舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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光の湖畔編

第106話 移動手段どうする?

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「黒オリーブとツナ缶をペースト状にしたのを焼いて、そぼろ状にしたんだよ。
植木みたいで可愛いでしょう?
エタンの髪の毛みたくなんか茶色いもの、って考えて思いついたメニューだけど。
艶もないし、ちょっと黒茶過ぎだよね。
でもまあ、エタンの幸せの芽が出て、元気に育つようにって願いを込めたから」

 スプーンで茶色いかりかりと、葉っぱ付きチーズを一緒にすくってぱくり。
 ザクザク食感タプナードと濃厚チーズ、組み合わせ最高!

「お先にお味見失礼。ちゃんと美味しくできてた。はい、どうぞ」

 エタンへグラスを手渡したその手で、『なでなで先制攻撃』を早速仕掛けてみる。
 椅子に腰かけた彼の頭に触れ、ふわっと優しく数回撫で。
 表情の変化が知りたくて、まじまじと見つめた。
 
「お? おう、ありがとな、コニー。じゃあ、いただきます」

 エタンも私をまっすぐ見返してきたからばっちり目が合って、にかり、キラースマイルくらう。
 眩しいっ!
 私のほうこそ照れくさくなり慌てて目を逸らし、座って続きを食べ始める。

 突然私に頭を撫でられ思いっきり戸惑いつつも、心なしか照れてるようにも、ちょっと嬉しげにも見える顔つきだったな、と横目でエタンをこっそりチラ見しつつ、勝手に妄想する私。

 ふっふっ、先手必勝まんざらでもないんじゃない? 
 題して『抱きつかれる前に私からちょいちょい触れてみよう。日常的に友情実感☆ほっこり大作戦』

 うん、ガス抜きは有効な手口かも、と内心ニヤリとする。
 外人ハグ、ありゃ心臓に悪いからなっ。
 お伺いされたって、きっとドキドキしちゃうよ。

 それになによりも、二人にはいつだって体調良く過ごして欲しいから、手ぐらいならお安い御用ってなもんで。
 
 ん? 待てよ、パンで言うガス抜きなら……

 一時発酵して膨らんだ生地内の大きな気泡をつぶして小さくし、パンのキメを細かくする

 パン生地に力を加えて押すことで、生地内のグルテン組織が強化して、パンの膨らむときの伸びが良くなる

 古い炭酸ガスが生地の外に排出されて、新たな酸素が取り込まれるので、イーストを活性化させ、パン生地の発酵が促進される

よってパンをふっくら大きくするのに効果的!!

 ダメじゃん!! ちょいちょい私から触れ合うガス抜きスキンシップしたら、より抱き付きたい気分が育っちゃう。
 
 いやいやそもそも、パンと人間とは違うか。
 あっは、私ったらアホだなぁ。


 のんびり飲み食いしつつ。
『王都への移動手段をどうするか?』を主に、明日の予定について話し合った。

 プランシュ、最初に見たキックボードとセグウェイを足したみたいなやつの運転を、自分でするのが第一候補。

 立って乗るバイクって感じで、森の中での小回りとスピード、魔素燃費、いずれにおいても抜群に優れた機動力、なんだって。

 悪路対応自転車が第二候補かっこ仮。
 どうやら地球でいう、こぐ力とソーラーを利用した、ハイブリッド電動アシスト付き。
 この森でのメイン移動手段。
 ただし高価な物であるため、既製品は大人用しか存在しない。
 子供用は、裕福な家の子とか、観光地で貸し出し用に存在してるのを見たことがあるようで、注文方式で購入できるだろうと予測。

 ちなみに蛍様はプランシュに後部座席を取り付けそれに座り、運転してもらって二人乗りしたそうだ。

「一番早いのは……飛び道具のあれか……」

「え? 空飛ぶ乗り物?」

「あ、ごめん。それもそうだけど、今のは『意表を突いた発想』って意味で使った言葉だよ。なんかぽろって口から出ちゃっただけだから気にしないで、なんでもない」

「クレール。コニーの顔が『なになに気になる』で埋め尽くされてんぞ。
まさかフランセ領方向のあれか?」

「ああ。だが蛍様が、『あれは地球にいない上に、普通のですら日本で乗れる人なんかほんのわずか』と言ってたからな」

 ぬぬ? なにさ? なによ? 全然分からん!

「コニーの顔。ますます謎が深まって眉間に皺が……くく……笑って悪ぃ。
飛び道具の答えはな、コニー。人を乗せるための羽馬はねうまだ。飼育してる牧場が近くにあるんだ」

 羽馬?
 エタンの説明をさらに聞く。

 わーお!!
 どうやら羽馬とはペガサスのようだ。
 そんな生き物がこっちにいるとは!

「見てみたい! めちゃくちゃ乗ってみたい! ねえ、明日はぜひとも羽馬牧場に行こうよ」

「あ……コニーごめん。普通の馬と違って、初心者は羽馬には乗れないんだ。
普通の馬は外森まで行かないといないし。そもそも、馬での長距離移動は、乗り慣れてないと辛いと思うよ」

 分かるぅ!
 一日中ウエスタンの鞍で馬に乗って、カナダでトレイルした時は。
 翌日ガニ股と筋肉痛で太ももが震えて、生まれたての子鹿になったかと思ったわ。
 羽馬の鞍ってどんなやつかな?
 ブリティッシュタイプの、しゅっとした形のならいいけど。

「ねえ、初心者じゃなかったらいいの? 馬なら私、乗れるよ。
しかも馬場馬術じゃなくて、障害飛越の選手だったから、スピードも高さも結構イケるクチだよ」

「ほ、本当に?!」
「マジか?!」

 コニーは田舎出身なの? と聞かれたので。
 いいや生まれも育ちも都会。
 高校で馬術部だったから、と答えた。

 その後、話し合った結果。
 明日の午前は、裏庭でプランシュの練習。
 午後は森の奥っていうかここが奥だから、外の方向にある牧場方面にとりあえず行ってみることになった。





【第107話 のっぱ~】
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