上は思い出せずにアネットは黙ってしまう。
「やっぱり」
 男は呆れたようにひとつ息を吐いた。
「この顔見て、何も思い浮かばないのかよ? 
 ショックというか、喜ぶべきか…… 」
「顔? だって、男性の顔をまっすぐ見るなんてそんな無作法なこと…… 」
「いいからよくみろよ」
 言われて、アネットは男の顔をまじまじと見つめる。
「まだわかんない? 」
 男はうっすらと笑みを浮かべた。
「じゃ、ヒント。この髪を白髪交じりの赤毛にして、少しふけさせたらどうなる? 」
 白髪の混じった赤毛といえば後見人のトーガス伯爵しか思い浮かばない。
 改めてじっと見ると、若い男の顔がその伯爵の顔と重なった。
 言われてみれば目元や口元の感じが似ている。
「なんかさぁ、親父に似てるって今まで言われて腹が立ったけど、ここまで親父との関連を見出してくれないのもちょっと複雑かも」
 男がつぶやく。
「あの、もしかして伯爵様の? 」
 間違ったら失礼だとは思いながらもアネットはおずおずと聞いてみる。
「やっとわかったか。ごきげんよう、俺の妹姫」
 男が笑った。
「い、妹って? 」
 突然の単語にアネットは戸惑った。
「いや、だってお前一応親父の養女ってことでここへきたんだろーが。
 親父の娘ってことは俺の妹になるんじゃないのかよ。
 だから、兄である俺が妹のダンスのレッスンに率先して付き合ってもなんら支障はないの。
 と、言うことで、以後俺のことは『お兄様』とでも呼ぶように」
「お、お兄さん? 」
「そ」
 男はにんまりと笑った。
「でもって、親父からの伝言。
『例の件、誰にもばれていないだろうな? 』」
 こっそりと耳元でささやく。
「……た、ぶ、ん」
 即答できない。
「なんだよ、その歯切れの悪い返事は? 」
「実は必要があってシルフィード様に経営学を教えていただくことになったんだけど。
 詳しい事情は説明していないから、たぶんばれてはいないと思うのよ。
 だけど…… 」
「相手が感づいているかも知れないってことか」
 男は大きなため息をついた。
「わかった。シルフ殿下には俺から釘をさしておく」
 そうこうしているうちに曲が終わる。
「ありがとうございました。お名前訊いていいですか」
 形式どおり向かい合って礼をしながらアネットは言う。
「おま…… 俺の名前知らないのか? 」
「ごめんなさい! わたし伯爵様にご子息がいたことも存じ上げなくて! 」
 まさかお世話になっている家の家族構成も知らなかったなんて、さすがにバツが悪くてアネットの顔に血が上る。それを見られまいと下を向いた。
「親父のやつ、何も言ってなかったのかよ? 
 俺一応ここでのお前の後見人代理押し付けられてんだけどな」
 呆れたように言って男はアネットの顔に手を沿え持ち上げた。
「ばか、顔真っ赤。
 お前が悪いんじゃないよ、口数の極端に少ないあの莫迦親父のせいだ。
 俺はダニエル。よろしくな」
 ダニエルは言いながらアネットの額にそっと唇を落とした。
 まるで本当の兄弟のような扱いにアネットは更に顔を赤く染める。
「んじゃ、次は、妹のご学友殿に…… 」
 壁際のまで手を引いてくれると、今度はそこで待つリディアの手をとった。


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