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光の湖畔編

第109話 分かる? 分かるか! (エタンセル視点)

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「兄貴、その子の背丈はおそらくでよいけど、具体的に何センチか分かる?」

「ああ、ちょい待ち」
 クレールが定規を持ってきて、俺の頭のてっぺんからコニーの頭がきそうな胸元まで測り、引き算して紙に書いて教えてくれた。

「多分150センチぐらいだ」

「分かった。じゃあこれも一応兄貴に聞くけど。
これこそ本当は正確に答えて欲しくない質問なんだけど。
彼女のブラジャーの大きさって分かる? これは身長と関係なく個人差があるから」

 クレールと二人顔を見合わせる。
 お前マジやめろや、その両手で凹み作んの……

「そんなん分かるか! いいか、そんなん気にしたこともねえし、まじまじ見たこともねえ。
くそっ、推測で言うからな。
でっけぇって印象は全くないな。かといって幼い子供みたいに必要じゃない程つるぺたじゃねえぞ、多分……」

「そっか少女だもんね、下着はそういう初等部のものが置いてある売り場に行ってみるわ」

……

 なんと言ったらいいのか分からず、やはりクレールと顔を見合わせてしまった。

「ああ。軍資金は明日朝イチ受け取れるよう送金の手配するから。口座番号をメールか手紙ですぐ送っといてくれ。
仕事だから領収書をしっかり貰えよ。ちょろまかすなよ、マジで仕事なんだ。
お前の取り分とか要望は別途俺が個人的に用意すっからキッカリ分けろ。じゃあ頼むな」

「下着、寝巻き、家着、スリッパもかしら? 作業着、エプロン、外用そとようお洒落着、靴はサイズを教えてくれたら手配するわ。それでいい?」

「おう。それと変装用の大きい眼鏡とキャスケットみたいな帽子と。上等な男の子みたいなかつらを。俺らみたいな焦茶がいい。作業着は男の子用も入れてくれ」

「……ふーん、それは兄貴の趣味?」

「馬鹿! 違ぇよ! 秘匿性が高い案件っつったろ?」

「あーはいはい、分かった、悪かったってば。よく分かんないけど、そういうものが必要なのね」

「お前しつこいから一応言っとくとだな、俺の趣味は首元が開いて肩が出てる女性服オフショルダーだ」

「ふーん、なんか微妙にやらしいわね。分かった。他に服の細かい希望や服に限らずその子の好きな物とかある?」

「エプロンは後ろを紐で結ぶんじゃなくて、ワンピースみたいにかぶるのが好きだっつってたな。
彼女、お菓子を作るのが得意なんだ。料理の腕前もすげえ。
あと、黒猫を飼ってたから大好きだって言ってたぞ。
は? マジか?! お前そんなん捨てずにまだもってたのか?
しかも実家じゃなくて、新婚家庭にまで持ってくって……。
チッ、全然似てねえよ。
は? これから口座番号と一緒に? 
まあ明日ちょっと外出する予定があっから、あれば便利ではあると思うけどよ」

「ふふ、私たち兄弟の思い出のニャンスキー、おふるだけど喜んでくれるといいわね。
それと……その子は、全体的にどんな感じの女の子なの?」

「彼女の印象か? んん……綺麗な顔立ちだと思うが……可愛いというか。ふわふわっとして、天から降ってきた雪のように純粋で無垢な感じの女性だ。
まあ小さな子供じゃねえから、実際はもっとしっかりしてんだけどな。
だからはかなげってのもまた違げえんだよ。
そうだなあ……
雪って言ったけど、冷たくなくてむしろあったけえの。
頬を真っ赤にしながら、雪だるま作りや雪合戦してはしゃぐような、面白可愛おもしろかわいい感じで。
しかも俺らと一緒に遊んどきながら、『風邪ひいたらダメよ』って、家に入った途端。心配して熱い甘いココアを作ってくれるような、母ちゃんっぽいとこもあってよ。
そんで自分で作っときながら、『すっごく美味しいね!』って嬉しそうにきらきら笑うような、愛嬌のある感じだな。
まあ。
女の服の良し悪しは俺には分かんねえが。
直接肌に触れるものは上等で柔らかいものにしてくれ。着心地のいいもんで大事に包んでやりてぇ」

「(うわぁお! 大甘おおあまじゃん!! 兄貴……これは随分とまあ……)
うん分かった……。
いろんな雰囲気のをあえて取り混ぜて選んで送るよ。あとでどんなのが本人に好評だったか報告して。もし次があれば次回に活かすから。
じゃ、明日ね。チャオ!」

 エレオノーラとの通信を切った。

 ふううううう!!!!

 マジでクッソ疲れた。
 信じらんねえほど疲れた……

「ぶっ! エタン……お疲れ……ぐはっ!」

「クレール! おま! さっきから笑い過ぎだぞ」

「だってエタン。オマエ、実の妹から少女趣味の変態野郎だと思われて、さとされてるし。
ぶふっ! ダメだ、おかしすぎる。ひぃ……
た、ただ、コニーの例えは最高に良かったぞ。見た目によらず文学的に天才だな、エタン」

 ッチ! コンニャロめが。
 クレールの爆笑がひとしきりおさまった頃。

「エタン~」

 コニーが帰ってきたようだ。

 行く時、いつもの桃花鳥色とおり越して真っ赤になってた上に、、若干ふらついてるもんだから。
「洗面所まで送ろうか?」
 そう言う俺らの申し出を断って一人で向かったが。

 ん?
 めちゃくちゃ近くに。
 しかも俺の背後に絶対いる。

 そんな気配の距離感で名前を呼ばれ、とんとんと肩を叩かれたほうへ振り向くと。

「〈ピコテ〉!!」
 コニーが聞きなれない言葉を叫び。
 俺の頬にぷすりと人差し指が刺さった。






【次回予告 第110話 ピコテ (エタンセル視点)】

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