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光の湖畔編
第76話 手を浸す
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そしてTシャツの裾をちろっと捲って、デニムのベルト通しに付けているキーホルダーみたいなのを手に取り。
クレールの緑の魔石がついた、その鍵に似た形の物をつまんで引っ張った。
しゅるるるるっ
例の透明な糸が鍵にくっついているらしく、引き出されて伸びる。
鍵先を自分のジーンズに当て、ピカっと一瞬、鍵本体を光らせる。
「携帯用バリアの魔道具だよ。コニーこっちおいで。キミには靴にバリアを。
ん、これでよし。
この巻き取り式、便利だけど手元で離すと勢いよく巻き戻って、結構な衝撃で痛いんだよね」
そう言いながら、クレールは腰元に戻す仕草をした。
掃除機のコンセント巻き取り最後に、シュルルバチッ! ていうあの音を私は思い浮かべて、痛そうな想像をしちゃった。
なるほど、バリアといっても、ジーンズ本体が水飛沫で濡れないようになっただけで。
ジャブっと水に浸かったら、デニムの裾から中のほうへと水が入ってきちゃうのか。
「コニーは初めてだから、湖に触れるのはまずは指先、それで大丈夫そうだったら手のひらね」
湖面は道路から4~5mぐらい先にあり、そこまでは海みたいな白いさらさらの砂浜になっている。
彼は素足のまま道路から降りたち、私たちは靴のまま後に続く。
クレールは慎重な面持ちで湖に静かに入って、前屈するように手も浸けた。
桟橋上にいた時は全然気付かなかったけど、湖には小型ボートが一艘、桟橋に係留され浮かんでいた。
赤いラインが、乳白色の光の湖映えるね。
「あとでボートに乗って、3人で儀式しよう」
なんて魅力的なお誘いでしょう!
「うん! 楽しみ~ぃっ!」
私は足元が濡れないよう、水際に早速しゃがみ込んで。
恐る恐る左手人差し指を、ちょんと水に差し入れた。
ほぅ……なんともない。
「コニーどうだ?」
上からエタンの声が降ってきた。
「なんともなさそう。次は思い切ってひらやってみる」
振り返り仰ぎみると、真後ろに仁王立ちしてエタンが立ってた。
ん? 横とか来ないの? まあいっか。
利き手の右になんかあったら怖いから、左手をちゃぷりと浸す。
「ほぇえ?」
「コニー大丈夫?! ピリッとした?」
心配そうに私の側へ浅瀬に帰ってきたクレールに、問いかけられる。
「ううん。警戒してたそういうのはまるで無くて。
むしろ、ほんわり温かくて気持ちいいの! じんわ~って癒される感じよ?」
顔を上げて、クレールを見上げてそう応えていたら。
急に、私の目の前がピカッと光った。
あっ!? 例の実験中に舌が光って瞳が宇宙になる時の感じ……
「コニー!!」
「?! クレールぅぅっ」
「おい! どうした!!」
クレールは慌てて私の手を掴んで立たせ、2人で水から上がり。
彼はポケットから出した大判バンダナみたいなので、急いで私の手と自分の手の水を拭った。
そして両手で私の頬を挟み、クイッと上を向かせるや否や、急速に自分の顔をめちゃくちゃ近づけてきた。
え? なに?! いやいやいやコレ近すぎ!!
まさかと思うが、自分の唇の上に右手の指3本をそぉっと置いた。
「コニー……まつ毛も眉毛も産毛も白っぽい……」
は? い?
「舌出して……うん、変化無し。じゃあ帽子をとって確認しよう。
ああ! その前にネックレスを!」
私は自分でシャツから引っ張りだした。
ネックレスも石の変色も、湖を触る前と特に変化なし。
「コニー! 俺にも見せてくれ」
振り返った私を見て、エタンが息をのむ。
「胸の痛みはどうだ!?」
ううんと首を横に振る。
「身体全体がぽかぽかする感じで、むしろ調子いい感じ?」
「まずは僕は足を拭いて靴を履かなきゃ。砂がつかないように桟橋からあが」
「まずい!! 宿舎の方から誰か来る。急いで2人はしゃがめ!
