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ヌルッとスタート編

第48話 魔石を生む

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 その答えは、とあるものの生産に使っているとのこと。

 魔石を生み出す

 ぎゅうと手を握って待つ事10分~30分。
 そうしているうちに生まれるらしい。

 手のひらに魔石が。

 マジで??

 そんで今、実践としてのレクチャーが始まるところデス。

「こうやって軽く手を握るでしょ。

深く息を吸ってー吐いてー。
呼吸を整えてリラックスしていく。

手のひらに向けて魔素、魔力、力、気持ち、血液、なんでもいいからそっちに流れていくように意識して。

手のひらの中にぽわっと光が集まるように」

 クレールが実際にやってみせてくれてる。

「目を瞑るのもいいかもな。
慣れると喋ったり気楽な感じでも生み出せるんだが。俺らは早い方で、10分程度でいける。
クレールは両手に毎日1個づつ。つまり2個これって凄いことなんだぜ。
あいつは蓄積率も高い上に、生成率、ああ魔石を生み出す力のことな、これも高いから、光の湖なんて魔素に満ち溢れた場所に暮らしていても、身体に蓄積して困ることがないんだ。入れた分綺麗に毎日出す」

 その言い方、お通じみたいだなと思ったが、茶化すのはやめた。

「今日あいつは回路の付与を行ったから、流石にいつもより一回り小さな魔石になるかもな。」

 コニーもやってみるか? 
ミトンのような物を差し出してきた。
 良く見ると指先が割れてないので、ドアノブカバー、お団子ヘアのシニヨンみたいだ。

「時間かかるならグーしたまんまってしんどいだろ。
コツはな、リラックスすること。
そして何より大事なのが、魔石ができますようにって心から願う」

「ふーんおまじないのようなもんか……。信じれば叶う的な?」

「そうとも言えるし、もっと深い意味があるんじゃないかとも思われている。」

 グラスを置いて、よりしっかりこっちにエタンが向き直った。

「魔石が作れるやつは、まあまあいるにはいるが、掃いて捨てるほどは多くない。だから厳重に法律で搾取されないように守られている。
それでもそこを掻い潜ってだな。
犯罪に巻き込まれて拉致監禁される、ひいては悲しいことに家族によって。
魔石を生める人物が、無理矢理作らされる状況下にあると仮定しよう。
しかしな、コニー。
魔石を生み出す肝が『心から望む事』なので、無理強いされるとなかなか魔石は生まれないんだ」

 そんな事態も起こりうるのか……。

「もしもそれでも魔石が生まれたとしても、深い悲しみや絶望に満ちた魔石は、真っ黒なものが出来る。
日本人のおヌル様以外に黒目はこの世界にはいねぇ。そして蛍様と雪之丞様も、黒目黒石ではなかった。
やや茶色っぽいがコニー瞳も黒とみなして。
さっきの魔石への吸着の色が虹色だったから、おそらくできる魔石もそうじゃないかと、俺は漠然と想像している」

 作れたとして、それだったらド派手だけど綺麗だなあ~。

「黒い魔石が取り引き所に持ち込まれた日にゃ速攻査察が入る。単純に逮捕ってだけでなく、先ずは聞き取り調査だ。
そこには深い悲しみがある訳だから、心理相談なり、福祉、行政、金融、適した救いの手が差し出される」

 そうか。犯罪に限らず、イジメに虐待、離婚、死別、自殺願望、借金苦、などなど。
 思わず真っ黒く染まる程の苦しみか……。
 魔石が作れる人限定になちゃうけど、市民のSOSが目に見える形になるから、救済しやすくなるね。

「魔素が抜けきって透明になったら持ち込めばいいと思うだろ?
それがこの黒魔石はすこぶる魔道具回路との相性が悪い。魔力源にならず魔道具が作動しねぇ……。つまり使えないから魔素が減らずに真っ黒のまま。
廃棄方法は、政府と虹の院の共同参画省、俺の所属する魔石省が持つ、魔石を細かくする機械を使う。まあ詳しい事はまた今度な」

 うわ~。
 なんかテレビで怪奇現象特番を見て、ゾクゾクしちゃうような、そんな気分。

「なぜ心からの願いに共鳴し、魔石が生まれる落ちるのか。なぜ黒い魔石は魔力として使えないのか。
その解明追求は、そもそも魔素や魔石が何故存在するのかに始まり、人間の幸福を論じる、哲学や宗教や神の存在にまでおよぶ。
ひいては、生命の起源とか、虹の方様とか、謎に満ちたもはや神秘の領域ってやつだな」

 思いがけず壮大な話に、私は自分の腕をクロスさしてさわさわと擦り上げていると、エタンが真剣な顔をして、私にこう問うた。

「生成操作に慣れないと成功しないしない上に、今日すでに魔石へ2個もたっぷり吸収させたから、今は魔素が溜まってないかもしれない。現に紐は透明だ。
そしてコニー。
お前の心の深い所にある、元の世界から引き離された喪失感や悲しみも、どこまでどうなってるのか正直分からない。
それでもダメ元で、まあ試しにやってみるか?」
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