舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

文字の大きさ
上 下
80 / 131
光の湖畔編

第78話 防護服

しおりを挟む
「見事に輝く白……いや、ただの白さじゃなくて、これは……」

「ああ。光の湖そのものだ。
乳白色なのに、光の加減で中から七色が浮かび上がるというか……。
コニーが教えてくれた、まさにオパールって宝石の描写にそっくりだ」

「ねえ……。一応聞くけど、そんな髪色の人って、私の他に見たことある?
……だよね。うん、聞いてみただけ。分かってた。
本当に、あんな湖の色なの? 
瞳も髪の毛もド派手を通り越して、人外レベルっぽいよ。
今髪の毛結んでるから分かりづらいと思うけど、そもそもこの顔にそんなきらびやかな色合いって。チグハグっていうか、取って付けたようでおかしくない?」

「ううんコニー。全然大丈夫! そこは安心して? とっても似合ってて可愛いよ。いや、いつもの可愛さに、神秘さも加わったね」

「問題ないぜ。ああ、別嬪べっぴんさんだ。いつもの親しみある愛らしい黒茶もいいが、これも清楚せいそな感じでいい。マジで似合ってる」

「美をつかさどる月の女神様の妹みたい。今の格好だとちょっと弟っぽいけど。
ああ、家で髪をおろした時が楽しみだよ」

 女神様じゃなくて妹かーい。
 しかも弟ぽいって。
 あんなに褒めてくれてんだから、そこはあと一息ひといき盛ってこー。

「マジで楽しみだ。ただ難点があるとすりゃあ、目立ちそうだな……三つ編みでこれだ。いつもの長いふわふわの髪でこの色だったら、かなりやべぇ。
むろん、いい意味でな」

 っふ。
 クレールもエタンも仕方ないなあ。
 2人とも私にかなり極甘ごくあまだから、これってば、相当底上げされた感想に違いない。
 二の腕の毛は白く透き通るようだ。
 多分まつげや眉毛は太いから白い?

 舌先の時みたく今度もなにかしたら元に戻るんだろうか……
 クレールの家に飛び戻って、いち早く鏡で確認したい反面、見たくない気もする。

 宇宙にオパール。
 カラコンにウィッグ。
 私のおヌル様定番コスプレと思えば。
 ただし、一生取れない……かもしれない。

「クレール、エタン。今日の予定だけど。
私自身は、このまま儀式を続けたいと思ってるんだけど……。
でもさっきのこともあるし、虹の院に正式に報告してからでもいいよ。
そんなすぐには大勢で押し寄せてやって来れない場所でしょ?」

 時計を見て、しばし考え込んだクレールの出した答えは、このまま行く、だった。

 そして彼は、ボートの後方端にビスで固定された、いかにもな防水仕様の箱を開け始め。
 そこから例の異界仕様の白い『収納箱』を出した。

 ベルト通しに付けてるバリア魔道具の横。キーホルダーにもう一つつけてるやつ。
「これも僕専用の特注品。携帯用箱棒さ」
しゅるっと前回同様、引き出す。

「帽子出した時の? 」

「うん、見てて」
持ち手の部分が長方形で魔石が2列の計6色の6個埋まってる。
 持ち手は 大きめで、ちょこんと短く先がとびでた、ずんぐりむっくりしたシャッターの鍵スタイル。
 三角部分に緑の魔石。

 赤い魔石を親指で押さえつつ箱の回路に触れ、大きくなった箱から、品物を取り出し、また元に全て戻した。

 黒1個、黄色1個、小さな巾着袋。
 エタンに桟橋から助けてもらい、陸に上がる。
 防護服だと説明を受けながら、身につける。
 靴の上から装着するつなぎ型。
 
「黄色は女性用だけど、コニーには大きいね」

 服自体は両方とも、コンビニで売ってるような乳白色のレインコートみたいな素材なんだけど、立ちえりと手首が袋の色とお揃いで、サイズが分かれているみたい。
 
 エタンはというと、カーゴズボンから取り出したマイ防護服を、いつも着てっからと、あっという間に装着してみせた。

「その袋こそが防護服と連動した魔道具なんだぜ。袋から出して24時間はバリアが張られてて、また入れておくと24時間後に完全にバリアが付与される」
私を手伝いながら、エタンが説明してくれる。
 大事な袋は、教えられた胸の内ポケットの定位置にしまう。

 チャックを締めると、特殊なチャックらしく密閉されるそうだ。
 手首、首にあるボタンをエタンに押してもらうと、苦しくもなくちょうど良い具合に、くるりぺたり、絆創膏を貼られた感じに肌に吸着した。
 付与切れで作動しなくなる前に、ボタンが赤くなってお知らせだそうだ。
 袋の回路も赤く浮かび上がってお知らせ機能付き。

「襟ボタン横の、もう1つの大きめボタンは空調。防護服は空気も通さずあちぃからな。いまの季節は無しでもいけるが、俺はオールを漕ぐから暑くなる」
そう言ってボタンを押した。

 これは空調魔道具でもあるが、充力機能とソーラーシステムが組み込まれ、足りない分のエネルギーは空気中の魔素で補うハイブリッド型。
 なんとも異界ハイテク!

「なんてったって洗濯しなくて済むのが良いぜ、コレ。24時間後バリアが壊れる時、汚れも匂いも一緒に落ちるからな。
で、バリアは跡形もなくって、下に落ちた汚れだけ残る。汚れにもよるが、宿舎では外とかひさし付きの専用共同干し場や、自室で汚れてもいいシートを用意したり、シャワー室なんかに吊るしとくだけだ」

 共同のところに干してる際に取り間違えられないよう、あらかじめ名前入りのものが職場から3着支給されるとのこと。

「コニー、着れた? ん。じゃあ漕ぎだそうか」


 






しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...