俺はボートの係留ロープを長く取る。竿は目立つから使えないからあとはクレールに任せる。
とにかくボートに2人で乗り込め。デッキから覗き込まれなきゃ気づかれない」
そう言い残してエタンは、デッキの横から上に這い上がる。
クレールは道路ぎわに脱いだ自分の靴を走って取りに行き、
「僕の靴持って。そう。そんで僕の首に両手をしっかりまわしてね」
そう言いながらがばっとTシャツ脱ぎ、それも私に押し付けると、私をサッと横抱きに掬い上げた。
「濡れないようにボートまで連れてく」
きょわああぁ!!
なに? 変装してるけど宿舎の人に見つかったらダメなの?
上裸のクレールにお姫様抱っこって……
ダブルパンチで、ドキドキし過ぎるこの事態は一体?!
じゃぶじゃぶと水飛沫を無駄に跳ね上げずに、落ち着いて水中を歩くクレール。
あ、Tシャツを脱いだのも、裾が浸かんないようにか。
ボートまでは遠浅で膝上ぐらいまでしか濡れてなさそう。
私をボートに押し上げ、クレールもあとからゴトンと音を立てて乗り込んだ瞬間。
「おーい! エタンセルせんぱーい」
遠くから呼び声がかかった。
「コニー静かにね。バレるとめんどいから。
そんでごめん、あっち向いててくれる?
すぐジーンズ脱いで、太腿とか僕も早く拭かないと」
は、はい!
揺れないように気をつけながら、クレールに背を
向け四つん這いで船首の方へ。
そのままダンゴムシみたいに丸まっとく。
「エタンセル先輩ここにいたんすね~」
誰かこっちまでやってきたみたい。
「ここんとこずっとクレール様の家に入り浸ってウチの飯を食わないから、材料余っちまうぜって。副料理長が怒ってるっすよ。
昨日の揚げもんの残りを天丼にしたやつ。クレール様の分もっす。
『2人が昼ご飯用意して食べちゃう前に、早々持ってちょうだい』って、副料理長からのお使いできやした~」
クレールの緑の魔石がついた、その鍵に似た形の物をつまんで引っ張った。
しゅるるるるっ
例の透明な糸が鍵にくっついているらしく、引き出されて伸びる。
鍵先を自分のジーンズに当て、ピカっと一瞬、鍵本体を光らせる。
「携帯用バリアの魔道具だよ。コニーこっちおいで。キミには靴にバリアを。
ん、これでよし。
この巻き取り式、便利だけど手元で離すと勢いよく巻き戻って、結構な衝撃で痛いんだよね」
そう言いながら、クレールは腰元に戻す仕草をした。
掃除機のコンセント巻き取り最後に、シュルルバチッ! ていうあの音を私は思い浮かべて、痛そうな想像をしちゃった。
なるほど、バリアといっても、ジーンズ本体が水飛沫で濡れないようになっただけで。
ジャブっと水に浸かったら、デニムの裾から中のほうへと水が入ってきちゃうのか。
「コニーは初めてだから、湖に触れるのはまずは指先、それで大丈夫そうだったら手のひらね」
湖面は道路から4~5mぐらい先にあり、そこまでは海みたいな白いさらさらの砂浜になっている。
彼は素足のまま道路から降りたち、私たちは靴のまま後に続く。
クレールは慎重な面持ちで湖に静かに入って、前屈するように手も浸けた。
桟橋上にいた時は全然気付かなかったけど、湖には小型ボートが一艘、桟橋に係留され浮かんでいた。
赤いラインが、乳白色の光の湖映えるね。
「あとでボートに乗って、3人で儀式しよう」
なんて魅力的なお誘いでしょう!
