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ヌルッとスタート編
第27話 瞑想もどき
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「ふぅぅうう。何も考えずにじっくりコーヒーでも飲んで、まずは一息入れよっか」
一口飲む。目を閉じる。
鼻から息を吸ってゆっくり鼻から出す。
少し冷めちゃったな、ちょっと酸味が強まったな。
何にも考えないって言ったけど、何かは考えちゃうよな。
「な」ばっかりだな、あ、また「な」だ。
突っ込みくだら「な」過ぎる、その調子、リラックス。
一口また口に含む。
もう少し酸味がないほうが好き。
焙煎も炭火っぽい感じをなくして深みのある、さりとてお菓子にも合うまろやかな丸みを帯びた、いつものオーガニックペルー産のやつ。
マンデリンも好みのタイプ。
ごくり。
華やかなのも嫌いじゃなんだけど酸味がどうもねぇ。
もう一口。
酸味を出さずしてもっと香りを豊かにするのって難しいよね。
これブレンド豆か? 単一豆か?
目を閉じたままの瞼に眩しさを急に感じる。
ふぁ?! 何?
ごくり。
そうそう、こんな味超好き。
ん? これ?
「ねぇ、何か光った?」
瞑想にまるでなってない、コーヒー煩悩で満ち溢れた瞑想もどきを3口分で終え、瞼を開けながら2人に声かける。
すると、これでもかってぐらいに丸く見開いた目で、私を食い入る様に見つめる2人が居た。
「なあに?」
「光った」
「うん、目瞑ってても眩しかったもん。何かあったの?」
「光ってる」
だ、か、ら、何がじゃ?
「コニー……君、口の中が光ってる」
…………
はあああ?
何言ってんの?
自慢じゃ無いが私、実は短気なんですよ。
せっかくの瞑想もどきで手に入れたプチリラックスが霧散したやんけ。
落ちつけ~
鼻から息を吸って、吐いて~。
コーヒーをごくり。
んんんん??!
やっぱり気のせいじゃなくて、3口目からコーヒーの味が変わった……
プチリラックスどころか、クレールの与太話も爆発四散する。
「クレールのちょっとちょうだい」
返事も待たず、勝手にごくり。
「エタンのは!?」
エタンのちょっとしか残ってないやつを、奪うようにごくごくり。
2人のは一緒。二口までの私のと一緒。
自分のをもう一度ごくり。
絶対に違う。
「これ飲んでみて」
間接キス? セクハラ?
ティーンエイジャーでも潔癖でも無いなら飲めや。
いえ、飲んで下さいませ。
勢いに押されてか、エタン、クレールと回し飲んだ。
「華やかな感じで酸味が無い?」
「さっきより美味いね……? コニーが口つけたカップだから?」
ちょっ、クレール!
赤面してる上に言い方がキモい、でも顔が麗しいから判定は乙女!
「コニー、あーってして」
何?
コーヒーで舌が茶ばんでたら恥ずいが、言われた通り、あーってする。
「やっぱり光ってる」
「ベロ……マジか……」
光ってる? 茶ばんでるの間違いでは?
彼らの顔つきは至って大真面目だった。
もしや与太話じゃなくガチもんだったのか?
マジで???
「鏡見てくる!!!」
廊下をダッシュ。
洗面所に慌てて駆け込み、鏡に向かって口を開ける。
なるほど。
舌が光ってる。
男子2人も後からやってきて
「コニー来たよ、入るよ?」
開け放たれたドア近辺から声がかかる。
私の後ろで立ち止まった、鏡越しの彼らと目が合う。
口開けたままべーって舌をだす。
根本から先までの8センチ~10センチ程度、まるまるキラッキラに光ってる。
ちなみに舌の裏側も抜かりなくキラキラ。
「いつから光ってた?」
鏡越しの彼らに話しかける。
口の中の事は、自分じゃ言われない限り気がつかない、分からない。
「多分コニーも感じたあのピカって光った時から……」
「はは。ありえなさ過ぎて、脳が与太話として処理してたわ」
見た目の違和感すごっ。
いつまでこの舌光ってんだろう。
クレールやエタンの瞳や髪みたくそういう風になったってこと?
