舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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光の湖畔編

第91話 やった!! 大興奮!!

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 待って待って! 何これ?
 消えないでえええ!!

 慌てて自室に駆け込み、ノートにかぶりつく。

 頭に浮かんだマヨネーズの配合をすらすらと書き出してみる。
 塩1.7gまでしっかり細かく出てくるよ!

 書き出した後は頭がすっきりした。
 でももう一回思い浮かべたら、ちゃんと出てくる。
 そんで「消えろ」では消えず、普通に違うこと考えたら霧散した。

 それなら……
 フィナンスィエとか、ガトーショコラは……

 ああ!! イケる! 思い出せるよおお!!
 あまりの喜びで興奮でどうにかなりそうだ。

 ノートに書き出し始めるも、頭に文字が付いていかないのがもどかしい。

「…… ……ニー? コニー! 急にどうしたの? 僕も部屋に入ってもいいかな?」

 名前を呼ばれた気がしてハッとし振り向くと、開けっぱなしのドアの入り口で困惑を顔に浮かべたクレールが立っていた。

「あ! ご、ごめん、私、夢中で……
クレール! ねえ聞いて! 凄いのよ!」
ノートを抱えて立ち上がり、クレール元に飛びついた。

 


「そうか……。あの赤い冊子の中には新作のルセット配合表のみで、いつも作る定番やお気に入りは何も入っていなかったんだね。
もう二度と同じものは作れないと諦めていたけど、それが今回頭に浮かぶようになったと?」

 カウンターに移動した私たち。
 クレールが質疑応答形式で私の話を聞き、疑問点やこれから検証すべきことなど、まとめ上げに協力してくれた。

「興奮とやりたいことで頭ん中が噴火寸前だったけど、クレールが順を追って一緒に整理してくれたから、だいぶ冷静に見えてきたよ。
クレール助かったよ、ありがとう。」

「コニーの大事なものを、いち早く取り戻す手伝いが僕にもできたのなら本望さ。
こんなにも嬉しそうなコニーの笑顔が見れて、僕も嬉しいよ。本当に良かった。
うーん。これもコニーならではの、おヌル様の能力なんだね……」

 食卓設置は僕ひとりに任せてコニーは検証を続けなよとうながされ、じゃあそうさせてもらうね、2時間たっても出てこなかったら迎えに行くよ、など話を交わして別行動となった。


 さてと。
 ノートを開いてクレールとの打ち合わせどおりに、次々検証していくぞ。

 その前にやはり、思い浮かんだガトーショコラとプレーンフィナンスィエの配合だけは、頭の中からあの美しい日記帳に書き出した。

 正直言って、あれもこれもお菓子の配合を片っ端から思い出して、今すぐ書き留めていきたい。
 でもこの、はやる思いは、本筋解明にとっては枝葉追求であり、その欲望を抑えてくれるクレールの提案は、とてもありがたかった。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【思い出せるルセット】

*作ったことがあるもの

*講習会で見て学んで完璧に理解したもの

*作り方と配合を本気で熟読したもの



【思い出せないルセット】

*流し読みしたレベル

*食べ物じゃない(割れづらいシャボン玉液など)

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 ここまでの検証を終え、ノートを閉じる。
 脳みそが疲れた……
 お茶でも入れてクレールと一休みするかあ~。



 居間に行くと、飴色のいい感じに歳月を経たアンティークの、無垢材でできたダイニングテーブルセットが出されていた。

 おお~イラストどおりで、すんごく趣があってやっぱり好き!!

 机を磨いているクレールに、それなあに? と聞いたら、蜜蝋で作った艶出し油とのこと。
 
 じゃあ私は椅子の方を……椅子に置かれた布を取ろうとしたら、クレールが慌ててそれダメ! って制止するから何事かと思ったら。

「椅子にならいいかと思って……そ、それ、僕の穴の空いた靴下だから……見ないでよ、汚いし」
恥ずかしそうなクレール、なんか可愛い。
 洗ってあるんだからばっちぃとか思わないよ?

 机は古いシャツを切ったやつでやってるからこっちと代わって、あとこれ磨け仕上げ用に、ともう1枚渡された。

 育ちが王族でも、ちゃんと物を大事に使う文化が染み込んでて素敵な世界だ。
 庶民は穴が空いたら手を加えて繕い物をして、大事にできるだけ長く着ている人も多いそうな。
 さらに回収して再生布に加工する技術も発展してるんだって。

 2人で磨きながらいろいろおしゃべりをした。もちろん私の検証結果も。

 クレールは報告内容を我が事のようにとても喜んでくれた。
 自身も研究者だから、もしも開発した魔道具回路の情報が、ある日全部ぶっ飛んで白紙になったら……考えるだけで震え上がる、と私に深く共感したみたい。

 お菓子を作るための、機材とか材料とか手に入ったら、これで正式なフランス菓子とかも作ってあげれるよって言ったら。
 怪しまれないようにしつつ、まずは職権濫用してはかりを今日中に入手する! とクレールが息巻いていた。

 拭き終えたら、お茶と甘いもんで、おやつタイムにしたいなあ。

 
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