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ヌルッとスタート編
第52話 舞茸さまさま
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2人はやっぱりキラキラの瞳で料理を見つめながら、自分の皿をおのおのが手に持つスタイルで、ソファーへと移動する。
残りの白ワインをグラスに注ぎ、待ちきれないように杯を掲げ
「コニーの初魔石に乾杯!!」
「「乾杯!」」
温かいうちにどうぞ~、なんて言うまでもなくぱくつく2人。
「え? これってささみなんだよね?」
「うん。そうだよ。美味しい?」
「美味ぇ……もそもそした感じがないどころか、しっとりしてる」
「でしょうぉ。舞茸の酵素のおかげだよ」
「このキノコのことか?」
舞茸にはタンパク質分解酵素が含まれてて、水分と共に肉にあらかじめ揉み込んでおくと、驚くほど肉が柔らかくなるんだ。
我がことのように舞茸さまの偉大なお力を、ドヤって解説する私。
「ただそれで焼いた肉からは、若干水分が出るの。しっとりしてるのに、余分な水分が肉から出て味が凝縮されるのってすごくない?
この水分をどうやって利用するかも課題かな。今回はバターソースに使ったけんだ」
美味しいんだけど、味がザ舞茸になるから、ガチのフランス料理の時はやらない。
味のコンセプトを決め打ちして構成していくから。
“舞茸の旨味いいじゃな~い。大歓迎よん”
って感じで家庭料理の時は多用する。
安い肉でもめちゃくちゃ柔らかくなるし。
最低5分間でも、やるのとやらないのでは、雲泥の差だからね。
「いい仕事してんだね舞茸って。今後は冷蔵庫に切らさないようにしておくよ」
「ささみなんて包丁使わず、適当に引きちぎってスープに入れると便利な『筋肉の種』ぐらいにしかみてなかったわー」
「肉屋からお任せで適当に肉が納品されるから、ささみはいつも残りがちでね。チーズと一緒に焼くぐらいだったよ。
まさかこんな可憐な一品になるなんて信じらんない」
2人の言ってることめっちゃ分かる~。
私も、ダイエットやお弁当、おつまみとか、ちょこっと使いに便利な肉って印象だね。
まとめて作り置き派なので、胸肉使うことがほとんどだし。
ささみは量が少なくて割高だから。
「ほうれん草の葉は明日使う予定だから、今日は茎だけ。
トマトの種ソースどぉ? サーモンの渦巻きに外側の身だけ使ったから、中の種と汁がもったいなくてさ。
見た目粒マスタードぽくて面白いかもってやってみたんだけど。周りにゼリー状のものが付いててそれに守られてるから、ピンクに黄色の水玉模様みたいなって、意外に可愛かったね」
「トマトの種と汁か、なるほど……。マスタードやビネガーの酸味とは違うまろやかな酸っぱさはそれかだったか。言われてみりゃ青臭い感じが納得だ。食感が粒っぽいかと思ったが、つるんとして逆に面白かった。
下のほうれん草の茎とも合ってる。それとこの茎の酸味は、ちょい華やかな感じがするな」
へ~え。
エタンってなんか舌が肥えてるっていうか、細かな味の違いもちゃんと分かってるていうか。
一見豪快な印象だけど、さっきの感想も鋭いところ押さえてたし、詩的な表現力を感じる。
「よく気づいたね、そうなの。お酢が2種類あったから。
量が少ないほうが味に力強さがあって、多分赤ワインビネガー? パプリカとか他にも利用したよ。
新しいやつは色が少し濃くて、酸味がまろやかでスパイシーとは違うな~ナッツっぽい?うーん……エタンの言うとおり華やいだ広がりがあるよね…少し熟成したような」
「赤ワインビネガーは正解。新しいのはね、ビネガーが無くなりそうだから、指定せず注文しといたら勝手に入ってたやつ。パロミノ酒から作ったんだってさ」
クレールの説明によれば、パロミノ酒とは食前酒として好まれる酒精強化白ワインとな。
おお、まるでシェリー酒から作られるシェリー酢みたいだ。
味のマイルドさも言われればそれを彷彿させる。
「エタンはさ~。なんでも『美味え!』って最初に一声上げて、豪快なガツガツ喰いかと思いきや。
食べ物についての洞察が実に深くて。私に言ってくれる感想も、核心に触れるようないいとこ突いててさ。なんか表現も上手いんだよね~。
感心しちゃう。そんな風に感想を伝えてくれる人なんて、今までいなかったよ。ほんと作りがいがある」
エタンは、そんな私のセリフを受け
「よせや食いしん坊なだけだ」
とちょっと眉を下げて、顔をぽりぽり人差し指で掻いた。
ほわわ。エタンの照れゲット!
「僕だってコニーの作ってくれるのものは、すんごくすんごく美味しいと思ってるんだからね。
エタンがまだ何も言ってない、このキノコのバターソースなんかものすんごく大好きだから。アボカドクリームだって毎朝食べたいよ!」
張り合うようにクレールも一生懸命、褒め感想を言ってくれた。
ふふ私もさっきのクレールのように、素直に、ありがとう嬉しい、とニッコリ伝える。
こういうふうにシンプルな心の動きはストレスがなくて良いなぁとふわふわ思った。
------------
残るはあと一皿。
そしてコニーの向こうでの話が……。
残りの白ワインをグラスに注ぎ、待ちきれないように杯を掲げ
「コニーの初魔石に乾杯!!」
「「乾杯!」」
温かいうちにどうぞ~、なんて言うまでもなくぱくつく2人。
「え? これってささみなんだよね?」
「うん。そうだよ。美味しい?」
「美味ぇ……もそもそした感じがないどころか、しっとりしてる」
「でしょうぉ。舞茸の酵素のおかげだよ」
「このキノコのことか?」
舞茸にはタンパク質分解酵素が含まれてて、水分と共に肉にあらかじめ揉み込んでおくと、驚くほど肉が柔らかくなるんだ。
我がことのように舞茸さまの偉大なお力を、ドヤって解説する私。
「ただそれで焼いた肉からは、若干水分が出るの。しっとりしてるのに、余分な水分が肉から出て味が凝縮されるのってすごくない?
この水分をどうやって利用するかも課題かな。今回はバターソースに使ったけんだ」
美味しいんだけど、味がザ舞茸になるから、ガチのフランス料理の時はやらない。
味のコンセプトを決め打ちして構成していくから。
“舞茸の旨味いいじゃな~い。大歓迎よん”
って感じで家庭料理の時は多用する。
安い肉でもめちゃくちゃ柔らかくなるし。
最低5分間でも、やるのとやらないのでは、雲泥の差だからね。
「いい仕事してんだね舞茸って。今後は冷蔵庫に切らさないようにしておくよ」
「ささみなんて包丁使わず、適当に引きちぎってスープに入れると便利な『筋肉の種』ぐらいにしかみてなかったわー」
「肉屋からお任せで適当に肉が納品されるから、ささみはいつも残りがちでね。チーズと一緒に焼くぐらいだったよ。
まさかこんな可憐な一品になるなんて信じらんない」
2人の言ってることめっちゃ分かる~。
私も、ダイエットやお弁当、おつまみとか、ちょこっと使いに便利な肉って印象だね。
まとめて作り置き派なので、胸肉使うことがほとんどだし。
ささみは量が少なくて割高だから。
「ほうれん草の葉は明日使う予定だから、今日は茎だけ。
トマトの種ソースどぉ? サーモンの渦巻きに外側の身だけ使ったから、中の種と汁がもったいなくてさ。
見た目粒マスタードぽくて面白いかもってやってみたんだけど。周りにゼリー状のものが付いててそれに守られてるから、ピンクに黄色の水玉模様みたいなって、意外に可愛かったね」
「トマトの種と汁か、なるほど……。マスタードやビネガーの酸味とは違うまろやかな酸っぱさはそれかだったか。言われてみりゃ青臭い感じが納得だ。食感が粒っぽいかと思ったが、つるんとして逆に面白かった。
下のほうれん草の茎とも合ってる。それとこの茎の酸味は、ちょい華やかな感じがするな」
へ~え。
エタンってなんか舌が肥えてるっていうか、細かな味の違いもちゃんと分かってるていうか。
一見豪快な印象だけど、さっきの感想も鋭いところ押さえてたし、詩的な表現力を感じる。
「よく気づいたね、そうなの。お酢が2種類あったから。
量が少ないほうが味に力強さがあって、多分赤ワインビネガー? パプリカとか他にも利用したよ。
新しいやつは色が少し濃くて、酸味がまろやかでスパイシーとは違うな~ナッツっぽい?うーん……エタンの言うとおり華やいだ広がりがあるよね…少し熟成したような」
「赤ワインビネガーは正解。新しいのはね、ビネガーが無くなりそうだから、指定せず注文しといたら勝手に入ってたやつ。パロミノ酒から作ったんだってさ」
クレールの説明によれば、パロミノ酒とは食前酒として好まれる酒精強化白ワインとな。
おお、まるでシェリー酒から作られるシェリー酢みたいだ。
味のマイルドさも言われればそれを彷彿させる。
「エタンはさ~。なんでも『美味え!』って最初に一声上げて、豪快なガツガツ喰いかと思いきや。
食べ物についての洞察が実に深くて。私に言ってくれる感想も、核心に触れるようないいとこ突いててさ。なんか表現も上手いんだよね~。
感心しちゃう。そんな風に感想を伝えてくれる人なんて、今までいなかったよ。ほんと作りがいがある」
エタンは、そんな私のセリフを受け
「よせや食いしん坊なだけだ」
とちょっと眉を下げて、顔をぽりぽり人差し指で掻いた。
ほわわ。エタンの照れゲット!
「僕だってコニーの作ってくれるのものは、すんごくすんごく美味しいと思ってるんだからね。
エタンがまだ何も言ってない、このキノコのバターソースなんかものすんごく大好きだから。アボカドクリームだって毎朝食べたいよ!」
張り合うようにクレールも一生懸命、褒め感想を言ってくれた。
ふふ私もさっきのクレールのように、素直に、ありがとう嬉しい、とニッコリ伝える。
こういうふうにシンプルな心の動きはストレスがなくて良いなぁとふわふわ思った。
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残るはあと一皿。
そしてコニーの向こうでの話が……。
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