109 / 131
光の湖畔編
第106話 移動手段どうする?
しおりを挟む
「黒オリーブとツナ缶をペースト状にしたのを焼いて、そぼろ状にしたんだよ。
植木みたいで可愛いでしょう?
エタンの髪の毛みたくなんか茶色いもの、って考えて思いついたメニューだけど。
艶もないし、ちょっと黒茶過ぎだよね。
でもまあ、エタンの幸せの芽が出て、元気に育つようにって願いを込めたから」
スプーンで茶色いかりかりと、葉っぱ付きチーズを一緒にすくってぱくり。
ザクザク食感タプナードと濃厚チーズ、組み合わせ最高!
「お先にお味見失礼。ちゃんと美味しくできてた。はい、どうぞ」
エタンへグラスを手渡したその手で、『なでなで先制攻撃』を早速仕掛けてみる。
椅子に腰かけた彼の頭に触れ、ふわっと優しく数回撫で。
表情の変化が知りたくて、まじまじと見つめた。
「お? おう、ありがとな、コニー。じゃあ、いただきます」
エタンも私をまっすぐ見返してきたからばっちり目が合って、にかり、キラースマイルくらう。
眩しいっ!
私のほうこそ照れくさくなり慌てて目を逸らし、座って続きを食べ始める。
突然私に頭を撫でられ思いっきり戸惑いつつも、心なしか照れてるようにも、ちょっと嬉しげにも見える顔つきだったな、と横目でエタンをこっそりチラ見しつつ、勝手に妄想する私。
ふっふっ、先手必勝まんざらでもないんじゃない?
題して『抱きつかれる前に私からちょいちょい触れてみよう。日常的に友情実感☆ほっこり大作戦』
うん、ガス抜きは有効な手口かも、と内心ニヤリとする。
外人ハグ、ありゃ心臓に悪いからなっ。
お伺いされたって、きっとドキドキしちゃうよ。
それになによりも、二人にはいつだって体調良く過ごして欲しいから、手ぐらいならお安い御用ってなもんで。
ん? 待てよ、パンで言うガス抜きなら……
一時発酵して膨らんだ生地内の大きな気泡をつぶして小さくし、パンのキメを細かくする
↓
パン生地に力を加えて押すことで、生地内のグルテン組織が強化して、パンの膨らむときの伸びが良くなる
↓
古い炭酸ガスが生地の外に排出されて、新たな酸素が取り込まれるので、イーストを活性化させ、パン生地の発酵が促進される
↓
よってパンをふっくら大きくするのに効果的!!
ダメじゃん!! ちょいちょい私から触れ合うガス抜きスキンシップしたら、より抱き付き隊気分が育っちゃう。
いやいやそもそも、パンと人間とは違うか。
あっは、私ったらアホだなぁ。
のんびり飲み食いしつつ。
『王都への移動手段をどうするか?』を主に、明日の予定について話し合った。
プランシュ、最初に見たキックボードとセグウェイを足したみたいなやつの運転を、自分でするのが第一候補。
立って乗るバイクって感じで、森の中での小回りとスピード、魔素燃費、いずれにおいても抜群に優れた機動力、なんだって。
悪路対応自転車が第二候補かっこ仮。
どうやら地球でいう、こぐ力とソーラーを利用した、ハイブリッド電動アシスト付き。
この森でのメイン移動手段。
ただし高価な物であるため、既製品は大人用しか存在しない。
子供用は、裕福な家の子とか、観光地で貸し出し用に存在してるのを見たことがあるようで、注文方式で購入できるだろうと予測。
ちなみに蛍様はプランシュに後部座席を取り付けそれに座り、運転してもらって二人乗りしたそうだ。
「一番早いのは……飛び道具のあれか……」
「え? 空飛ぶ乗り物?」
「あ、ごめん。それもそうだけど、今のは『意表を突いた発想』って意味で使った言葉だよ。なんかぽろって口から出ちゃっただけだから気にしないで、なんでもない」
「クレール。コニーの顔が『なになに気になる』で埋め尽くされてんぞ。
まさかフランセ領方向のあれか?」
「ああ。だが蛍様が、『あれは地球にいない上に、普通のですら日本で乗れる人なんかほんのわずか』と言ってたからな」
ぬぬ? なにさ? なによ? 全然分からん!