ずっとこんなんなの?
はあああ~何か嫌すぎてげんなりしてきた。
気休め程度に一応うがいしてみる。
ぶくぶくぶくぶく、ぺっ。
鏡を見据えて、あー&べー。
舌のキラキラが消えてる……
背後で息を呑む2人とまた目が合う。
ぐいぃっと乗り出し鏡で舌をまじまじ見ても、何の変哲もないいつも通りの舌だった。
「居間に戻ろっか」
私の呟きに、黙ったままクレールは手を差し出してきた。
でも私はふるふると首を横に振って、2人の横をすり抜け、廊下を1人先に歩いていった。
漫画であるならば『とぼとぼ』ってオノマトペを確実に背負って。
ドスン。
もう疲れた……
ソファーに勢いよく奥まで座り、膝を抱えて丸くなった。
また目を瞑る。
あの時は、コーヒー飲みながら瞑想っていってもただ目を閉じて、いつも飲むコーヒーや理想の味を空想して……
ふと、そのちょっと前に起きたワンシーン、クレールの姿が脳裏に浮かんだ。
瞑想するように目を閉じて銀の枠に触れ、回路を光らせたあの光景。
点と点が繋がり線になるような感覚が頭を掠め、ガバッと跳ね起きて、ソアファーにちゃんと座り直す。
冷め切ったコーヒーがまだ残ってるクレールのコーヒーカップ。
2人が居間に帰ってくる気配で、ハッと顔を上げる。
また目が合った。
無言
なるほどね。
かける言葉も無いってか。
この様子じゃ彼らも私同様、なにが起きてるのか皆目見当がつかないのだろう。
しからば我究あるのみ。
「さあ! 2人とも! 酒の前にコーヒーをとことん飲み尽くそうではないか! お付き合いあ~れ~」
立ち上がってわざとらしく、それっぽく、戯けて2人に向かってお辞儀をした。
「その前に作戦会議ね。の、前に、ちょっとご不浄へ」
『すたすた』のオノマトペを背負って、私はトイレに向かって廊下を歩いていった。
一口飲む。目を閉じる。
鼻から息を吸ってゆっくり鼻から出す。
少し冷めちゃったな、ちょっと酸味が強まったな。
何にも考えないって言ったけど、何かは考えちゃうよな。
「な」ばっかりだな、あ、また「な」だ。
突っ込みくだら「な」過ぎる、その調子、リラックス。
一口また口に含む。
もう少し酸味がないほうが好き。
焙煎も炭火っぽい感じをなくして深みのある、さりとてお菓子にも合うまろやかな丸みを帯びた、いつものオーガニックペルー産のやつ。
マンデリンも好みのタイプ。
ごくり。
華やかなのも嫌いじゃなんだけど酸味がどうもねぇ。
もう一口。
酸味を出さずしてもっと香りを豊かにするのって難しいよね。
これブレンド豆か? 単一豆か?
目を閉じたままの瞼に眩しさを急に感じる。
ふぁ?! 何?
ごくり。
そうそう、こんな味超好き。
ん? これ?
「ねぇ、何か光った?」
瞑想にまるでなってない、コーヒー煩悩で満ち溢れた瞑想もどきを3口分で終え、瞼を開けながら2人に声かける。
すると、これでもかってぐらいに丸く見開いた目で、私を食い入る様に見つめる2人が居た。
「なあに?」
「光った」
「うん、目瞑ってても眩しかったもん。何かあったの?」
「光ってる」
だ、か、ら、何がじゃ?
「コニー……君、口の中が光ってる」
…………
はあああ?
何言ってんの?
自慢じゃ無いが私、実は短気なんですよ。
せっかくの瞑想もどきで手に入れたプチリラックスが霧散したやんけ。
落ちつけ~
鼻から息を吸って、吐いて~。
コーヒーをごくり。
んんんん??!
