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光の湖畔編

第82話 それ登場!!!

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「もがっ?!」

「「コニー!!」」

 慌てて口から吐き出す。
 こっちに来た時の謎のゲル虹の方様?と違って容易に、ぽてんっ、と口から落ちた。
 
 口へと突然飛び込んできたそれは。

 プレシャスオパールみたいな……
 
 水まんじゅうだった。

 口から吐き出されて落ちたそいつは、船底でそのままぷるぷる揺れている。

 エタンが腰元に付けていた黒いキーホルダー的な物を、引きちぎるように急いで手に取る。
 それは魔導具であったようで、一緒で警棒みたくなった。
 警戒しながら、ボートの底に落ちたぷるぷるを、警棒で突こうとした瞬間。

 突然! しゅぽっと勢いよく跳ね上がり!

ぽすんっ
それは私の膝上に着地した。

 ひいぃぃっっっ!! 声にならぬ引き悲鳴。

 私の膝の上でぷるりと一度大きく、水まんじゅうは震えたのち

 もに もに

 前の上部がぴょこぴょこっと2箇所、後ろ下部に1箇所ぽこり、突起が現れた。

 我に返ったクレールが
「コニーじっとして! 今どかすから!!」
つまみ取るように手を伸ばすと。

 ぱちり

 ツルペタのっぺらぼう、オパールまんじゅうに、群青色の星の瞳が突然開いた。

 凍りつく私と目がバッチリ合う。
 そしてもう一度ぷるりん震えると、今度はピンクの口らしきものがぱかりと開いて

「むぶぁぁ~~」
と鳴いた………

 まるで、上部の突起はちっちゃいお耳で、下のはお団子状のちみっこい尻尾のよう……

 水まんじゅう猫??

「クレール待って……」

 お手玉をぽふぽふ軽く動かすように。
それは太もも小さく跳ね進み、私のお腹と左手に持ったマフィンの間にすっぽり入り込んだ。

 そして私をじっと見上げて
「むむぬぅ」
と鳴き、私の手首に頭? をすりすり擦り付けては、子猫のような甘えた声で「むむぬぅ」とまた鳴いた。

 固唾を飲んで見守ってたと思われる、クレールとエタンから

「わわ! コニー涙が……な、なにが、ど、どうなって?!」

「コニー! それ、ソイツに痛くされてんのか?!」

 声をかけられて、ハッとする。
 私……泣いてんのか……

「大丈夫。あとで話すから。しばらくこのままで……お願い」

 右手でさっと、一筋頬に伝った涙を拭い、鼻をすんすんすすって。
 右差し指を怖がらせないように、の下からゆっくり顔付近に持っていく。
 「むむぬぅ」と鳴いたのち手首から離れて、鼻は見うけられないけど、鼻ツラと思われるような箇所かしょを指先に、くんくんするように寄せ、今度は伸び上がるように右手にすりすりし始めたの。

 私はそっと残り3本の指も開き、首はないけど、そのあたりや、耳下、ちっちゃい眉間みけんを「いい子ね」と小さく声を掛けながら、そっと撫でた。

「マフィン食べてみる?」
猫じゃないしあげてもいいかな? 食べるかしら? と思いつつ、小さくちぎって口元へ差し出してみた。

「むぬ?」
小首を傾げるようにしたのち、かぷりと齧り付いた。

「むんにゅあ~!!」

……多分これ、絶対、美味しいって言ってる。
 目を大きく見開き。
 ぷるぷる小刻みに震えたあと、左右にぷるん
ぷるん大きく揺れている。
 そして「むんにゅ~むんにゅあ~」とヘンテコな声で鳴き始めた。
 ふふふ、もっと食べたいのね。
 もっとちょうだい、のおねだりコールなんだわ。

 恐る恐るもっちりボディを右手でふんわりつかみ、目の高さまで連れてきて
「もっと食べていいからね」
笑顔でそう告げる。
「むむぬぅ?」と私にお返事したであろうを、膝上の左手マフィンの方を向けて置いた。

 その大福サイズの身体で、なにがどうなっているのか。
 なんと、3口ぐらいでマフィンを平らげ。
「むむぬぅ~」と甘え鳴いたのち、マフィンが消えた私の手のひらにいつの間のにか上陸していたその仔は。
 むにーんと前足? 手? みたいなのを伸ばして私の左人差し指を両手で掴んで、指先にちゅっちゅっと吸い付いてきた。

 ナニコレ……
 もうさっきからハートを撃ち抜かれっぱなし……
 かっ 可愛すぎるんだけど~!!!!

 懸命に吸い付く顔見たくて、落ちないように右手を添え、左手首の角度や高さを調節して覗き込む。

「「コニー! 色が!!」」

 2人の声に、ん?となったのはこの仔も同様だったみたいで、目をつぶって一生懸命吸い付いていたが、パチリと目を開けた。

 私を見てハッとしたように、口を離して「むぬっ!」と声を上げる。
 そして今度は餅のように伸び上がって私の顎に両手を添え、私の口元をぺろぺろし出した。
 ひゃはっ! くすぐったい! 犬がよくやってくるアレだ。

「なっ!?!」
「てめえ!!」
ざわつき伸ばす手を2人。

 すると突然、その仔はぷくっフグみたくまあるく膨れて。
私の口に、ふうぅぅぅぅ~っと強くはないけど息を吹き込できてきた。

んっぐ! かはっ! はっあ?!
驚いてる私を尻目に
「むぶぁ~」
元の形に戻って、そう一鳴きし。

しゅぽーん
と手のひらから飛び跳ね。

ぽちゃんっ!

光の湖にそれは帰っていった。


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