「コニーの顔。ますます謎が深まって眉間に皺が……くく……笑って悪ぃ。
飛び道具の答えはな、コニー。人を乗せるための羽馬だ。飼育してる牧場が近くにあるんだ」
羽馬?
エタンの説明をさらに聞く。
わーお!!
どうやら羽馬とはペガサスのようだ。
そんな生き物がこっちにいるとは!
「見てみたい! めちゃくちゃ乗ってみたい! ねえ、明日はぜひとも羽馬牧場に行こうよ」
「あ……コニーごめん。普通の馬と違って、初心者は羽馬には乗れないんだ。
普通の馬は外森まで行かないといないし。そもそも、馬での長距離移動は、乗り慣れてないと辛いと思うよ」
分かるぅ!
一日中ウエスタンの鞍で馬に乗って、カナダでトレイルした時は。
翌日ガニ股と筋肉痛で太ももが震えて、生まれたての子鹿になったかと思ったわ。
羽馬の鞍ってどんなやつかな?
ブリティッシュタイプの、しゅっとした形のならいいけど。
「ねえ、初心者じゃなかったらいいの? 馬なら私、乗れるよ。
しかも馬場馬術じゃなくて、障害飛越の選手だったから、スピードも高さも結構イケるクチだよ」
「ほ、本当に?!」
「マジか?!」
コニーは田舎出身なの? と聞かれたので。
いいや生まれも育ちも都会。
高校で馬術部だったから、と答えた。
その後、話し合った結果。
明日の午前は、裏庭でプランシュの練習。
午後は森の奥っていうかここが奥だから、外の方向にある牧場方面にとりあえず行ってみることになった。
【第107話 のっぱ~】
植木みたいで可愛いでしょう?
エタンの髪の毛みたくなんか茶色いもの、って考えて思いついたメニューだけど。
艶もないし、ちょっと黒茶過ぎだよね。
でもまあ、エタンの幸せの芽が出て、元気に育つようにって願いを込めたから」
スプーンで茶色いかりかりと、葉っぱ付きチーズを一緒にすくってぱくり。
ザクザク食感タプナードと濃厚チーズ、組み合わせ最高!
「お先にお味見失礼。ちゃんと美味しくできてた。はい、どうぞ」
エタンへグラスを手渡したその手で、『なでなで先制攻撃』を早速仕掛けてみる。
椅子に腰かけた彼の頭に触れ、ふわっと優しく数回撫で。
表情の変化が知りたくて、まじまじと見つめた。
「お? おう、ありがとな、コニー。じゃあ、いただきます」
エタンも私をまっすぐ見返してきたからばっちり目が合って、にかり、キラースマイルくらう。
眩しいっ!
私のほうこそ照れくさくなり慌てて目を逸らし、座って続きを食べ始める。
突然私に頭を撫でられ思いっきり戸惑いつつも、心なしか照れてるようにも、ちょっと嬉しげにも見える顔つきだったな、と横目でエタンをこっそりチラ見しつつ、勝手に妄想する私。
ふっふっ、先手必勝まんざらでもないんじゃない?
題して『抱きつかれる前に私からちょいちょい触れてみよう。日常的に友情実感☆ほっこり大作戦』
うん、ガス抜きは有効な手口かも、と内心ニヤリとする。
外人ハグ、ありゃ心臓に悪いからなっ。
お伺いされたって、きっとドキドキしちゃうよ。
それになによりも、二人にはいつだって体調良く過ごして欲しいから、手ぐらいならお安い御用ってなもんで。
ん? 待てよ、パンで言うガス抜きなら……
一時発酵して膨らんだ生地内の大きな気泡をつぶして小さくし、パンのキメを細かくする
↓
パン生地に力を加えて押すことで、生地内のグルテン組織が強化して、パンの膨らむときの伸びが良くなる
↓
古い炭酸ガスが生地の外に排出されて、新たな酸素が取り込まれるので、イーストを活性化させ、パン生地の発酵が促進される
↓
よってパンをふっくら大きくするのに効果的!!