やっぱり気のせいじゃなくて、3口目からコーヒーの味が変わった……
プチリラックスどころか、クレールの与太話も爆発四散する。
「クレールのちょっとちょうだい」
返事も待たず、勝手にごくり。
「エタンのは!?」
エタンのちょっとしか残ってないやつを、奪うようにごくごくり。
2人のは一緒。二口までの私のと一緒。
自分のをもう一度ごくり。
絶対に違う。
「これ飲んでみて」
間接キス? セクハラ?
ティーンエイジャーでも潔癖でも無いなら飲めや。
いえ、飲んで下さいませ。
勢いに押されてか、エタン、クレールと回し飲んだ。
「華やかな感じで酸味が無い?」
「さっきより美味いね……? コニーが口つけたカップだから?」
ちょっ、クレール!
赤面してる上に言い方がキモい、でも顔が麗しいから判定は乙女!
「コニー、あーってして」
何?
コーヒーで舌が茶ばんでたら恥ずいが、言われた通り、あーってする。
「やっぱり光ってる」
「ベロ……マジか……」
光ってる? 茶ばんでるの間違いでは?
彼らの顔つきは至って大真面目だった。
もしや与太話じゃなくガチもんだったのか?
マジで???
「鏡見てくる!!!」
廊下をダッシュ。
洗面所に慌てて駆け込み、鏡に向かって口を開ける。
なるほど。
舌が光ってる。
男子2人も後からやってきて
「コニー来たよ、入るよ?」
開け放たれたドア近辺から声がかかる。
私の後ろで立ち止まった、鏡越しの彼らと目が合う。
口開けたままべーって舌をだす。
根本から先までの8センチ~10センチ程度、まるまるキラッキラに光ってる。
ちなみに舌の裏側も抜かりなくキラキラ。
「いつから光ってた?」
鏡越しの彼らに話しかける。
口の中の事は、自分じゃ言われない限り気がつかない、分からない。
「多分コニーも感じたあのピカって光った時から……」
「はは。ありえなさ過ぎて、脳が与太話として処理してたわ」
見た目の違和感すごっ。
いつまでこの舌光ってんだろう。
クレールやエタンの瞳や髪みたくそういう風になったってこと?
ずっとこんなんなの?
はあああ~何か嫌すぎてげんなりしてきた。
気休め程度に一応うがいしてみる。
ぶくぶくぶくぶく、ぺっ。
鏡を見据えて、あー&べー。
舌のキラキラが消えてる……
背後で息を呑む2人とまた目が合う。
ぐいぃっと乗り出し鏡で舌をまじまじ見ても、何の変哲もないいつも通りの舌だった。
「居間に戻ろっか」
私の呟きに、黙ったままクレールは手を差し出してきた。
でも私はふるふると首を横に振って、2人の横をすり抜け、廊下を1人先に歩いていった。
漫画であるならば『とぼとぼ』ってオノマトペを確実に背負って。
ドスン。
もう疲れた……
ソファーに勢いよく奥まで座り、膝を抱えて丸くなった。
また目を瞑る。
あの時は、コーヒー飲みながら瞑想っていってもただ目を閉じて、いつも飲むコーヒーや理想の味を空想して……
ふと、そのちょっと前に起きたワンシーン、クレールの姿が脳裏に浮かんだ。
瞑想するように目を閉じて銀の枠に触れ、回路を光らせたあの光景。
点と点が繋がり線になるような感覚が頭を掠め、ガバッと跳ね起きて、ソアファーにちゃんと座り直す。
冷め切ったコーヒーがまだ残ってるクレールのコーヒーカップ。
2人が居間に帰ってくる気配で、ハッと顔を上げる。
また目が合った。
無言
なるほどね。
かける言葉も無いってか。
この様子じゃ彼らも私同様、なにが起きてるのか皆目見当がつかないのだろう。
しからば我究あるのみ。
「さあ! 2人とも! 酒の前にコーヒーをとことん飲み尽くそうではないか! お付き合いあ~れ~」
立ち上がってわざとらしく、それっぽく、戯けて2人に向かってお辞儀をした。
「その前に作戦会議ね。の、前に、ちょっとご不浄へ」
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