舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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光の湖畔編

第93話 荷物が来たみたい

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 ティーカップを2つクレールに差し出す。
 いつもならエタンの分の一杯もね。

「瞳はずっと青いからあれだけど、喋ると口内が一瞬きらっとするね、コニー。
カップを僕に2つってことは、紅茶の実験をしてたのかな?」
 
 うん、うん、こくこく。
 どうかな? どうかな? わくわく。

「コニー、そんな期待に満ちた可愛い顔で見つめられたら、飲みづらいよ。照れるって」

「あ、ごめん」
やば、見過ぎちゃったか。
 慌ててクレールから目を逸らす。

「あ、いや。今のやっぱりなし。
ねえ、さっきみたくじっと僕を見ていて、コニー。
君と見つめ合って飲む紅茶は、きっとさらに美味しいはずだから」

 ひぃっ!
 なんちゅう……紅茶より香り立つセリフっ!

「もう、見過ぎた私が悪かったってば。ごめんごめん。からかってないで、さあ、冷めないうちにどうぞ召し上がれ」

 にこにこしながら、普通に入れた紅茶からクレールが飲む。
「うん。僕の言葉で照れてるコニーを眺めて飲むいつもの紅茶は、やはりいつもより美味しい」

 んなわけあるかーい! それは気のせいー! その紅茶はいつものまんまじゃーぃ!
 むしゃむしゃ、黒糖くるみを照れ隠しに、矢継ぎ早に3粒むさぼった。

栗鼠くりねずみみたいで可愛いね」

「むぐっ! ごくごく…… ぷふぁ~。
もう、クレール! そういうのはいいの! 早くこっちも飲んでったらぁ」 

「ふふ、はいはい」
クレールがもう一方のカップのお茶を手にする。

「香りがいつもと違うね。 
うーん。逆に香りが減った気がするけど味はどうかな?
ん……。あ、美味しい。
シンプルだけど、とても美味しい紅茶だ、コニー」

「良かった~。私のお気に入りの紅茶なんだよ、これ。聞いて聞いて、あのね……」
と、紅茶の種明かしやら、考察やら、今後やりたい実験やらを、クレールに聞いてもらう。
 黒糖くるみを2人でつまみながら。

「コニー、この素朴で美味しいおやつは、甘いのに甘過ぎなくて危険だ。僕たちっていうか主に僕だけど、喋りながら気づけばもう半分ぐらい食べちゃった。残りは瓶にしまっておこう」

「そ、そうだね。ちょっと夕ご飯前に食べ過ぎた。それにもう作り始めなきゃ時間が……」

 カンコン、カンコン、カンコン
 カウベルを叩いたみたいな音が鳴る。

「荷物が届いたお知らせだ。コニー行こ」

 いつものようにクレールが差し出す手を取り、カウンターから向かった先は目と鼻の先。
 行こって……螺旋階段奥の、裏口の横に置いてある棚んとこじゃん。
 クレールのエスコートはもはやデフォ。

 棚の上の楕円形の魔道具回路がチカチカ点滅している。
 
「あ、そうだ。主な食品を購入してる商社の僕の担当者二人がね。今日まで健国祭休暇や体調不良やらで出社していなくて。納品が明日になってしまうって連絡があったんだ。
パンや乳製品や卵は、実家のフランセ領の店から明日の朝くるんだけど……
だから、あの、ちゃんとしたものが作れないとか、そんなふうに思わないでってゆうか、何も作らなくても大丈夫だから、えっと」

「あ、うん。適当なものでよければ、あるものでどうにかなると思うよ。
『楽しみにしてたけど、材料ないから無理せず気負わないでね』って感じでしょう?
伝え方を気にしてくれたんだね、クレール。ありがとう」

「いや、こちらこそ。誤解なく分かってくれて助かったよ。
それじゃあ、これを受け取るとこ見ててね」

「あ、待って、書き留めるから」

 新しいことを習うときは、一度に覚えられないし、そんで次回質問しなくてもにいいように、細かくメモをとる主義。

 スイッチや押すキーの位置とかも図解入りで紙に走り書きしていく。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

① 旧式のパソコンみたいなやつの電源を付ける。
荷物の発送先と内容を確認する。
(サプライズ荷物文化無し。要事前打ち合わせ。身に覚えのないものは絶対に受け取らないこと)
拒否は画面のここ押す。

②届く収納箱の色を確認。それによって棒魔石(ネックレスで充電してるやつ)の使用魔素の量が異なる。
魔素の元払い、着払いの確認。
クレールの家は着払いがほとんど。受けとり側が使用魔素を持つ。

③楕円形の魔道具回路脇の凹みに棒魔石をセットする。(大抵は満タン1個で足りる)3個まで入る。

④右下の引き出し、手前の充電済み魔石棒使ってよい。
奥が空っぽ入れ。

⑤ 複数ある場合は、選択する。
画面上の受け入れボタンに矢印でカーソルを合わせて押す。
(それが相手に受け入れ準備の合図を発信したことになる)

⑥魔道具回路の端っこ、このマーク(回路)のとこを人差し指でタッチ。
(受け取り登録設定がされている場合は、登録した人のみ作動)
受け取る予定の箱の色に光ったら、送られてくるのを待つだけ。
万が一実際送られてくる荷物が、ここで確認した発送先と担当者の事前登録魔素と異なる場合は、警告音とともに送られてこないので安心してもよい。
(担当者まで登録させる二重セキュリティ設定は自由。クレールはそうしてる)

⑦終わったらここのスイッチを切る。

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼






【次回予告 第94話 貯蔵室探索】

次回ラスト、少しクレール視点が入ります。
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