ダメじゃん!! ちょいちょい私から触れ合うガス抜きスキンシップしたら、より抱き付き隊気分が育っちゃう。
いやいやそもそも、パンと人間とは違うか。
あっは、私ったらアホだなぁ。
のんびり飲み食いしつつ。
『王都への移動手段をどうするか?』を主に、明日の予定について話し合った。
プランシュ、最初に見たキックボードとセグウェイを足したみたいなやつの運転を、自分でするのが第一候補。
立って乗るバイクって感じで、森の中での小回りとスピード、魔素燃費、いずれにおいても抜群に優れた機動力、なんだって。
悪路対応自転車が第二候補かっこ仮。
どうやら地球でいう、こぐ力とソーラーを利用した、ハイブリッド電動アシスト付き。
この森でのメイン移動手段。
ただし高価な物であるため、既製品は大人用しか存在しない。
子供用は、裕福な家の子とか、観光地で貸し出し用に存在してるのを見たことがあるようで、注文方式で購入できるだろうと予測。
ちなみに蛍様はプランシュに後部座席を取り付けそれに座り、運転してもらって二人乗りしたそうだ。
「一番早いのは……飛び道具のあれか……」
「え? 空飛ぶ乗り物?」
「あ、ごめん。それもそうだけど、今のは『意表を突いた発想』って意味で使った言葉だよ。なんかぽろって口から出ちゃっただけだから気にしないで、なんでもない」
「クレール。コニーの顔が『なになに気になる』で埋め尽くされてんぞ。
まさかフランセ領方向のあれか?」
「ああ。だが蛍様が、『あれは地球にいない上に、普通のですら日本で乗れる人なんかほんのわずか』と言ってたからな」
ぬぬ? なにさ? なによ? 全然分からん!
「コニーの顔。ますます謎が深まって眉間に皺が……くく……笑って悪ぃ。
飛び道具の答えはな、コニー。人を乗せるための羽馬だ。飼育してる牧場が近くにあるんだ」
羽馬?
エタンの説明をさらに聞く。
わーお!!
どうやら羽馬とはペガサスのようだ。
そんな生き物がこっちにいるとは!
「見てみたい! めちゃくちゃ乗ってみたい! ねえ、明日はぜひとも羽馬牧場に行こうよ」
「あ……コニーごめん。普通の馬と違って、初心者は羽馬には乗れないんだ。
普通の馬は外森まで行かないといないし。そもそも、馬での長距離移動は、乗り慣れてないと辛いと思うよ」
分かるぅ!
一日中ウエスタンの鞍で馬に乗って、カナダでトレイルした時は。
翌日ガニ股と筋肉痛で太ももが震えて、生まれたての子鹿になったかと思ったわ。
羽馬の鞍ってどんなやつかな?
ブリティッシュタイプの、しゅっとした形のならいいけど。
「ねえ、初心者じゃなかったらいいの? 馬なら私、乗れるよ。
しかも馬場馬術じゃなくて、障害飛越の選手だったから、スピードも高さも結構イケるクチだよ」
「ほ、本当に?!」
「マジか?!」
コニーは田舎出身なの? と聞かれたので。
いいや生まれも育ちも都会。
高校で馬術部だったから、と答えた。
その後、話し合った結果。
明日の午前は、裏庭でプランシュの練習。
午後は森の奥っていうかここが奥だから、外の方向にある牧場方面にとりあえず行ってみることになった。
【第107話 のっぱ~】
20
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる