33 / 133
ヌルッとスタート編
第32話 支援指導係
しおりを挟む「ちょっと吹っ切れた顔つきになったな、コニー。俺らも少し安心するぜ。
そんじゃあ先に進んでもいいか? これでとりあえず風呂前は終了だから。
保護制度の説明だ。
この不慣れな世界に慣れるための世話役みたいなもんだ。」
ローテーブルの下から本の様なものを取り出した。
「まるいち。
おヌル様を保護次第、速やかに虹の院に報告を上げねばならない。
まるにぃ。
おヌル様との対話並びに聴き取り調査報告を上げる。
それを元に迅速に第1回選定会議が開かれる。
幾つかの支援指導係の組織候補が組まれる。
その仮組織長達がおヌル様を迎えに保護している森の拠点に来る。
まるさん。
おヌル様と親睦を図りつつ王宮に移動する。
移動の時や手段は現地の判断に委ねる。
おヌル様の意向を最大限に踏まえて、正式な支援指導組織を見据え、候補同士で協議を重ねる事。
まるよん。
最終的におヌル様本人に、相性や方向性、具体的指名なども含めて、支援指導における組織長•組織編成の決定もしくは委任していただく」
ざっくりマニュアルをかいつまんで読むとこんなとこだ、とエタンはローテーブルの下にマニュアルと呼ぶ本みたいなのを戻した。
「すんげー簡単に言うと、おヌル様見っけたら虹の院にすぐ報告して。そしたらめぼしいやつお迎えに何人か送るから、おヌル様は王宮に一度顔出して欲しいと。
その際に気が合うやつがいたら、当面のお世話係や使いっ走りとして好きにしていいよってことで、おヌル様本人に選ぶのをお任せする、ちゅーわけだ。ちなみに要らねーって拒否権もある」
一度話しを切り、エタンとクレールが顔を互いに見合わした。
「実は今回はな。
コニーは着いてすぐの風呂でぶっ倒れて寝ちまったから、俺たちコニーのこと、誰にもまだ言ってねえんだ。
おヌル様を一方的にどうこうすることは禁じられていてるが、本部よりワイワイ何人もで押しかけられたり、本人そっちのけでいろんな人間の思惑が暴走すんのもウゼェからな。
起きたらコニーと相談してから連絡しようってクレールと2人示し合わせてな」
え? そうなの??
「私は報告対象で、そんで今は秘匿されてるってこと?」
「おう、コニーは理解が速くて賢いな!
本来、コニーは誰からでも世話やかれ放題の権利を持ってんだぜ。
遠慮なんかせずとも大手を振って、虹の院職員の俺らに堂々と世話焼かれとけって話だ」
「僕が1番誤解して欲しくないのはね、君が保護対象だから、僕らがこうして関わってるんではないってこと。
保護に真っ先駆けつけたのは僕らにとって任務だった。
でもおヌル様が君だったから……。コニーだったから、僕はこうして一緒に居たいと思ったし、守るっていうか力になりたいと願っているんだよ」
「……でも出逢ったばっかで、なんで……
でもでも嬉しいっていうか、光栄っていうか……」
そんな私のポンコツ対応につられるかのように、いや、あの、と、へどもどするクレール。
エタンがクレールの頭に軽くチョップをきめた。
「何だかお前とは気が合いそうだなって、会ってすぐ閃めくことってたまにあんだろ、そんな感じだ」
「ああ、そっか。うん。
私もすぐになぜか2人に打ち解けたしね。うん。えへへへ、そっか。素直に嬉しいや」
「それでね、コニー。
僕ら2人、コニーの支援指導係になりたいんだ。そしたらこのまま行動を共にすることが可能になる。そして階級的にも僕は組織長になれる立場にある。
僕は組織長に立候補するよ。
だからコニーが僕を選んでくれると嬉しい。今すぐじゃなくて他と見比べたあとででもいいから」
「クレール……。
んもう!! 何言ってんの。他と比べなくったって、合計半日ぐらいしか喋った事なくったって、クレールがいいに決まってるよ。
エタンだってさっき出会ってすぐ閃めくって言ってたじゃん。それだよそれ。
是非とも私のお世話係はクレールエタン組にお任せしたい!
クレール組織長が面倒じゃ無ければ……」
「ありがとう!!」
ソファーの長椅子から立ち上がり、ローテーブルを跨んばかりの勢いのクレールちょいビビる。
なのでローテーブルを回って私はクレールの前に立ち、
「よろしくね」
握手しようと手を差し出した。
ぐい
と瞬間
その手を引き込まれてクレールに抱きつかれた。
「ありがとうコニー! これからもずっと一緒に居ようね」
上からふうわりと囁くように甘い声が降ってきた。
ひやぁあああ~
こんな綺麗な男の人との外人ハグには免疫が無いので、て、照れる!
後ろからもギュッ
「何だよつまんねーな。俺も支援指導係よろしくね挨拶の仲間に入れろよ」
エタンが私を内包しつつクレールに抱きついてきた。
ぎょえっ!
「ぐ、ぐるしい~」
肩をジタジタして2人の力が緩まったの隙に、シュッとしゃがみ込んで下から脱出した。
ぐぬぬ、最後に変な汗かいちゃったよ。
「一風呂浴びてくっから! お先に!」
小走りで廊下方面へ向かう。
「コニー! 台詞が漢らしくていいな!」
「籠に着替えとタオル用意してあるから!」
背中にそれぞれ彼ららしい掛け声をもらいつつ、振り向かずに手だけ振って私は風呂場に向かった。
--------------------
長きに渡った説明回。お清覧ありがとうございます、お疲れ様でした。
ここまで読んでくださって感謝しかありません。
次回はコニーちゃんのお風呂です。なぜか前回のお風呂シーン、前後の話に比べて読者が少なかったのです。エチではなく癒し系が詐欺だと思われたのでしょうか? はい次回も癒し系です。
またお越しをお待ちしてます(๑˃̵ᴗ˂̵)
11
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説


【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる