76 / 131
光の湖畔編
第74話 丘から臨む湖
しおりを挟む「ヴァン様……そのお顔」
「ああ。私は火傷など負っていなかったのだ。全てはエルの本性を確かめるための狂言だった」
キラキラ輝きを放っているようにも見える銀色の髪。
包帯から解放された上半身は筋肉が引き締まり、たくましい。
この世の奇跡だとしか思えないほどのその顔立ち。
そんなヴァン様が私を優しそうに見つめている。
私は恥ずかしくなり、目を逸らした。
「君にはすぐ明かすつもりだったんだ。だけど、どうしても君を試したくなってしまった」
「試す……ですか?」
「ああ。君はエルと同じで、私の外見と財産が目的なのではないかと思ってね……最初はエルの気持ちを確かめるためだけだったが……君を一目見た瞬間に、目的が変わってしまった」
ヴァン様は眩しそうに目を細め、私の顔を見つめ続ける。
「自分の中身を見てほしかったんだ。そして君は私の容姿など気にすることなく、普通に優しく接しくれた。それが嬉しくて……気が付けば私の心の中はクリスで一杯になっていたんだ」
「…………」
「エルの目的はすでに把握している。クリスが何故ここにいるのかも理解している。私は既に全部分かっていたんだよ。そして私は君を試していた。」
そう言うとヴァン様は跪き、私の手を取る。
「お互い様なんだ……だから気にしないでほしい。そして私を許してほしい。そして……クリス。私と一緒になってほしい」
「ヴァン様……」
涙が止まらない。
まさか、ヴァン様からそんなことを言われるだなんて。
あまりの感激に言葉が出なかったので、代わりに涙を流しながら大きく頷く。
ヴァン様はホッとし、素敵な笑みを向けてくれた。
私はグチャグチャになった顔で、笑顔を作る。
不細工なんだと思う。
だけど彼は、嬉しそうに笑っている。
それだけで幸せだった。
いつか幸せに……
その幸せが、本当に舞い込んでくるなんて。
本当に夢のようだ。
その上、ヴァン様という素晴らしいお方から求婚されるなんて。
「エルリーンの考え通り、彼女との婚約を破棄させてもらおう」
「はい。妹の望みのままに、ですね」
クスクスと笑い合う私たち。
こうしてエルの計画通り、ヴァン様と彼女の婚約を解消させることとなった。
いまだに信じられないが、優しくて暖かいヴァン様は目の前にいる。
彼は微笑を浮かべながら、私の身体を抱きしめた。
私はこれ以上ないほどの幸せを感じながら、彼の胸に抱かれ続ける。
どうか夢じゃありませんように。
そしてこの幸せが永遠に続きますように。
私はそう祈りながら、ヴァン様の胸の鼓動を感じていた。
「ああ。私は火傷など負っていなかったのだ。全てはエルの本性を確かめるための狂言だった」
キラキラ輝きを放っているようにも見える銀色の髪。
包帯から解放された上半身は筋肉が引き締まり、たくましい。
この世の奇跡だとしか思えないほどのその顔立ち。
そんなヴァン様が私を優しそうに見つめている。
私は恥ずかしくなり、目を逸らした。
「君にはすぐ明かすつもりだったんだ。だけど、どうしても君を試したくなってしまった」
「試す……ですか?」
「ああ。君はエルと同じで、私の外見と財産が目的なのではないかと思ってね……最初はエルの気持ちを確かめるためだけだったが……君を一目見た瞬間に、目的が変わってしまった」
ヴァン様は眩しそうに目を細め、私の顔を見つめ続ける。
「自分の中身を見てほしかったんだ。そして君は私の容姿など気にすることなく、普通に優しく接しくれた。それが嬉しくて……気が付けば私の心の中はクリスで一杯になっていたんだ」
「…………」
「エルの目的はすでに把握している。クリスが何故ここにいるのかも理解している。私は既に全部分かっていたんだよ。そして私は君を試していた。」
そう言うとヴァン様は跪き、私の手を取る。
「お互い様なんだ……だから気にしないでほしい。そして私を許してほしい。そして……クリス。私と一緒になってほしい」
「ヴァン様……」
涙が止まらない。
まさか、ヴァン様からそんなことを言われるだなんて。
あまりの感激に言葉が出なかったので、代わりに涙を流しながら大きく頷く。
ヴァン様はホッとし、素敵な笑みを向けてくれた。
私はグチャグチャになった顔で、笑顔を作る。
不細工なんだと思う。
だけど彼は、嬉しそうに笑っている。
それだけで幸せだった。
いつか幸せに……
その幸せが、本当に舞い込んでくるなんて。
本当に夢のようだ。
その上、ヴァン様という素晴らしいお方から求婚されるなんて。
「エルリーンの考え通り、彼女との婚約を破棄させてもらおう」
「はい。妹の望みのままに、ですね」
クスクスと笑い合う私たち。
こうしてエルの計画通り、ヴァン様と彼女の婚約を解消させることとなった。
いまだに信じられないが、優しくて暖かいヴァン様は目の前にいる。
彼は微笑を浮かべながら、私の身体を抱きしめた。
私はこれ以上ないほどの幸せを感じながら、彼の胸に抱かれ続ける。
どうか夢じゃありませんように。
そしてこの幸せが永遠に続きますように。
私はそう祈りながら、ヴァン様の胸の鼓動を感じていた。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる