舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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ヌルッとスタート編

第50話 そこに愛があるならば

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「ああ、うん。その見計らいは全面的2人にお任せするよ。

いやぁ~クレールは凄いね~。
お互いの為を思ってってとこのくだり、ほんとそう思うよ……。

聞きたいのに聞けない、言いたいのに言えない。
実際口にしなきゃ、耳にしなきゃ、伝わんないし分かんないのにね。
悶々もんもんしてる時間がホントもったいない。
分かっちゃいるのに、ついもだもだしちゃう。
なによりさ~、家族とか友人とか恋人とか、大切な人こそぶつかってでもガップリ対話するべきなんだよね。繋がりに胡座あぐらかいてないでさ。
そこに愛があるなら深めなきゃ、それこそもったいないって話で。
面倒くさがってる場合じゃないよね。
時間ないも言い訳だよね。
いつか、今度、っていつだよ! ってやつ、あは。

特に男性に多い気がするよ、そういうの。
照れもあるのかなぁ。そんなの逆に意気地なしでカッコ悪いのにね。

その点クレールは勇気がある。
うん。とってもカッコいい。

私も反省して見習うから……。
これからもどうぞよろしくね」

 考え考えゆっくり喋る私の話を、じっくり聞いていてくれた2人だが。
 ラスト褒めたらクレールの耳が真っ赤になった。

 照れずにサラッといろいろ言ってのけるくせに、褒められて真っ赤になっちゃうって。
 こういうとこ可愛らしいな、なんて思う。

「も、もう一度乾杯しようか? コニー?」

「デュオからトリオに、男の絆にお邪魔しま~す乾杯?」

「言い得て妙だな。それもそうだが、コニーの初めての魔石生成に乾杯しようぜ」

「ふふ、嬉しい。それならいま酔いも落ち着いてるから、酔っ払う前に先に2品仕上げて出そうかな」

「あの野菜の茎の上になんか乗るのか?」
エタンが、アイランドキッチン上の3皿を指差した。

「だね。あの上にお肉を使ったあっさりした温かい料理がのるよ。
あと野菜を使った冷たい料理。こっちは皿の上に仕上げたあと、鳥を食べ終わるまでは冷蔵庫にしまっとこうかと考えてる」

「コニー、仕上げ見ててもいいい?」

「いいけど、うーん。せっかくだから冷たいのは驚かせたいかな~」

「そっか。じゃあ僕はお酒選んだり、コニーの寝巻きになるもの見繕ったりしてくるね」

「俺は自分の部屋で、今日の分の魔石を作ってくるわ」

 解散際にエタンにバルサミコ酢について聞いた。
 家主はクレールだけどイタリア系はなんかエタンかな、なんて。
 滅多に使わねぇからこっちに、と冷蔵庫のマスタードなど小物が入ってる籠から出してくれた。

 小鍋に水を入れ火にかけ、ドキドキしながら冷蔵庫を開け仕込んでおいたアスピックのゼリーを出した。
 ゆすって固まっているか確認、ふるりん。

 今度は、石鹸で丁寧に洗った手で、直接指先で触ってみる。
 うん! しっかり固まっている。
 これならココットから出しても大丈夫だ。

 沸かしたお湯にちょいとココットをつけて、周りのゼラチンを一瞬溶かして型から外そうと思うのだが、陶器の持っている上部が熱くなったら取り落としてしまうなぁと思い留まる。

 だってちょうどいい軍手がないんだもの。素手でやるしかないからね。

 とりあえず空っぽのココットで実験してからにしよう。
 1、2、3……と数を数え、案外掴んだ上部は熱くならず大丈夫と確信する。
 しかも冷蔵庫でしっかり冷えたココットだし、大丈夫だろう。

 さっと数秒湯につけて、タオルの上に置き水気を拭き取って、お皿を乗せて皿ごとくるっとひっくり返す。
 ドキドキの瞬間。

 ココットは、かぱっとすんなり気持ちよく取れた……
 やった! 綺麗にできてる~!

 3皿分取り出して冷蔵庫へしまう。バルサミコ酢のソースは食べる前に添えようっと。

 このソースは乳化させず分離した程度でいいから作って置いといても全然平気だし。

 カフェオレボウルみたいな陶器に、オリーブオイル、バルサミコ酢、塩胡椒を入れてフォークで混ぜて味見しながら調整していく。

 陶器を選んだのは、この世界の金属製のボールが、ステンレスのように酸に強いかよくわからないから。
 作ってすぐかけるならいざ知らず、ちょい置きするならねぇ。

 ドレッシングってオリーブオイルだけだとパンチがあり過ぎて、ピーナツオイルとかシンプルなオイルとブレンドするんだよね。
 今日は少量だから、まあいいか。

 私お金を取らない、つまり「仕事」じゃなくプライベートだと、若干いい加減というかゆるくなるところあるよな、って自覚ある。

 よし、ささみ焼くか。
 冷蔵庫に向かったタイミングで、クレールが手に洋服を持って帰ってきた。

「コニーこれ寝巻き。一応3着選んで持ってきたんだけど、どれもこれもっていうか……。」

 最初に差し出されたのは、さっき見せてもらったクレールのネックレスみたいな、極薄い緑色の柔らかいパジャマ。

「みんな僕のもので大きいんだけどね。これは現役で僕の着てるやつの1着。こっちの2つは新品で洗ってないから、コニーに見てもらってから水通ししようかと。
それともエタンみたく、Tシャツに短パンがいい?」

「わぁ~、選んでくれてありがとう~!
寒がりだし、ちゃんと着て寝る派だから、長袖長ズボンがいい。寝巻きの素材なら裾や袖も折りやすいし。
ちょいと見して」

 普通にゴムの入れ替え口あった。ここからゴムをぎゅうと出して縛ればウエストも合わせやすい。

「こっちの新品はね、姉からシルクで気持ちいいからってもらったやつ。真っ白でピカピカして派手過ぎだから僕はちょっとね。
これはガーゼ2枚重ねで僕のお気に入りのやつ。好きだから予備に買い置きしてるんだ」

「どれもいいじゃない! 貸してくれてありがとう!
現役のはクレールの色と香りに包まれてるみたいで安心して眠れそうだし、シルクのはそんな高級なの着たことないからワクワクだよ。
買い置きのはクレールが日頃着てるやつと同じってこと? じゃあお揃いだね。寝巻きがお揃いって、新婚さんみたいだね~」

「コニー……君のそういうところ、僕には刺激が強すぎるよ……」

 そういうところってどういうところだ?
 新婚さんの冗談、セクハラオヤジっぽかった?
 ごめんごめん、反省。

「刺激が強い」というワードを使ってくんなら、クレールのほうこそ刺激あるあるだと思うよ~。

 これは「ちゃんと伝えていこう」趣旨には当てはまらないから、まあ放置で。

「あーなんかごめんね?
私、お部屋に置いてくる。網に入った洗濯物もついでに見てくるね」

「あ、待って。料理にお酒なにが合うかな?」

「んー。ビネガー使ったものが多いから、甘くない白ワインかな。エタンにもらったのちょっとしか使ってないから、残りわりとあるよ。それか、あればドイツの小麦ビールもいいね。冷製のはロゼワインもいいね~。
あと少し残ってるカナッペとか良かったら食べちゃってね」

「うん。分かった」

 はーい、すぐ戻るねと私は居間を後にした。



















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