「うん! 楽しみ~ぃっ!」
私は足元が濡れないよう、水際に早速しゃがみ込んで。
恐る恐る左手人差し指を、ちょんと水に差し入れた。
ほぅ……なんともない。
「コニーどうだ?」
上からエタンの声が降ってきた。
「なんともなさそう。次は思い切ってひらやってみる」
振り返り仰ぎみると、真後ろに仁王立ちしてエタンが立ってた。
ん? 横とか来ないの? まあいっか。
利き手の右になんかあったら怖いから、左手をちゃぷりと浸す。
「ほぇえ?」
「コニー大丈夫?! ピリッとした?」
心配そうに私の側へ浅瀬に帰ってきたクレールに、問いかけられる。
「ううん。警戒してたそういうのはまるで無くて。
むしろ、ほんわり温かくて気持ちいいの! じんわ~って癒される感じよ?」
顔を上げて、クレールを見上げてそう応えていたら。
急に、私の目の前がピカッと光った。
あっ!? 例の実験中に舌が光って瞳が宇宙になる時の感じ……
「コニー!!」
「?! クレールぅぅっ」
「おい! どうした!!」
クレールは慌てて私の手を掴んで立たせ、2人で水から上がり。
彼はポケットから出した大判バンダナみたいなので、急いで私の手と自分の手の水を拭った。
そして両手で私の頬を挟み、クイッと上を向かせるや否や、急速に自分の顔をめちゃくちゃ近づけてきた。
え? なに?! いやいやいやコレ近すぎ!!
まさかと思うが、自分の唇の上に右手の指3本をそぉっと置いた。
「コニー……まつ毛も眉毛も産毛も白っぽい……」
は? い?
「舌出して……うん、変化無し。じゃあ帽子をとって確認しよう。
ああ! その前にネックレスを!」
私は自分でシャツから引っ張りだした。
ネックレスも石の変色も、湖を触る前と特に変化なし。
「コニー! 俺にも見せてくれ」
振り返った私を見て、エタンが息をのむ。
「胸の痛みはどうだ!?」
ううんと首を横に振る。
「身体全体がぽかぽかする感じで、むしろ調子いい感じ?」
「まずは僕は足を拭いて靴を履かなきゃ。砂がつかないように桟橋からあが」
「まずい!! 宿舎の方から誰か来る。急いで2人はしゃがめ!
俺はボートの係留ロープを長く取る。竿は目立つから使えないからあとはクレールに任せる。
とにかくボートに2人で乗り込め。デッキから覗き込まれなきゃ気づかれない」
そう言い残してエタンは、デッキの横から上に這い上がる。
クレールは道路ぎわに脱いだ自分の靴を走って取りに行き、
「僕の靴持って。そう。そんで僕の首に両手をしっかりまわしてね」
そう言いながらがばっとTシャツ脱ぎ、それも私に押し付けると、私をサッと横抱きに掬い上げた。
「濡れないようにボートまで連れてく」
きょわああぁ!!
なに? 変装してるけど宿舎の人に見つかったらダメなの?
上裸のクレールにお姫様抱っこって……
ダブルパンチで、ドキドキし過ぎるこの事態は一体?!
じゃぶじゃぶと水飛沫を無駄に跳ね上げずに、落ち着いて水中を歩くクレール。
あ、Tシャツを脱いだのも、裾が浸かんないようにか。
ボートまでは遠浅で膝上ぐらいまでしか濡れてなさそう。
私をボートに押し上げ、クレールもあとからゴトンと音を立てて乗り込んだ瞬間。
「おーい! エタンセルせんぱーい」
遠くから呼び声がかかった。
「コニー静かにね。バレるとめんどいから。
そんでごめん、あっち向いててくれる?
すぐジーンズ脱いで、太腿とか僕も早く拭かないと」
は、はい!
揺れないように気をつけながら、クレールに背を
向け四つん這いで船首の方へ。
そのままダンゴムシみたいに丸まっとく。
「エタンセル先輩ここにいたんすね~」
誰かこっちまでやってきたみたい。
「ここんとこずっとクレール様の家に入り浸ってウチの飯を食わないから、材料余っちまうぜって。副料理長が怒ってるっすよ。
昨日の揚げもんの残りを天丼にしたやつ。クレール様の分もっす。
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